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しおりを挟むここはセブールの家である侯爵家お屋敷だ。ラディが居るはずない。
だというのに、なぜか私を背後から抱きしめてるのは……間違いなくラディだった。
「え、あ、なんでラディが……?」
「やほ、リフィ!グッドタイミングだったみたいね~」
目を白黒させて戸惑っていると、ラディの背後からヒョコッと親友が顔を出したのだ。
「ナディア!?どうしてここに……」
「ごめんね~突然。リフィの家に行ったらここだって聞いたから。前もって連絡しとけば良かったね。どうしても話したいことがあったから」
てへ☆
ととぼけた感じでナディアは舌をベロリと出して言ったが……それ、絶対に確信犯だよね。
ナディアがこれまで事前連絡無しに家に突然来た事なんてない。
ましてや私が不在だからってセブールの家まで押しかけるなんて……絶対有り得ない。
理由はよく分からないけど、でも助かった、本当に助かった。
私はラディから体を離して、二人を見た。
「ありがとう、助かったわナディア。危うく頭を地面にぶつけて魂抜けるとこだったわ」
「え、頭が抜けてる?」
「うんナディア、一度腹割って話そうか?」
「う~ん、さすがに腹筋は割れてないわねえ」
「そうじゃないし!」
いかん、どうもナディアのペースに流されてるわ!
コホンと小さく咳払いをして、仕切り直す。「あれ、俺に礼は?」と言ってキラキラ目を輝かせてるラディは放っておこう。礼は後で言う。
「で?どうして二人は私に会いに?」
「それより今、何してたの?」
私の問いに問いで返すな!答えて、私の質問に!
「これ何?」
二人の突然の登場に呆然とするセブール。その手からヒョイっとナディアは紙を奪い取るのだった。あ、グッジョブよナディア!
私は慌ててナディアからその紙を受け取った。
「ありがとナディア」
「婚約解消届?どうするの、それ?」
「そりゃあ勿論、セブールとの婚約を解消するために……」
「俺は解消するつもりはない!」
そこでようやくハッと我に返ったセブールが声を上げた。
「俺はリフィを愛してる!解消する理由がない!」
「甲斐性なしのくせして解消しないとか、どうかと思いますよ」
セブールの拒絶に対しナディアがズバッと言ってくれた。うん、気持ちいい。
「そうだ、とっとと婚約解消しろ。そしてリフィは私と改めて婚約する」
「うんそこちょっと黙っててください」
ラディは横から口出ししないでください。邪魔だ。邪険にしたら涙目で見られたけど、ここは無視といこう。
「そもそもどうしてリフィは俺との結婚を嫌がるんだ!?」
「女好きの男と結婚したいやつがいるか!!」
「浮気は男の甲斐性で……」
「甲斐性ない奴がどの面下げて言う!?」
「お、俺わぁリフィがぁ大好きでぇ……」
「私とのお茶会より女とのホテルを重視する奴が何ぬかすか!!」
セブールの言葉にことごとく言い返してやったわ!最後には涙目になってやんの!
「そうよ、浮気者がリフィと結婚なんて許されないわよ!」
「そうだ、リフィは俺とけっこ……」
「そこの公爵令息黙ってろ」
ナディアの言葉に乗っかろうとするんじゃないわよ!ラディはややこしくなるから黙っててください!
ジトッと睨めば、ラディはシュンとして黙り込んだ。この人、昔っからこうなんだよなあ。なんというか……押しが強い。子供の頃からドン引きだったわ。
とりあえずラディは置いといて。
私は今度はセブールを睨んだ。
「私より他の女性とホテルでイチャイチャする方が好きなんでしょう?」
「イチャイチャなんてしてない……」
言うにことかいて何を言うかこの男は!
ホテルでやることなんて一つだろうが!してないっつーなら何してたんだ!?
「じゃあホテル行って、何してたんですか!?」
これでカードゲームとか言ってみ?もっかいケーキ投げつけて、髪抜き熱湯タオル地獄をもう一度味わわせてやるわ!
「……カードゲームしてました」
よし。
特大ケーキ持ってこーい!!!
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