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「ぶぼっ!?」
「きゃー!?」

 セブールの間抜けな叫びが上がる。う~ん、ケーキをかぶってくぐもった声の悲鳴、なかなか良いではないか。ついでに、クリームが飛び散って悲鳴上げてる女どもの嫌そうな顔もなかなか良い。けけけ、ざまあみろ。

「な、なんだ、前が見えん、前が!!てか甘い!」

 口を開けばケーキが口に入るのは当然のこと。モゴモゴして食べながら話すな、汚い。

 やった事を後悔はしてないが、ケーキを作ってくれた人には申し訳ないと思う。ので心の中でコックさん、ケーキさん、ゴメンナサイ、と謝っておく。

 顔面ケーキになってるセブールはあたふたと手を振り回す。ますますケーキが飛び散るが、自分では顔を拭おうとも思わないのね。このボンボンが!使用人がタオル持ってくるの待ちか?いいご身分だな!!

 確かに慌てて誰かがタオルを持ってくるのが遠目に見て取れた。

 だがそうはさせない。
 タオルが到着するにはまだ時間がかかる。無駄に大きな中庭だからね。
 私はそっとセブールに近付いた。

「だ、誰だ?タオルか?」

 タオルか?ってお前……タオルが歩いて近づいてくると思ってんのか?だろうが。何その語彙力。聞いてるこっちが恥ずかしいわ!

「セブール様、目が見えないのですか?」
「!!リフィ?その声はリフィだね?そうなんだ、突然顔に何かがぶつかって視界が遮られてるんだ!何だか甘くてベタベタしたものが付いてるんだが……まさかスライムなんてこと、ないよな?」

 スライムって甘いのか?初耳だぞ。というかスライム食べた人居るんかいな。
 どうやら私がケーキを投げつけた事に気付いてないようだ。一瞬だったからね。

 阿呆なこと言ってるセブールを冷ややかに見つめる私。だが彼にはそんな私の表情も見えないのだろう。

 折角の私の冷たい視線攻撃を見せてやれないのは勿体ない。
 優しい私が視界を取り戻させてあげようじゃないか。

「セブール様、ジッとしててくださいね。目を拭いますから」

 そう言って、私は指をセブールの目へと近づけた。

 指の状態はと言えば……いわゆる『チョキ』または『ピース』。つまり人差し指と中指の先端を突き出す形だ。

 そ~っとそれを近づけて……直後!

「あ、ああ頼む……ぶおおっ!?」

 ザクッと瞼を突き刺してやったわ!眼球に直接は可哀想だから目を閉じるシチュエーションを作ってあげた私。やっさしぃ~!

 痛みでのたうち回るセブール。大声で笑いたいけどそれはまだ早い!
 私は椅子から転げ落ちて地面でゴロゴロのたうつセブールに近付いた。

「あらやだセブール様、暴れては綺麗に拭けませんよお~~~~っとつまずいたあ!!」
「へ?げぶろあああ!!??」

 げぶろあって何だ。

 思わず、ね。つい、ね。暴れるから、ね。ハイヒールパンプスだから、ね。

 のたうつセブールを踏んづけちゃいましたよ!!




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