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10、
しおりを挟む「ぶぼっ!?」
「きゃー!?」
セブールの間抜けな叫びが上がる。う~ん、ケーキをかぶってくぐもった声の悲鳴、なかなか良いではないか。ついでに、クリームが飛び散って悲鳴上げてる女どもの嫌そうな顔もなかなか良い。けけけ、ざまあみろ。
「な、なんだ、前が見えん、前が!!てか甘い!」
口を開けばケーキが口に入るのは当然のこと。モゴモゴして食べながら話すな、汚い。
やった事を後悔はしてないが、ケーキを作ってくれた人には申し訳ないと思う。ので心の中でコックさん、ケーキさん、ゴメンナサイ、と謝っておく。
顔面ケーキになってるセブールはあたふたと手を振り回す。ますますケーキが飛び散るが、自分では顔を拭おうとも思わないのね。このボンボンが!使用人がタオル持ってくるの待ちか?いいご身分だな!!
確かに慌てて誰かがタオルを持ってくるのが遠目に見て取れた。
だがそうはさせない。
タオルが到着するにはまだ時間がかかる。無駄に大きな中庭だからね。
私はそっとセブールに近付いた。
「だ、誰だ?タオルか?」
タオルか?ってお前……タオルが歩いて近づいてくると思ってんのか?タオルを持ってきれくたのか?だろうが。何その語彙力。聞いてるこっちが恥ずかしいわ!
「セブール様、目が見えないのですか?」
「!!リフィ?その声はリフィだね?そうなんだ、突然顔に何かがぶつかって視界が遮られてるんだ!何だか甘くてベタベタしたものが付いてるんだが……まさかスライムなんてこと、ないよな?」
スライムって甘いのか?初耳だぞ。というかスライム食べた人居るんかいな。
どうやら私がケーキを投げつけた事に気付いてないようだ。一瞬だったからね。
阿呆なこと言ってるセブールを冷ややかに見つめる私。だが彼にはそんな私の表情も見えないのだろう。
折角の私の冷たい視線攻撃を見せてやれないのは勿体ない。
優しい私が視界を取り戻させてあげようじゃないか。
「セブール様、ジッとしててくださいね。目を拭いますから」
そう言って、私は指をセブールの目へと近づけた。
指の状態はと言えば……いわゆる『チョキ』または『ピース』。つまり人差し指と中指の先端を突き出す形だ。
そ~っとそれを近づけて……直後!
「あ、ああ頼む……ぶおおっ!?」
ザクッと瞼を突き刺してやったわ!眼球に直接は可哀想だから目を閉じるシチュエーションを作ってあげた私。やっさしぃ~!
痛みでのたうち回るセブール。大声で笑いたいけどそれはまだ早い!
私は椅子から転げ落ちて地面でゴロゴロのたうつセブールに近付いた。
「あらやだセブール様、暴れては綺麗に拭けませんよお~~~~っとつまずいたあ!!」
「へ?げぶろあああ!!??」
げぶろあって何だ。
思わず、ね。つい、ね。暴れるから、ね。ハイヒールパンプスだから、ね。
のたうつセブールを踏んづけちゃいましたよ!!
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