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エピローグ
しおりを挟むとある森で大爆発が起こり、森の一部が無くなった。
そんな噂が流れるのに一日とかからなかった。
原因は魔物のスタンピードだとか大魔法使いの魔法が暴発だとか、怪しい実験の失敗だとか。まことしやかにささやかれるその中に、果たして真実は存在したのか。
原因を探るための捜査が行われたらしいけれど、真実を突き止めた者は居ないだろう。王家もまた沈黙を守っている。それが余計に噂を大きくする一因となった。
だが私は知っている。
そこで何が起きてどうなったか。
私と我が伯爵家と王家、そしてとある侯爵家だけが知っている。
そしてもう一人。
「あ~お腹すいた。ケーキまだあ?」
三時のオヤツは神の領域時間なのですよ。言ってる意味分かんないって?私も分からない。だがそれだけ重要だと言いたいのだ。
一日三度の食事より重要なのだよ、三時のティータイムってのは。
「は、はいはい!お待たせしました!」
ガチャンと乱暴に置かれるカップ。それをメイド長がチョップと共にたしなめる。「痛い!」というメイドの声は無視される事となった。
「アフロちゃんはもう少しメイドとしての所作を学ぶべきだね」
「誰がアフロ……うぎゅ!申し訳ありません……」
怒りの言葉を上げようとしたら、今度は拳骨が降って来て変な声だしてからメイドは謝って来た。
そう、ピンクヘアがチリチリアフロになったメイド……ポリアナ。
それがなぜか我が伯爵家でメイドやってたりするから。
人生何が起こるか分からないね。
あの玉──ポリアナが怪しい経路で入手したそれは、非常に危険な代物だったようだ。周囲どころか本人すらも命を奪われる程の威力を持った危険な魔法の玉。それの詳しいルートはポリアナの証言をもとに、今もって捜査中だ。ハリーが主導してるので詳細を聞いた。
あの時、本能的に危険をだと感じ取った私はポリアナの元へと猛ダッシュし。
力が発動する直前にその手から玉を奪い取って──まさか私がそんな行動するとは思ってなかったのだろう。玉は呆気なくポリアナから離れた。
そして私達はその場から消える事となる。
ベルヒトの能力で。
本当は玉の方をどこか何も無い所へ移動できれば良かったのだけど、時間が無かった。
森に住まう命は私達同様に避難させれたとベルヒトは言っていたが……それでも森林は消え失せた。木にだって命はあるだろう。申し訳なくて、しばらく落ち込んでいたものだが。
毎日ハリーが美味しいお菓子を持って会いに来てくれたので、最近ようやく気持ちは落ち着いてきた。
……ハリーとベルヒトが毎日のように睨み合いしてるのが、また新しい問題なのだけどね。ベルヒトにはそろそろ、以前のように姿を消して見守って欲しいのだけど。
どうも久々に姿を現したのが嬉しいようで、なかなか消えない。
「お嬢様、お手紙です」
「また?無駄にマメねえ」
別のメイドが持ってきた手紙を一瞥して。後で読むと言ってテーブルに置かせた。
見なくとも分かる。
毎日のように訪れるハリーに対抗するかのごとく、毎日送られる手紙の主──ボルドラン。
やらかした事は大問題だが、反省してるようなので予定通りの僻地へ。本当に反省してるのか大人しく向かった彼は、こうして毎日のように手紙を書いてよこすのだ。
──反省してるから、私とよりを戻したいって内容ばっかなのであまり読んでないけど。一度ハリーが大激怒して、現地まで行ってボルドランをボコボコにしてきたらしいのだが。この様子では全くきいてないな。
そしてポリアナ。
どうして庶民降格……もしくは処刑必至だった彼女がここに居るのかというと。
「あ~美味し~生き返る~」
「そ、そうですか……」
「ポリアナも食べる?」
「え、いいの!?」
「話し方が駄目ね、あげない」
「うぬううう!!!」
単なる嫌がらせだ。
庶民になって平和に暮らすなんて恩赦はもう与えない。
そして処刑にもしない。
王家は処刑だと気色ばんでいたけど、後味が悪くなりそうだからと私が止めたのだ。
そしてこうやって毎日こき使って嫌がらせをしてるわけである。
「この……悪女……」
「ん?なんか言ったあ?」
「いえ!なんにも!」
聞こえとるわい。シェフに言ってポリアナの今夜の夕飯は嫌いなメニューにしてやろう。
「あの、お嬢様……」
不意に、ポリアナが恐る恐ると言った体で話しかけてきた。なんだ、お菓子はあげないぞ。だって私は悪女だから。
「この髪……戻してもらえませんか?」
何かと思えばそんな事かと私はポリアナのアフロに視線をやった。
その見事なアフロ。あれから戻らない。
いや、本当は戻そうと思えば戻るんだろうけどね。
勿体ないからそのままでと私が言って、維持させてるのだ。ベルヒトの力で。
誰ですか、精霊王の力を無駄遣いするなって言ったの。いいじゃないか、楽しいのだから。私悪女なんだし。全てそれで片付けてやる。
「じゃあせめて!これを!どうにかしてください!」
そうポリアナが叫んだ瞬間。
ピーピーと可愛い声がその頭の中から聞こえだした。
そこへ小鳥がパタパタと舞い降りて来て。
アフロからヒョコっと顔を出したのは可愛い鳥の雛。
飛んできた親鳥はせっせと雛に餌を与え始めた。
「どうしてえ?可愛いじゃない」
「頭が鳥の巣になってるって、どんな気分か分かる!?」
「え~分かんな~い。とにかく駄目よ、雛が巣立つまではそのまま!」
「この悪女ぉぉ!!」
「あ~平和だわ~」
今日もいい天気だお茶が美味しい。
私は窓の外に広がる空を眺めて。
今日も精霊王が守る平和な国での幸せを、噛みしめるのだった。
~fin.~
===後書き===
シレッと夜中に更新して完結です。収拾つかなくなってきたので、半ば強引…申し訳ないです。
相変わらず最初の勢いは何処へやらの失速感半端ないですね。
でもまあ未完作品が多い筆者としては、完結出来たということに満足です。内容はともかくとして…(汗)
お読みいただきありがとうござきました<(_ _)>
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何故か見つけてしまって、夜中に読んで爆笑してましたwww
テンポ良くて読みやすくて、面白いwww
最後はちょっと無理やり感が否めませんでしたが、カオスな感じが良かったですw
楽しい作品を読ませていただきありがとうございました♡
お返事遅くなり申し訳ありません(汗
古い作品も今なお読んでいただけるのはとても嬉しいです。そして楽しんでいただけて良かったです。
お読みいただきありがとうございました!
10話目でポリアナが登場した際にミライッサをミライサと呼んでいましたが間違いではないでしょうか?
話のテンポも話数も丁度良くてとても読みやすかったです!
「こんばんはミライサ様」
↑これのことでしょうか?これの後に
「こんばんは、ポリアナ。小さいツを入れろ」
とありますように、わざとですので間違いではないですよ~d(・ω・*)
感想ありがとうございました!
面白かったです。
個人的には「超重要」→「鳥獣用」というのがツボでした(*´▽`*)
それにピンクの髪が自慢だったでしょうが、アフロ→鳥の巣という最大レベルの恥辱は、ある意味最大のざまぁですね(*´▽`*)
ありがとうございます!
そこにツボっていただけて嬉しいwww
こんなざまあ、アリかな?と不安でしたがそう言ってもらえて嬉しいです^^