上 下
3 / 4

3、

しおりを挟む
 
 
「ん?なんだい?」

 マシュー様はどちらに返答すれば良いのか困ったように、私とビリアを見比べて。
 けれど迷いは一瞬で、すぐに私の顔を見つめながら問い返してくれた。その何気ない行動が、少し私の心を軽くした。

 が、そんな事でめげないのがビリアという女だ。

「も~マシュー様ったらあん。ビリアの話を聞いてください~!」

 プンプン。
 そんな効果音が聞こえそうに、頬を膨らませてビリアはまた王子に腕を絡ませた。イラッときたけど……マシュー様は直ぐにその手を押しのけたので、ホッとする。

「ビリア。まずはラナリアから話を聞きたい。というか、私は彼女に会いに来たんだ。席を外してくれないか?」

 ──!
 マシュー様!
 私、一生貴方に付いて行きます!
 気持ちいいくらいにキッパリ妹を追い払おうとするマシュー様に、私はちょっと感動してしまった。

「マシューさ……」
「え~?こおんな醜いお姉様よりぃ~私とお話してる方が楽しいと思いますよぉ~?マシュー様、先ほど私と話してて、楽しいと仰ってたじゃないですかぁ~?」

 だから私の言葉にかぶせないでよ!
 いい加減、妹に厳しい言葉をかけようとした私。
 けれどマシュー様の方が少し早かった。

「ビリア、あのね……」
「ビリア、私はラナリアと話してる時が一番楽しいんだ。それに先ほど楽しいと言ったのは──こう言っては何だが、社交辞令だ。君はそんな事も分からないのか?」
「んな……!」
「そもそも私はラナリアの婚約者なんだ。気安く腕を絡めてくるのはやめてくれ、失礼だぞ。そして令嬢として下品で恥ずかしい行為だと気付くべきだ」
「な──!!」

 まさかマシュー様にそこまで言われるとは思ってもいなかったのだろう。私も驚きだ。
 ビリアは怒りと恥ずかしさで顔を真っ赤にしている。

「それに私はラナリア以上に美しい女性は居ないと思ってる。私にとって彼女は女神のようだ。だが……容姿で彼女を愛してるわけじゃない。私は彼女の全てを愛してるんだ」

 そう言ってマシュー様は私を見て微笑んだ。

「……」
「……」

 そこで黙らないでください!真っ赤にならないでください!照れないで!私も恥ずかしくなってきます!

 お互いに真っ赤になって黙り込みながら見つめ合う。
 それが気に入らないのか、ビリアはダンッと床を踏み鳴らした。

「はあ!?何をおっしゃってるんですか!お姉様ほど醜い存在を私は知りません!痩せっぽっちで平凡な顔立ち!人混みに紛れたら直ぐに見失うようなオーラの無さ!こんなのの何処がいいんですか!?私の方が絶対美人です!優良物件です!」

 もうやめといたら。
 そう言っても聞かないであろう剣幕で、ビリアはまくし立てた。

「こんなのより私と結婚した方がいいに決まってます!王子様、趣味悪いんじゃありません?今からでも遅くありません、謝ってくだされば私は貴方を受け入れますから!だから!姉とは婚約破棄して私と婚約を──結婚しましょう!」




しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

私を侮辱する婚約者は早急に婚約破棄をしましょう。

しげむろ ゆうき
恋愛
私の婚約者は編入してきた男爵令嬢とあっという間に仲良くなり、私を侮辱しはじめたのだ。 だから、私は両親に相談して婚約を解消しようとしたのだが……。

婚約破棄ですか? では、この家から出て行ってください

八代奏多
恋愛
 伯爵令嬢で次期伯爵になることが決まっているイルシア・グレイヴは、自らが主催したパーティーで婚約破棄を告げられてしまった。  元、婚約者の子爵令息アドルフハークスはイルシアの行動を責め、しまいには家から出て行けと言うが……。  出ていくのは、貴方の方ですわよ? ※カクヨム様でも公開しております。

そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。

しげむろ ゆうき
恋愛
 男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない  そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった 全五話 ※ホラー無し

婚約者と親友がやって来て「愛し合ってる」とか言ってきたうえ婚約破棄を宣言されてしまいました。が、父が復讐しました。

四季
恋愛
婚約者と親友がやって来て「愛し合ってる」とか言ってきたうえ婚約破棄を宣言されてしまいました。が、父が復讐しました。

私を裏切り結ばれた婚約者と姉は…その身に、醜い呪いを受ける事になりました─。

coco
恋愛
私を裏切り、結ばれた姉と婚約者。 姉は、昔から好きだった彼と結ばれた事に、幸せを感じていたが…?

君より妹さんのほうが美しい、なんて言われたうえ、急に婚約破棄されました。~そのことを知った父は妹に対して激怒して……?~

四季
恋愛
君より妹さんのほうが美しい、なんて言われたうえ、急に婚約破棄されました。 そのことを知った父は妹に対して激怒して……?

私には婚約者がいた

れもんぴーる
恋愛
私には優秀な魔法使いの婚約者がいる。彼の仕事が忙しくて会えない時間が多くなり、その間私は花の世話をして過ごす。ある日、彼の恋人を名乗る女性から婚約を解消してと手紙が・・・。私は大切な花の世話を忘れるほど嘆き悲しむ。すると彼は・・・? *かなりショートストーリーです。長編にするつもりで書き始めたのに、なぜか主人公の一人語り風になり、書き直そうにもこれでしか納まりませんでした。不思議な力が(#^^#) *なろうにも投稿しています

【完結】婚約破棄された私が惨めだと笑われている?馬鹿にされているのは本当に私ですか?

なか
恋愛
「俺は愛する人を見つけた、だからお前とは婚約破棄する!」 ソフィア・クラリスの婚約者である デイモンドが大勢の貴族達の前で宣言すると 周囲の雰囲気は大笑いに包まれた 彼を賞賛する声と共に 「みろ、お前の惨めな姿を馬鹿にされているぞ!!」 周囲の反応に喜んだデイモンドだったが 対するソフィアは彼に1つだけ忠告をした 「あなたはもう少し考えて人の話を聞くべきだと思います」 彼女の言葉の意味を 彼はその時は分からないままであった お気に入りして頂けると嬉しいです 何より読んでくださる事に感謝を!

処理中です...