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3、
しおりを挟む「ん?なんだい?」
マシュー様はどちらに返答すれば良いのか困ったように、私とビリアを見比べて。
けれど迷いは一瞬で、すぐに私の顔を見つめながら問い返してくれた。その何気ない行動が、少し私の心を軽くした。
が、そんな事でめげないのがビリアという女だ。
「も~マシュー様ったらあん。ビリアの話を聞いてください~!」
プンプン。
そんな効果音が聞こえそうに、頬を膨らませてビリアはまた王子に腕を絡ませた。イラッときたけど……マシュー様は直ぐにその手を押しのけたので、ホッとする。
「ビリア。まずはラナリアから話を聞きたい。というか、私は彼女に会いに来たんだ。席を外してくれないか?」
──!
マシュー様!
私、一生貴方に付いて行きます!
気持ちいいくらいにキッパリ妹を追い払おうとするマシュー様に、私はちょっと感動してしまった。
「マシューさ……」
「え~?こおんな醜いお姉様よりぃ~私とお話してる方が楽しいと思いますよぉ~?マシュー様、先ほど私と話してて、楽しいと仰ってたじゃないですかぁ~?」
だから私の言葉にかぶせないでよ!
いい加減、妹に厳しい言葉をかけようとした私。
けれどマシュー様の方が少し早かった。
「ビリア、あのね……」
「ビリア、私はラナリアと話してる時が一番楽しいんだ。それに先ほど楽しいと言ったのは──こう言っては何だが、社交辞令だ。君はそんな事も分からないのか?」
「んな……!」
「そもそも私はラナリアの婚約者なんだ。気安く腕を絡めてくるのはやめてくれ、失礼だぞ。そして令嬢として下品で恥ずかしい行為だと気付くべきだ」
「な──!!」
まさかマシュー様にそこまで言われるとは思ってもいなかったのだろう。私も驚きだ。
ビリアは怒りと恥ずかしさで顔を真っ赤にしている。
「それに私はラナリア以上に美しい女性は居ないと思ってる。私にとって彼女は女神のようだ。だが……容姿で彼女を愛してるわけじゃない。私は彼女の全てを愛してるんだ」
そう言ってマシュー様は私を見て微笑んだ。
「……」
「……」
そこで黙らないでください!真っ赤にならないでください!照れないで!私も恥ずかしくなってきます!
お互いに真っ赤になって黙り込みながら見つめ合う。
それが気に入らないのか、ビリアはダンッと床を踏み鳴らした。
「はあ!?何をおっしゃってるんですか!お姉様ほど醜い存在を私は知りません!痩せっぽっちで平凡な顔立ち!人混みに紛れたら直ぐに見失うようなオーラの無さ!こんなのの何処がいいんですか!?私の方が絶対美人です!優良物件です!」
もうやめといたら。
そう言っても聞かないであろう剣幕で、ビリアはまくし立てた。
「こんなのより私と結婚した方がいいに決まってます!王子様、趣味悪いんじゃありません?今からでも遅くありません、謝ってくだされば私は貴方を受け入れますから!だから!姉とは婚約破棄して私と婚約を──結婚しましょう!」
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