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第五章 パラレル
第134話 Another World
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「黛君のいた日本は軍隊を持つ軍事国家らしい」
黛君がそんなところからやって来た? うーん、話を聞いてもやっぱり信じられないけどなぁ。
「これはあくまで推測の一つに過ぎないんだけど、僕が思うにこっちの日本政府は、その戦争に負けなかった日本に関心を持っているんじゃないのかな」
「戦争に負けなかった日本?」
「ああ。前向きに考えれば、その日本とこっちの日本を比較して、日本の進むべき道について何らかの方針を打ち出すとか。あるいは逆に最悪なのは、過去を変えてしまうような大それたことを企んでいたりするケースとかだな」
「過去を変えるぅっ?」
おいおい、どうしちゃったのかな、十一夜君は? 突拍子もなさ過ぎて、全然現実味がないよ。本気か?
「ああ。あくまで僕の推論の一つに過ぎないけどな」
うんうん。まあそうでしょうそうでしょう。現実的にそりゃないだろうと思うけどね。
ってあれ……しかし考えてみれば、性別が勝手に変わっちゃうってことだって、そんな馬鹿げたことが起こるわけないようなことではあるんだよなぁ。そのことを考えたら、安易にあるわけないなんて決め付けることはできないのか……うぅむ。
「あ、それにしてもわたしは一体何の関係があるのかな?」
そこだよ、大きな謎の一つ。わたしにとって重要なポイント。
「ああ、それなんだけど、華名咲さんのことを向こうに知られるのも今は避けた方がいいかと思って、話には出さなかったんだけど」
「けど?」
「うん……」
十一夜君は少し思案している様子で押し黙っている。話には出さなかったんだけど……何? 続きが気になる。
「話の流れでたまたま出た話題なんだけど……黛君の体調が不安定なのが、何らかの特異点が存在している可能性があって、その干渉によって黛君の存在が揺らぐからじゃないのかっていう話が出たんだよ」
「うわ。出た、特異点!」
「うん……ここでも出たんだよ。特異点って言葉が」
「……つまり、わたしの存在のせいで黛君の体調に影響が出たってこと?」
「まぁ、MSの男が言ってた内容と合わせると、そう考えるのが妥当かな。華名咲さん、そう言えば体調崩して治療受けてたよね? 華名咲さんの方にももしかして影響があったりしてない?」
「あ……あぁ~……なるほどぉ」
たまにいきなり風邪ひいたみたいになったり、この前は下半身に異常が出たりしたなぁ……。まさか、そうなのか? 確かに不自然っちゃあ不自然な体調変化ではあるんだよなぁ。
「その分だと心当たりがありそうだな」
「うん、まぁ……言われてみれば、朝まで何でもなかったのに突然風邪の症状が出て熱を出したり、少し前はやっぱりいきなり高熱が出て、その後原因不明だけどホルモンバランスが崩れちゃって、今はその治療をしてるんだよ。普通病気だと原因があるはずなんだけど、検査しても原因が見つからなくって、取り敢えず対症療法で治療してる状況なんだよね」
「そうか……じゃあ可能性としては十分にあり得るわけだね……」
そう言って十一夜君はまた押し黙って思索に耽っている様子だ。
そうか……黛君がこの世界に渡って来たことでもし相互に影響を及ぼしているのだとしたら、確かに黛君の体調が不安定ならわたしの体調だって不安定になってもおかしくないなぁ。
「特異点について訊いてみたんだけど、いまいちはっきりした答えは返ってこなくて……ただ、黛君の存在自体はやっぱり特異点ということらしいんだ」
「うーん……だとしたらやっぱり、わたしもどこか別の世界から来ってことになるの? そんな自覚全然ないんだけど……」
「意気込んで接触してみたはいいんだけど、そこまでは分からなかったんだよなぁ。あまりそこに食い付いて、こちらが何かの情報を持っていると思われても困る。一応こっちはMSについて調べる一環として接触しているから、余計なことを言って華名咲さんのことが知れてもまずいからね」
「そっかぁ……色々と配慮してくれてありがとね」
「いや……それはいいんだけど、政府が持ってる情報をやっぱり探ってみる必要があるなということは今回確信した。聖連に話して、ハッキングさせようと考えている。あいつの腕なら政府レベルのセキュリティも行けるはずだから。まあ僕が潜ることも場合によっては考えてるんだけど」
「うわぁ~、相変わらずとんでもないことをさらりと言うよねぇ、十一夜君は……」
「まぁな」
褒めてませんけどね。なぜだかこういう時堂々とドヤ顔してくるよね、十一夜君は。悪怯れることなく。
「あ、それから」
「ん?」
「須藤麻由美と進藤杏奈だけど、恭平さんが上手く例の病院に小細工して、徐々にだけど洗脳を解いていってるって。順調だって言ってた」
「そっかぁ……」
それを聞いてほっとした。恭平さんが、宣言した通りちゃんと動いてくれているんだ。よかった。
「まぁ今回得た情報をざっくりまとめると、こんなところかな」
「うん、分かった。だけど政府のそんな秘密機関の人と接触したりして、十一夜君の身に危険はないの?」
「ああ、それなら大丈夫。その人すみれさんに相当ビビってたから。あの婆さん、一体何者なんだろなぁ」
「婆さんって、もぉ。口悪いなぁ」
「まぁな」
出ましたドヤ顔。褒めてませんってば、もぉ。
黛君がそんなところからやって来た? うーん、話を聞いてもやっぱり信じられないけどなぁ。
「これはあくまで推測の一つに過ぎないんだけど、僕が思うにこっちの日本政府は、その戦争に負けなかった日本に関心を持っているんじゃないのかな」
「戦争に負けなかった日本?」
「ああ。前向きに考えれば、その日本とこっちの日本を比較して、日本の進むべき道について何らかの方針を打ち出すとか。あるいは逆に最悪なのは、過去を変えてしまうような大それたことを企んでいたりするケースとかだな」
「過去を変えるぅっ?」
おいおい、どうしちゃったのかな、十一夜君は? 突拍子もなさ過ぎて、全然現実味がないよ。本気か?
「ああ。あくまで僕の推論の一つに過ぎないけどな」
うんうん。まあそうでしょうそうでしょう。現実的にそりゃないだろうと思うけどね。
ってあれ……しかし考えてみれば、性別が勝手に変わっちゃうってことだって、そんな馬鹿げたことが起こるわけないようなことではあるんだよなぁ。そのことを考えたら、安易にあるわけないなんて決め付けることはできないのか……うぅむ。
「あ、それにしてもわたしは一体何の関係があるのかな?」
そこだよ、大きな謎の一つ。わたしにとって重要なポイント。
「ああ、それなんだけど、華名咲さんのことを向こうに知られるのも今は避けた方がいいかと思って、話には出さなかったんだけど」
「けど?」
「うん……」
十一夜君は少し思案している様子で押し黙っている。話には出さなかったんだけど……何? 続きが気になる。
「話の流れでたまたま出た話題なんだけど……黛君の体調が不安定なのが、何らかの特異点が存在している可能性があって、その干渉によって黛君の存在が揺らぐからじゃないのかっていう話が出たんだよ」
「うわ。出た、特異点!」
「うん……ここでも出たんだよ。特異点って言葉が」
「……つまり、わたしの存在のせいで黛君の体調に影響が出たってこと?」
「まぁ、MSの男が言ってた内容と合わせると、そう考えるのが妥当かな。華名咲さん、そう言えば体調崩して治療受けてたよね? 華名咲さんの方にももしかして影響があったりしてない?」
「あ……あぁ~……なるほどぉ」
たまにいきなり風邪ひいたみたいになったり、この前は下半身に異常が出たりしたなぁ……。まさか、そうなのか? 確かに不自然っちゃあ不自然な体調変化ではあるんだよなぁ。
「その分だと心当たりがありそうだな」
「うん、まぁ……言われてみれば、朝まで何でもなかったのに突然風邪の症状が出て熱を出したり、少し前はやっぱりいきなり高熱が出て、その後原因不明だけどホルモンバランスが崩れちゃって、今はその治療をしてるんだよ。普通病気だと原因があるはずなんだけど、検査しても原因が見つからなくって、取り敢えず対症療法で治療してる状況なんだよね」
「そうか……じゃあ可能性としては十分にあり得るわけだね……」
そう言って十一夜君はまた押し黙って思索に耽っている様子だ。
そうか……黛君がこの世界に渡って来たことでもし相互に影響を及ぼしているのだとしたら、確かに黛君の体調が不安定ならわたしの体調だって不安定になってもおかしくないなぁ。
「特異点について訊いてみたんだけど、いまいちはっきりした答えは返ってこなくて……ただ、黛君の存在自体はやっぱり特異点ということらしいんだ」
「うーん……だとしたらやっぱり、わたしもどこか別の世界から来ってことになるの? そんな自覚全然ないんだけど……」
「意気込んで接触してみたはいいんだけど、そこまでは分からなかったんだよなぁ。あまりそこに食い付いて、こちらが何かの情報を持っていると思われても困る。一応こっちはMSについて調べる一環として接触しているから、余計なことを言って華名咲さんのことが知れてもまずいからね」
「そっかぁ……色々と配慮してくれてありがとね」
「いや……それはいいんだけど、政府が持ってる情報をやっぱり探ってみる必要があるなということは今回確信した。聖連に話して、ハッキングさせようと考えている。あいつの腕なら政府レベルのセキュリティも行けるはずだから。まあ僕が潜ることも場合によっては考えてるんだけど」
「うわぁ~、相変わらずとんでもないことをさらりと言うよねぇ、十一夜君は……」
「まぁな」
褒めてませんけどね。なぜだかこういう時堂々とドヤ顔してくるよね、十一夜君は。悪怯れることなく。
「あ、それから」
「ん?」
「須藤麻由美と進藤杏奈だけど、恭平さんが上手く例の病院に小細工して、徐々にだけど洗脳を解いていってるって。順調だって言ってた」
「そっかぁ……」
それを聞いてほっとした。恭平さんが、宣言した通りちゃんと動いてくれているんだ。よかった。
「まぁ今回得た情報をざっくりまとめると、こんなところかな」
「うん、分かった。だけど政府のそんな秘密機関の人と接触したりして、十一夜君の身に危険はないの?」
「ああ、それなら大丈夫。その人すみれさんに相当ビビってたから。あの婆さん、一体何者なんだろなぁ」
「婆さんって、もぉ。口悪いなぁ」
「まぁな」
出ましたドヤ顔。褒めてませんってば、もぉ。
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