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第四章 Love And Hate
第115話 Lily
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『ディディエがコスプレしてたけど、もしかしてタユユの正体明かしたの?』
気になったので祐太にLINEで訊ねてみた。
『言ってないよ。どうしても興味あるって言うからさせてみた。でも俺の衣装貸したからコスプレしてるのはバレバレ笑』
またぁ。こいつは本当にガードがゆるいな。
まあどうせ秋菜にはもうバレてるからな。今更敢えて隠す意味もあまりないか。
ただ秋菜が明らかに気づいていながら未だ何も言ってこないところが不気味なんだよなぁ。
秋菜のことだから徹底的にイジってくるだろうとばかり思っていたから飛んだ肩透かしを喰らっている気分だ。わたしのことじゃないんだけど。
話は変わるが恭平さんに処方してもらっているホルモン薬は順調に作用しているようで、わたしの下半身事情は正常な状態へと近付きつつある。
そもそもTSしてしまったのが異常とは言えるが、女性として正常な状態へと近付きつつあるという意味でだ。
涼音さんにはお世話になってることもあり、先日母が涼音さんを誘ってランチしてきたと言っていた。恭平さんも一緒に誘ったそうで、母には涼音さんと恭平さんの関係については何も話さなかったのに二人の間柄について何かを嗅ぎ取ったようだ。そう言う方面、母や叔母さんは侮れない。
もちろんわたしの状況についても詳しい話を聞いてきたそうだ。
わたしや叔母さんからも母にはちゃんと説明しているが、主治医と直接話すのはまた別なのだろう。
ついでに言うと、その後涼音さんと恭平さんについてしつこく訊かれて面倒だった。
そんな調子で八月も半ば。
夏休みもいよいよ終盤に差し掛かろうとしている。
わたしと秋菜と妹の梨々花は仕立ててもらった浴衣を受け取ってきて、母と叔母さんに手伝ってもらいながら着付けに奮闘していた。
というのも今夜は友紀ちゃんと楓ちゃんと約束していた花火大会なのだ。
妹とディディエのことを彼女たちに話したら快く一緒に行くことを承諾してくれたので、折角だからみんなで浴衣を着ようというわけだ。
ちなみにディディエには父の浴衣を着せてあげることになった。
アニメで花火大会や夏祭りについては知っていて、本人たっての希望で浴衣で花火大会参加となった。
さらにディディエのリクエストで祐太も一緒だ。
祐太はTシャツにデニムでいいと言いっていたのだが、そこもディディエがどうしてもと言って結局みんな浴衣ということになった。
ディディエ結構押しが強いな。
わたしと秋菜は牡丹柄で秋菜のは藍染めでわたしのは白地に赤やピンクの牡丹。梨々花は白地に紫の撫子柄で茎や葉には浅葱色や鳶色があしらわれている。
「梨々花、カワイイッ。凄くよく似合ってるよ!」
思わず褒めると嬉しそうに破顔した梨々花はまるで天使だ。うちの妹はこんなにかわいかったのかと今更再認識した。
「うんうん。似合ってる。梨々花もすっかりお姉さんになったねぇー」
「ホント? やったー。秋菜ちゃんと夏葉お姉ちゃんに選んでもらってよかった!」
「ほら、髪もやってあげるからおいで」
ってまさか妹の髪を結ってあげる日が来るなんてねぇ。女の子の髪のことなんて全然知らなかったのに。
わたしと秋菜は浴衣に合わせてアップにしてまとめていたので梨々花も同じようにしてあげた。
「うわぁ、お姉ちゃんたちとお揃いっ!」
嬉しそうにはしゃぐ妹。ふふ、まだまだこういうところは幼いな。
「さ、そろそろ行こうか」
秋菜が言うので時計を見ると確かにそろそろ出てもいい頃合いになっていた。
華名咲家らしく移動は普通に電車だ。
ディディエも意外と日本でのこうした日常を楽しんでいるようだ。
花火大会の会場が近づくにつれて、電車に乗り込んでくる浴衣姿の女性が増える。
電車を降りるともはや団扇を片手に下駄履きの女性が大挙して押し寄せていると言えそうなくらいだ。
友紀ちゃんや楓ちゃんとこまめに連絡を取りながらどうにか合流する。
「おぉぉ……本物のイケメンだぁ……」
友紀ちゃんと楓ちゃんがぱっと見いかにも目を引く風貌のディディエを見て固まっている。
「んでこれがわたしの弟の祐太」
「おぉぉ……こっちもイケメンだぁ……」
今度は祐太を見て結局固まっている。
これ、イケメンだけどタユユなんだよねー。
「それとこのかわいい子がわたしと夏葉ちゃんの妹の梨々花。超かわいいっしょ、えへっ」
ふふ、秋菜の妹じゃないけどまあ自慢したくなるのも分かる。梨々花はかわいいからなぁ。
「ほわぁー、かわゆいっ! 華名咲家の遺伝子ヤバいって! 半端ないわぁ」
友紀ちゃん、それはさすがに大袈裟だけど梨々花がかわいいのは間違いない。
さっきから梨々花かわいいしか言ってないな。でもかわいいもんはしょうがない。
どうしてこんなに急に妹がかわいく思えるのか考えてみたら、これ、確実に女子として女子を見る目が培われた結果だ。
女子って自然と相手を査定してるところがある気がする。同性を査定する目は意外とシビアだ。
でも本当にかわいい子に対しては素直に認めてしまうのでその厳しい目を掻い潜った子は本当にかわいい。もっとも女子が言うかわいいにはいろんなジャンルのかわいいがあるんだけど、梨々花の場合は見た目も性格もかわいい。
「みんなも浴衣かわいいねっ! 似合ってるよー」
友紀ちゃんは蝶々、楓ちゃんは百合の柄の浴衣をそれぞれ着ている。
って楓ちゃんが百合柄っ!?
べ、別に深い意味はないよねぇ、まさか……。
梨々花をポーッと見つめる楓ちゃんに不安しか浮かばないんですけど!?
楓ちゃんの恋愛観をとやかく言うつもりはないけど、うちの大事な梨々花だけは魔の手から死守しなくては。
かたく誓うわたしであった。
気になったので祐太にLINEで訊ねてみた。
『言ってないよ。どうしても興味あるって言うからさせてみた。でも俺の衣装貸したからコスプレしてるのはバレバレ笑』
またぁ。こいつは本当にガードがゆるいな。
まあどうせ秋菜にはもうバレてるからな。今更敢えて隠す意味もあまりないか。
ただ秋菜が明らかに気づいていながら未だ何も言ってこないところが不気味なんだよなぁ。
秋菜のことだから徹底的にイジってくるだろうとばかり思っていたから飛んだ肩透かしを喰らっている気分だ。わたしのことじゃないんだけど。
話は変わるが恭平さんに処方してもらっているホルモン薬は順調に作用しているようで、わたしの下半身事情は正常な状態へと近付きつつある。
そもそもTSしてしまったのが異常とは言えるが、女性として正常な状態へと近付きつつあるという意味でだ。
涼音さんにはお世話になってることもあり、先日母が涼音さんを誘ってランチしてきたと言っていた。恭平さんも一緒に誘ったそうで、母には涼音さんと恭平さんの関係については何も話さなかったのに二人の間柄について何かを嗅ぎ取ったようだ。そう言う方面、母や叔母さんは侮れない。
もちろんわたしの状況についても詳しい話を聞いてきたそうだ。
わたしや叔母さんからも母にはちゃんと説明しているが、主治医と直接話すのはまた別なのだろう。
ついでに言うと、その後涼音さんと恭平さんについてしつこく訊かれて面倒だった。
そんな調子で八月も半ば。
夏休みもいよいよ終盤に差し掛かろうとしている。
わたしと秋菜と妹の梨々花は仕立ててもらった浴衣を受け取ってきて、母と叔母さんに手伝ってもらいながら着付けに奮闘していた。
というのも今夜は友紀ちゃんと楓ちゃんと約束していた花火大会なのだ。
妹とディディエのことを彼女たちに話したら快く一緒に行くことを承諾してくれたので、折角だからみんなで浴衣を着ようというわけだ。
ちなみにディディエには父の浴衣を着せてあげることになった。
アニメで花火大会や夏祭りについては知っていて、本人たっての希望で浴衣で花火大会参加となった。
さらにディディエのリクエストで祐太も一緒だ。
祐太はTシャツにデニムでいいと言いっていたのだが、そこもディディエがどうしてもと言って結局みんな浴衣ということになった。
ディディエ結構押しが強いな。
わたしと秋菜は牡丹柄で秋菜のは藍染めでわたしのは白地に赤やピンクの牡丹。梨々花は白地に紫の撫子柄で茎や葉には浅葱色や鳶色があしらわれている。
「梨々花、カワイイッ。凄くよく似合ってるよ!」
思わず褒めると嬉しそうに破顔した梨々花はまるで天使だ。うちの妹はこんなにかわいかったのかと今更再認識した。
「うんうん。似合ってる。梨々花もすっかりお姉さんになったねぇー」
「ホント? やったー。秋菜ちゃんと夏葉お姉ちゃんに選んでもらってよかった!」
「ほら、髪もやってあげるからおいで」
ってまさか妹の髪を結ってあげる日が来るなんてねぇ。女の子の髪のことなんて全然知らなかったのに。
わたしと秋菜は浴衣に合わせてアップにしてまとめていたので梨々花も同じようにしてあげた。
「うわぁ、お姉ちゃんたちとお揃いっ!」
嬉しそうにはしゃぐ妹。ふふ、まだまだこういうところは幼いな。
「さ、そろそろ行こうか」
秋菜が言うので時計を見ると確かにそろそろ出てもいい頃合いになっていた。
華名咲家らしく移動は普通に電車だ。
ディディエも意外と日本でのこうした日常を楽しんでいるようだ。
花火大会の会場が近づくにつれて、電車に乗り込んでくる浴衣姿の女性が増える。
電車を降りるともはや団扇を片手に下駄履きの女性が大挙して押し寄せていると言えそうなくらいだ。
友紀ちゃんや楓ちゃんとこまめに連絡を取りながらどうにか合流する。
「おぉぉ……本物のイケメンだぁ……」
友紀ちゃんと楓ちゃんがぱっと見いかにも目を引く風貌のディディエを見て固まっている。
「んでこれがわたしの弟の祐太」
「おぉぉ……こっちもイケメンだぁ……」
今度は祐太を見て結局固まっている。
これ、イケメンだけどタユユなんだよねー。
「それとこのかわいい子がわたしと夏葉ちゃんの妹の梨々花。超かわいいっしょ、えへっ」
ふふ、秋菜の妹じゃないけどまあ自慢したくなるのも分かる。梨々花はかわいいからなぁ。
「ほわぁー、かわゆいっ! 華名咲家の遺伝子ヤバいって! 半端ないわぁ」
友紀ちゃん、それはさすがに大袈裟だけど梨々花がかわいいのは間違いない。
さっきから梨々花かわいいしか言ってないな。でもかわいいもんはしょうがない。
どうしてこんなに急に妹がかわいく思えるのか考えてみたら、これ、確実に女子として女子を見る目が培われた結果だ。
女子って自然と相手を査定してるところがある気がする。同性を査定する目は意外とシビアだ。
でも本当にかわいい子に対しては素直に認めてしまうのでその厳しい目を掻い潜った子は本当にかわいい。もっとも女子が言うかわいいにはいろんなジャンルのかわいいがあるんだけど、梨々花の場合は見た目も性格もかわいい。
「みんなも浴衣かわいいねっ! 似合ってるよー」
友紀ちゃんは蝶々、楓ちゃんは百合の柄の浴衣をそれぞれ着ている。
って楓ちゃんが百合柄っ!?
べ、別に深い意味はないよねぇ、まさか……。
梨々花をポーッと見つめる楓ちゃんに不安しか浮かばないんですけど!?
楓ちゃんの恋愛観をとやかく言うつもりはないけど、うちの大事な梨々花だけは魔の手から死守しなくては。
かたく誓うわたしであった。
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