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第四章 Love And Hate

第110話 楽園ベイベー

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「ぶっふぉぉーーっ!! 秋菜と夏葉ちゃんの生おっぱい!!」

 セクハラ体質の友紀ちゃんがプールの更衣室でひっくり返りそうになっている。
 いつもならまっ先にセクハラしてくるくせに、華名咲家の女子らしく堂々と服を脱いで水着に着替えていたらわたしたちの生乳に耐えられなかったらしい。
 普段はエロオヤジのように振る舞うくせに意外と初心だよね、友紀ちゃん。

 もっともわたしの方は諸事情で下はしっかりバスタオルを巻いて隠しながら着替えている。
 秋菜はいつもの調子で平気な顔して脱いでいる。
 学校では紺パン履いてしっかりパンチラ対策していると聞き及んでいるが、こういう時は温泉に入る時と同じなんだな。

 楓ちゃんも友紀ちゃんも顔を真っ赤に染めつつも目をひん剥いて釘付けになっている。
 女同士だしそんなに見なくても……と思ったが、考えたらわたしも最初は物珍しくてついつい釘付けになってしまったのだったと思い出した。

「ふぇ~~。夏葉ちゃんも秋菜も、キレイなカラダしてるねぇ~。改めて感心するわ。結構着痩せするタイプだったんだねぇ」

 まあ二人とも育乳には気を使ってナイトブラやらおっぱいマッサージやら頑張ってるからね。
 秋菜は全国誌のファッションモデルをやれてるほどだしそれなりにスタイルには自信がある。

「楓、わたしと夏葉ちゃんはお互いにおっぱいマッサージとかしてるんだよ。楓にもしてあげる」

「ひゃんっ!?」

 秋菜がまるで友紀ちゃんみたいな悪い顔をして楓ちゃんの背後に回るとおっぱいを揉みしだいている。
 なんだこれ。
 いつも友紀ちゃんにやられてるセクハラを見せられているのかと思いきや、普通に我々がやっているおっぱいマッサージを真面目に施している。

 うぅむ……。それなのになんかえろいのは、楓ちゃんが言葉を発しなくなって顔を赤らめている上、心なしか息が荒くなってきているからか。

「これ、なんかいけないものを見てるような気分になるね……」

 友紀ちゃんがボソリと言ったがわたしも全面的に同意だ。さっきから二人とも目が釘付けになっている。

「うん、ちょっとこれはヤバいね……。楓ちゃんの新境地を垣間見た」

「楓が女の顔をしておる……」

 しばらくして秋菜のマッサージから解放された楓ちゃんは、ヘナヘナと床にへたり込んでしまった。

「あ、ひょっとしてイっちゃった?」

「こらっ、秋菜っ!」

 あっけらかんとした調子で何を言うかと思えばこいつは本当にもうこういう冗談すぐ言うからなぁ。
 周りに人がいなくてよかったわ。

「楓ちゃん、ゴメンね。バカ秋菜が変なこと言っ……て……?」

 楓ちゃんは両手で顔を覆ってへたり込んだまま耳まで真っ赤にしている。
 え……。

「ゴ、ゴホン」

 それから着替える間終始誰もが無言だったとだけ付け加えておこう。

 そういうわけで今日は四人でプールにやってきた。
 流れるプールありウォータースライダーありジャグジーあり(水着着用)の大型レジャー施設だ。

 わたしは普段電車や自転車などごく庶民的な移動手段を使っているが、よそはそうもいかないらしく楓ちゃん付きの運転手さんが送迎してくれることになった。

 華名咲家の人間が二人も同乗するということで、VIP接客用だというストレッチ・リムジンを回してくれた。
 なんだか申し訳ない。わたしたちは別に電車で構わないんだけど。

「わぁ~っ、意外に広いねぇーっ」

 あ、今更だけどここも華名咲グループ傘下の経営する施設です。

 秋菜とわたしはこの前買った小花柄のタンキニ。
 友紀ちゃんは意外にも白のビキニという攻めたスタイルだがかなり似合っていてかわいい。パッドが何枚入ってるのか知らないが……。
 そして楓ちゃんは大人っぽい黒のビキニ。
 すらっと背が高い楓ちゃんにはこれがまたよく似合っている。うぅむ。更衣室の出来事がフラッシュバックして真っ直ぐ見られない。

 四人並んでプールサイドに腰掛けて、足だけを水に浸けてパチャパチャやりながらのんびりお喋りしている。
 宿題のこととか学校のこととか色々と話題が移ろうが、この前わたしが怒ったから一応十一夜君の話題は出さないようにしてくれているようだ。

 ぼんやりプールを眺めていると、流れるプールなので泳いでるというより浮き輪でプカプカ流されていく人たちがのんびり気持ち良さそうだ。

 ってその中に朧さんが流れてるし。
 何やってんのこの人? いやわたしの警護だよね。
 うぅむ……いまひとつ警護っていう緊張感は感じられないけど。
 いや、ぷかーって。
 ぷかーってのんびり流されてますけど?

「ねぇねぇ、君たちぃっ。超かわいくね!?」

 とそこへ声をかけてきたチャラ男が四人。
 一瞬ディディエが来たのかと思ったがさすがに違ってただのナンパ師たちであった。
 うわ、ウザいの来た。

「四人で来たのぉ? かわいいからよかったら写真撮らせてくれない?」

 っていきなり水着の女の子の写真撮らせろってか?
 冗談でしょ?
 見ると楓ちゃんなんて完全に固まっている。
 友紀ちゃんも目が泳いでいる。プールに入ってないのに泳いでいるとはこれいかに? ってバカなこと言ってる場合じゃない。
 ここは元男としてわたしがしっかり守ってあげなくちゃ。

 ドボン。バシャン。ポチャン。ドボン。

 覚悟を決めた途端、次々とナンパ師どもがプールに落ちて流されていく。
 その後ろを何食わぬ顔で歩き去る朧さんをわたしは見た。

 さっきまでぷかーってしてたのに……ぷかーって。
 さすが朧さん。ぷかーってしててもそこは十一夜家の人なのねぇ。意外と頼りになるもんだわ。
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