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49 恋愛バトル開催
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「お疲れ様でしたー」
メンバーそれぞれに声をかけてねぎらい合う。
「楠木君、ホントお世話になりました。楠木君と光旗君のリズム隊、最高にいいねぇ~。やっぱりプロ目指してたりするの?」
気さくに話しかけてきたのは、ボーカルの鈴木君だ。イケメンな上にいい奴でなんて腹立たしい男だ。全くいい奴なんだからもぉ。
「いや、プロとか全然考えたことないよ」
そうそう簡単にプロのミュージシャンとしてやっていけるもんじゃないだろう。よく考えたわけじゃないけど、厳しい世界であろうことはなんか分かる。
音楽業界自体冷え込んでると聞くし。
「そっか。ささやかだけど、この後ファミレスで打ち上げだから来てよね。友達とかきてたら誘ってもらっていいからさ」
「おぉ、行く行く」
とは言ったものの、この後もし曜ちゃんと気まずい展開になったら打ち上げも地獄だなぁ。
なんて軽く思案していたら、曜ちゃんからThreadに着信だ。
『おつかれさまでした~(≧∀≦)
さっき言ってたお話だけど、打ち上げの後でいいかな?』
おぉ、曜ちゃんから打ち上げ後って言ってきてくれた。打ち上げが気まずくなっちゃうかもしれないから、考えてくれたんだな。相変わらず優しい子だよぉ。
さて、各自後始末や帰り支度を終えて会場を後にする段となった。スタッフさんたちにお礼を言って、支払い等を済ませて店を出る。
ライブの熱気がまだ残滓として燻っているのか、みんな仄かな高揚感から饒舌だ。ワイワイ言いながら店を出ると、流石は人気バンド。いわゆる出待ちのファンがいる。
ほぉほぉ、凄いねぇTHE TIME。流石単独ライブまでやってのけるだけのことはある。メンバーそれぞれにファンがついている模様だ。紅一点の曜ちゃんにももちろん男女共にファンがいて、花束やらなんやらもらっている。
「拓実君っ! お疲れ様!」
そう言って軽く体当たりしてきたのは、羽深さんだった。何とわざわざ出待ちしていたの? 言ってくれたらいいのに。って、曜ちゃんと会わすのはなんとなく気が引ける。でもこの状況からして最早避けられない事態だなぁ……。
「何々? そこの美人は、もしかしてもしかして? 楠木君の? 彼女さん? あ、鈴木って言います。この後打ち上げなんだけど、よかったら来てくださいよ。他ならぬ楠木君の彼女さんなら大歓迎っ」
おいおい、勝手に決めつけんなよ。羽深さんに失礼だろ。って言うか羽深さん、何モジモジしちゃってんのっ!? 勘違いされちゃうでしょうが!
「タクミ君? そのきれいな人、彼女さんなのかな? 彼女さんがいたのかな?」
えっ!? 曜ちゃん、違うって。何て顔してんのよ?
「え、羽深さんは彼女じゃないよ!」
「どうもぉ、拓実君がいつもお世話になってますぅ」
っていやいや、羽深さん。その言い方は余計に勘違いを促進しますって。勘違い促進活動になっちゃいますからやめて!?
「え、ていうかあなたどちら様? タクミ君と同じ学校の人?」
うぇっ!? 曜ちゃんっ? なんかいつもとキャラが違ってますよ?
「あら、あなたがジンピカちゃんね。毎日毎日拓実君にお弁当の写真送ってきてる人よね。いっつも美味しそうなお弁当ねぇ~、て拓実君と言いながら一緒に拝見してるわよ」
「はぁっ? ちょっと、どういうわけかな? 意味分かんないんですけどっ」
うわぁ~、これはちょっとヤバい感じになっちゃってるよ。これってなぜかまるで僕が浮気してたみたいな雰囲気になってるんですけど、そうじゃないからね!? これって多分、美人同士のプライドがぶつかり合っちゃった感じなのかな。
「うししし。なんだなんだぁ? なんかめっちゃおもしろ展開になってきたね! よしっ。行こう行こう。彼女も一緒に行っちゃおう! さぁー、盛り上がってまいりましたぁ」
盛り上がってねーよ。鈴木君が面白がってるんだけど、全っ然面白くないからっ。
あ、おい。メグ。ケラケラ笑ってんじゃないぞこら。
他のメンバーもっ。クスクス笑ってる場合じゃないってば。
まったくみんな他人ごとみたいにぃ。
羽深さんと曜ちゃんがバチバチ火花を散らす中、みんなは打ち上げ会場となるファミレスへと向かって意気揚々と歩き出した。
いつの間にか曜ちゃんたちの学校の人たちも加わって一層賑やかだ。
僕は烈しく火花を散らす羽深さんと曜ちゃんの間に挟まれて、肩身の狭さと緊張感に苛まされながら、ぎこちなく歩みを進めるのだった。
ファミレスで注文を終えると、各自ドリンクバーで飲み物を注ぎテーブルに戻る。
「それじゃあ、みんないいかな。今日のライブの成功と、我がバンドメンバージンピカの初の恋愛バトル開催を祝してぇ、カンパーイ!」
「カンパーイ! イェーイ!」
テーブルのそこかしこから声が上がる。いや恋愛バトルってねぇ。開催してないからっ。そういうんじゃないから、もぉ。美人同士のプライドのぶつかり合いなんだよ、きっとこれはぁ。
ここへ来る道中と同様、このファミレスにおいても僕は曜ちゃんと羽深さんに挟まれる格好で畏って座っている。せっかくの打ち上げだというのに、非常に居心地が悪い。演奏中の方がまだよっぽどリラックスできていたよ。
二人の意地のぶつかり合いに、部外者の僕を巻き込まないで欲しいのに。
一体どうしてこうなった!?
メンバーそれぞれに声をかけてねぎらい合う。
「楠木君、ホントお世話になりました。楠木君と光旗君のリズム隊、最高にいいねぇ~。やっぱりプロ目指してたりするの?」
気さくに話しかけてきたのは、ボーカルの鈴木君だ。イケメンな上にいい奴でなんて腹立たしい男だ。全くいい奴なんだからもぉ。
「いや、プロとか全然考えたことないよ」
そうそう簡単にプロのミュージシャンとしてやっていけるもんじゃないだろう。よく考えたわけじゃないけど、厳しい世界であろうことはなんか分かる。
音楽業界自体冷え込んでると聞くし。
「そっか。ささやかだけど、この後ファミレスで打ち上げだから来てよね。友達とかきてたら誘ってもらっていいからさ」
「おぉ、行く行く」
とは言ったものの、この後もし曜ちゃんと気まずい展開になったら打ち上げも地獄だなぁ。
なんて軽く思案していたら、曜ちゃんからThreadに着信だ。
『おつかれさまでした~(≧∀≦)
さっき言ってたお話だけど、打ち上げの後でいいかな?』
おぉ、曜ちゃんから打ち上げ後って言ってきてくれた。打ち上げが気まずくなっちゃうかもしれないから、考えてくれたんだな。相変わらず優しい子だよぉ。
さて、各自後始末や帰り支度を終えて会場を後にする段となった。スタッフさんたちにお礼を言って、支払い等を済ませて店を出る。
ライブの熱気がまだ残滓として燻っているのか、みんな仄かな高揚感から饒舌だ。ワイワイ言いながら店を出ると、流石は人気バンド。いわゆる出待ちのファンがいる。
ほぉほぉ、凄いねぇTHE TIME。流石単独ライブまでやってのけるだけのことはある。メンバーそれぞれにファンがついている模様だ。紅一点の曜ちゃんにももちろん男女共にファンがいて、花束やらなんやらもらっている。
「拓実君っ! お疲れ様!」
そう言って軽く体当たりしてきたのは、羽深さんだった。何とわざわざ出待ちしていたの? 言ってくれたらいいのに。って、曜ちゃんと会わすのはなんとなく気が引ける。でもこの状況からして最早避けられない事態だなぁ……。
「何々? そこの美人は、もしかしてもしかして? 楠木君の? 彼女さん? あ、鈴木って言います。この後打ち上げなんだけど、よかったら来てくださいよ。他ならぬ楠木君の彼女さんなら大歓迎っ」
おいおい、勝手に決めつけんなよ。羽深さんに失礼だろ。って言うか羽深さん、何モジモジしちゃってんのっ!? 勘違いされちゃうでしょうが!
「タクミ君? そのきれいな人、彼女さんなのかな? 彼女さんがいたのかな?」
えっ!? 曜ちゃん、違うって。何て顔してんのよ?
「え、羽深さんは彼女じゃないよ!」
「どうもぉ、拓実君がいつもお世話になってますぅ」
っていやいや、羽深さん。その言い方は余計に勘違いを促進しますって。勘違い促進活動になっちゃいますからやめて!?
「え、ていうかあなたどちら様? タクミ君と同じ学校の人?」
うぇっ!? 曜ちゃんっ? なんかいつもとキャラが違ってますよ?
「あら、あなたがジンピカちゃんね。毎日毎日拓実君にお弁当の写真送ってきてる人よね。いっつも美味しそうなお弁当ねぇ~、て拓実君と言いながら一緒に拝見してるわよ」
「はぁっ? ちょっと、どういうわけかな? 意味分かんないんですけどっ」
うわぁ~、これはちょっとヤバい感じになっちゃってるよ。これってなぜかまるで僕が浮気してたみたいな雰囲気になってるんですけど、そうじゃないからね!? これって多分、美人同士のプライドがぶつかり合っちゃった感じなのかな。
「うししし。なんだなんだぁ? なんかめっちゃおもしろ展開になってきたね! よしっ。行こう行こう。彼女も一緒に行っちゃおう! さぁー、盛り上がってまいりましたぁ」
盛り上がってねーよ。鈴木君が面白がってるんだけど、全っ然面白くないからっ。
あ、おい。メグ。ケラケラ笑ってんじゃないぞこら。
他のメンバーもっ。クスクス笑ってる場合じゃないってば。
まったくみんな他人ごとみたいにぃ。
羽深さんと曜ちゃんがバチバチ火花を散らす中、みんなは打ち上げ会場となるファミレスへと向かって意気揚々と歩き出した。
いつの間にか曜ちゃんたちの学校の人たちも加わって一層賑やかだ。
僕は烈しく火花を散らす羽深さんと曜ちゃんの間に挟まれて、肩身の狭さと緊張感に苛まされながら、ぎこちなく歩みを進めるのだった。
ファミレスで注文を終えると、各自ドリンクバーで飲み物を注ぎテーブルに戻る。
「それじゃあ、みんないいかな。今日のライブの成功と、我がバンドメンバージンピカの初の恋愛バトル開催を祝してぇ、カンパーイ!」
「カンパーイ! イェーイ!」
テーブルのそこかしこから声が上がる。いや恋愛バトルってねぇ。開催してないからっ。そういうんじゃないから、もぉ。美人同士のプライドのぶつかり合いなんだよ、きっとこれはぁ。
ここへ来る道中と同様、このファミレスにおいても僕は曜ちゃんと羽深さんに挟まれる格好で畏って座っている。せっかくの打ち上げだというのに、非常に居心地が悪い。演奏中の方がまだよっぽどリラックスできていたよ。
二人の意地のぶつかり合いに、部外者の僕を巻き込まないで欲しいのに。
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