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ダミアン家のティータイム
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空は清々しいほど晴れやかだ。風に運ばれた甘い匂いが鼻につく。目の前に広げられた菓子類にアイザックが唾を飲み込んだ。
「今日はお招きありがとうございます、リリアン様」
「わわワタシの方こそアイリーン様に来ていただけるなんて、それにアイザック様まで」
随分緊張している様子のレベッカ。私の機嫌を損ねてしまえばアイザックとの交流に波が出てくるのを察しているのだろう。顔を赤らめながらアイザックに視線を向ける彼女は悪役令嬢の取り巻きというよりただの夢見る乙女だ。
「僕なんかが来ても大丈夫だったかな?」
「勿論です!! いや、あのほらクロードお兄様も喜びますし」
名前を出されたクロードは妹の慌てっぷりに呆れた目をしている。ダミアン兄妹は揃ってホワイトブロンドの髪にコバルトブルーの瞳だ。クロードの方は髪をオールバックにまとめあげ、どこから見ても良家のお坊ちゃまといった姿だ。
「初めましてクロード様」
朗らかに笑ってみせる私にクロードは軽い会釈を返した。初対面から何か仕掛けてくるわけではなさそうだ。アイリーンの唯一の理解者、クロード・ダミアン。どう話しかけるべきか。
「さあ座ってくださいな、我が家の料理人が腕によりをかけて作った茶菓子ですの!」
甘い物は苦手なんだけど.......。ちらりとアイザックを横目に見れば天使のように頬を緩ませ頬張っている、うん愛しい。そんな私と同じく花を愛でるような視線を送っているのがレベッカ、そしてクロードだ。存外優しい目も出来るんだな~意外に身内には甘いタイプなのかもしれない。
「.......お兄様とクロード様は大変仲がよろしいのですね」
「うん! クロードはね、僕の恩人なんだ」
「おいやめろその話は」
「ふふっ、お兄様ったら照れちゃって」
「聞いておくれアイリーン。クロードは以前僕が大きな犬に襲われているところを助けてくれたんだ」
「馬鹿っやめろってば」
和気あいあいと思い出話に花が咲く。私が予想していたよりもずっとクロードとアイザックの関係は長く、同時にベーカー家とダミアン家の付き合いも長いらしい。確かに現状ならダミアン家より有力な候補はいないだろう。問題はアイザックの気持ちだ。
「そういえばその時からレベッカ様と話すようになって」
「レベッカも最初は警戒心凄かったんだぞ」
「違っ、だってアイザック様があまりにも」
そりゃこんな美形が天使の笑顔で寄ってきたら警戒するよな、分かる分かる。
「今でこそ仲良くさせて貰ってるけどね。アイリーンと歳も変わらないし、妹みたいだ」
アイザックの言葉にレベッカが顔を引き攣らせた。妹みたい、つまり女性としては見ていないという遠回しなお断り。勿論アイザック自身にその気はないだろうが。帰ったら彼にはもう少し異性の気持ちを汲むことを学んでもらうか。
この場は仕方ないと私がフォローを入れる。
「レベッカ様も妹なら誕生日の遅い私が末の妹になりますね!」
「えっ」
「お姉様、なんて。少し恥ずかしいですけれど」
冗談めかしにそして照れくさそうに零した私の一言にレベッカは目に涙を滲ませ胸を打たれた様子を見せた。彼女がどんな人柄か正しく把握するまではあくまで好意的に接していたい。
「アイリーン様.......」
和み始めた雰囲気に飲まれつつも、茶会はゆっくりと時間を動かしていく。
「そうだアイザック、この前言っていた剣術の話なんだがお父様から許可が下りたんだ!」
「えっ!? いいな~僕はお母様から許しが出なくて」
「そうだと思ってお父様がベーカー家にも打診すると話していたぞ。剣術は共に学ぶ同胞がいてこそ成長するとかなんとか」
剣術か。確かブラウンは父親の影響でもうとっくに始めているんだったな。それに比べアイザックは七歳をすぎても未だ棒切れすら握らせて貰えない。ゲーム内でもブラウンは剣術に長けていたらしいが、アイザックが得意としていたのは主人公と同じ魔法学科だった。
「お兄様は剣術が習いたいんですか?」
意外だ。アイザックは運動神経がいいとはいえないから苦手意識でもあるのかと思っていたのに。
「うん! 大切な人を守れるくらい強くなりたいからね」
むしろ貴方の笑顔を守りたい。
「私も剣術習いたいです.......」
帰ったらアルフレッドに頼んでみようかな。
「えっアイリーンも!?」
「アイリーン様本気ですか?」
「お前の妹結構変わってるな」
なんだその反応。確かに貴族の娘が剣術なんておかしいかもしれないが、私だって自分の身くらい自分で守れるようになりたいのだ。
「案外アイザックより強くなれるかもな」
「クロード!?」
意地悪そうに笑うクロード、そんな彼の言葉を真に受けあたふたするアイザック。そしてそれをうっとりと眺めるレベッカ。
この三人の関係が少し見えた気がした。
そして同時にクロード・ダミアンの攻略法に気づいたが、私の予想が正しければ彼は100%アイリーンを好きにはならない。
この男とはどういう付き合い方をすべきか今一度考え直さないといけないようだ。
「今日はお招きありがとうございます、リリアン様」
「わわワタシの方こそアイリーン様に来ていただけるなんて、それにアイザック様まで」
随分緊張している様子のレベッカ。私の機嫌を損ねてしまえばアイザックとの交流に波が出てくるのを察しているのだろう。顔を赤らめながらアイザックに視線を向ける彼女は悪役令嬢の取り巻きというよりただの夢見る乙女だ。
「僕なんかが来ても大丈夫だったかな?」
「勿論です!! いや、あのほらクロードお兄様も喜びますし」
名前を出されたクロードは妹の慌てっぷりに呆れた目をしている。ダミアン兄妹は揃ってホワイトブロンドの髪にコバルトブルーの瞳だ。クロードの方は髪をオールバックにまとめあげ、どこから見ても良家のお坊ちゃまといった姿だ。
「初めましてクロード様」
朗らかに笑ってみせる私にクロードは軽い会釈を返した。初対面から何か仕掛けてくるわけではなさそうだ。アイリーンの唯一の理解者、クロード・ダミアン。どう話しかけるべきか。
「さあ座ってくださいな、我が家の料理人が腕によりをかけて作った茶菓子ですの!」
甘い物は苦手なんだけど.......。ちらりとアイザックを横目に見れば天使のように頬を緩ませ頬張っている、うん愛しい。そんな私と同じく花を愛でるような視線を送っているのがレベッカ、そしてクロードだ。存外優しい目も出来るんだな~意外に身内には甘いタイプなのかもしれない。
「.......お兄様とクロード様は大変仲がよろしいのですね」
「うん! クロードはね、僕の恩人なんだ」
「おいやめろその話は」
「ふふっ、お兄様ったら照れちゃって」
「聞いておくれアイリーン。クロードは以前僕が大きな犬に襲われているところを助けてくれたんだ」
「馬鹿っやめろってば」
和気あいあいと思い出話に花が咲く。私が予想していたよりもずっとクロードとアイザックの関係は長く、同時にベーカー家とダミアン家の付き合いも長いらしい。確かに現状ならダミアン家より有力な候補はいないだろう。問題はアイザックの気持ちだ。
「そういえばその時からレベッカ様と話すようになって」
「レベッカも最初は警戒心凄かったんだぞ」
「違っ、だってアイザック様があまりにも」
そりゃこんな美形が天使の笑顔で寄ってきたら警戒するよな、分かる分かる。
「今でこそ仲良くさせて貰ってるけどね。アイリーンと歳も変わらないし、妹みたいだ」
アイザックの言葉にレベッカが顔を引き攣らせた。妹みたい、つまり女性としては見ていないという遠回しなお断り。勿論アイザック自身にその気はないだろうが。帰ったら彼にはもう少し異性の気持ちを汲むことを学んでもらうか。
この場は仕方ないと私がフォローを入れる。
「レベッカ様も妹なら誕生日の遅い私が末の妹になりますね!」
「えっ」
「お姉様、なんて。少し恥ずかしいですけれど」
冗談めかしにそして照れくさそうに零した私の一言にレベッカは目に涙を滲ませ胸を打たれた様子を見せた。彼女がどんな人柄か正しく把握するまではあくまで好意的に接していたい。
「アイリーン様.......」
和み始めた雰囲気に飲まれつつも、茶会はゆっくりと時間を動かしていく。
「そうだアイザック、この前言っていた剣術の話なんだがお父様から許可が下りたんだ!」
「えっ!? いいな~僕はお母様から許しが出なくて」
「そうだと思ってお父様がベーカー家にも打診すると話していたぞ。剣術は共に学ぶ同胞がいてこそ成長するとかなんとか」
剣術か。確かブラウンは父親の影響でもうとっくに始めているんだったな。それに比べアイザックは七歳をすぎても未だ棒切れすら握らせて貰えない。ゲーム内でもブラウンは剣術に長けていたらしいが、アイザックが得意としていたのは主人公と同じ魔法学科だった。
「お兄様は剣術が習いたいんですか?」
意外だ。アイザックは運動神経がいいとはいえないから苦手意識でもあるのかと思っていたのに。
「うん! 大切な人を守れるくらい強くなりたいからね」
むしろ貴方の笑顔を守りたい。
「私も剣術習いたいです.......」
帰ったらアルフレッドに頼んでみようかな。
「えっアイリーンも!?」
「アイリーン様本気ですか?」
「お前の妹結構変わってるな」
なんだその反応。確かに貴族の娘が剣術なんておかしいかもしれないが、私だって自分の身くらい自分で守れるようになりたいのだ。
「案外アイザックより強くなれるかもな」
「クロード!?」
意地悪そうに笑うクロード、そんな彼の言葉を真に受けあたふたするアイザック。そしてそれをうっとりと眺めるレベッカ。
この三人の関係が少し見えた気がした。
そして同時にクロード・ダミアンの攻略法に気づいたが、私の予想が正しければ彼は100%アイリーンを好きにはならない。
この男とはどういう付き合い方をすべきか今一度考え直さないといけないようだ。
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