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ハイカブリ(同居人×女主/王子×女主/複数/媚薬/歪/二穴)
後悔役に立たず_2
しおりを挟む「いや、ちょっと!! 間に合ってます!」
自分でもよく分からない言葉を吐きながら、フレリアは後退った。『君の王子』なんて言われたって、自分はフレリア本人ではないからピンとこない。それに、シアやランスの話を聞く限り、ロクな人間ではない筈だ。例え実際に一国の王子であったとしても、ついて行きたいとも、『君の王子』と言われて舞い上がる要素も微塵も無かった。
「どうして? この間は邪魔が入ってしまったからね。君が一人になるのを待っていたんだ。いやー、早めに一人になってくれてよかったよ」
「いや、そもそも」
「それに、先日君を迎えに行っただろう? なのにあの分からず屋の兄が君を表に出してくれないし、話をしようにもドアの前から退いてくれない」
「それは」
「こんなに真面目に、いつもお願いしているのにね。一体、何がダメだっていうのだろう? 君の兄達二人は……」
「あー……っと」
「ついでに言うと、あの母親もだね! まったく、僕の何が不満だと言うんだろう! ……あぁ、もしかして、僕に愛されているフレリアに嫉妬しているのかな? 相思相愛だからね、付け入る隙はないのだけれど」
「ちょっと」
「まぁ、だから、君が一人のところに、直接迎えに来たんだよ! その方が、気兼ねなく話も出来るし、君もついてくることが出来るだろう? あぁ、我ながら、なんて良い考えなんだろう!」
「あの!」
「今日はいないようだからね。良い日だ! さぁ、早く城へ向かおう。僕はもう、待ちくたびれてしまったよ。君にもこの気持ちが分かるよね?」
「……聞いてます?」
「早く城へ戻って、その服も着替えようね? 君にはもっとふさわしい服装がある筈だ。髪の毛も侍女に言って結って貰うと良い。それに、綺麗な髪飾りも用意してある。きっと、君に似合うと思うんだ」
「だーかーらー」
「絶対、絶対絶対。あの家にいるよりも、僕の元へ来た方がいいと思うんだ! その方が何でもあるし、何でも出来る。それに、この僕がこんなに愛しているんだから、それに勝るものなんて何も無いだろう?」
「もう! すみません!」
「……ん? なんだい? 急に」
"……駄目だ、この人、私の話を微塵も聞こうとしやしない……"
この王子とやらは、こちらの話を聞く気が全くないらしい。さっきから何度も口を挟もうとしていたのに、尽く無視して次の話をしてくる。何度か声を掛けて、強めに言って漸くだ。これはきっと、フレリアもうんざりしていたことだろう。
人の話を聞く姿勢がないところを見るに、この王子と一緒にいても、全く幸せになれそうな気がしない。自分の意見の押し付けをしているだけだ。……ランスとシアは、いつもこの人の話を聞かない王子を、フレリアに会わせないようにしていてくれたのだ。頭の下がる話である。
「あの、私は貴方に用事は無いのですが……?」
下手に刺激してもいけないと思いつつ、この場を切り抜けるには逃げ出すかどうにかやり過ごすしか無い。しかし、これだけ自分勝手に喋り倒す人間だ、やり過ごすのは難しいだろう。
「何を言ってるんだい? 君に無くても僕にはあるよ?」
「いや、あの……私は無いので、お話も終わったようですし、私はこれで失礼しますね……」
ジリジリと後方へと進む。顔はあくまでも和かに、何もおかしなことはしていない、ただ、話すことはないから帰るだけなのだ。そう、自分にも言い聞かせるように。
「何しているの? そっちは城の方向ではないよ?」
「帰りますので、それでは、ご機嫌よう」
引き攣った笑顔になっているかもしれない。声は暗くなっているかもしれない。が、それでも構わない、この場を切り抜けることが出来るのであれば──。
「……駄目だよ?」
王子は詰め寄ると、フレリアの手首を掴んだ。
「……っ……」
「君も素直じゃないなぁ」
「離してください!」
「もう……あんまり手荒な真似はしたくなかったけど。仕方ないよね? 君が悪いんだよ?」
懐からハンカチを出すと、それでフレリアの鼻と口を覆う。
「……ぅ……っ……」
息苦しくなったフレリアは、ジタバタと暴れるも王子は意に介さない。苦しくて何度か大きく呼吸をしようとした後、フレリアの意識はフッと遠くなっていった。
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