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Chapter 2.優雅なペット生活が始まるのかと思いきや、一波乱

2-05 魅惑のモフモフ、モファアアアア!!

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え……。
ちょ…………。
今の、何?! キュン?!

キュン、とした?!
え、嘘、マジ?!

俺は盛大に焦って、内心で「嘘だーーーーっ!」と、叫び声を上げていた。

いくらイケメンだからって、この大男に向かって、「キュン」とか「トゥンク」とか、ないだろ、普通、有り得ないだろ!!
いやいやいや、今のなんかの間違い、そう、勘違い!!
俺、優しくされることなんてないから、なんか脳が、誤作動しただけ!! それだ!!
とにかくもう寝る!!

俺はなぜかプリプリ怒りながら、ヴァルの上腕――太いなオイ、腕じゃなくて太ももじゃねぇのかコレ――を両手で掴んだ。その途端、更なる衝撃が俺を襲う。
ふわふわ、モフモフ~っ!とした感触で、俺の指先がフッサフサの毛の中に沈み込む。
ヴァルの肩は見事な毛並みで覆われていて、上腕もまた、肩付近から伸びた毛でふさふさなのだ。

「ふおおおお、モフモフ、モファ~ッ!!」

もちろん俺は、大の犬好きだ。ついでに猫も大好き。モフモフ大歓迎。
その俺の指が、ふわふわの毛の中に沈み込む感触に、我を忘れてしまった。
俺はヴァルの上腕をセクハラよろしく触りまくり、喜びの雄叫びを上げる。

「むはあ~っ、すごい良い触り心地! いい香りの洗い立てフワフワ最高!!」

俺がわしゃわしゃ彼の腕を撫でていると、ヴァルが信じられない、という表情で言った。

「ユ、ユ、ユ……ユート、ど、どうした……俺の腕が、そそそそそそ、そんなに……き、気になるか? 毛が、気になるのか? そ、そうか、おまえには、体毛がほとんどないから、珍しいのだな? ……お、俺の、む、む、胸も、撫でてみるか?」

そう震える声で言ったヴァルは、無造作に羽織っている袖なしのガウンの前を、はだけた。肩から上腕に続き、乳首あたりまでフワフワの毛で覆われてた胸が、露わになる。
俺は誘惑に耐えきれず、そっと指を差し出し、ヴァルの胸元に触れてみた。
ふかっと指が沈み込む。腕よりも毛が密に生えていて、どうやらアンダーコートまであるようだ。二重のふかふか具合に、俺は大胆にも両掌りょうてのひらを彼の胸に広げて撫で始めた。

ふわっ。
もふっ。
ふかっ。

「うわぁ……モフモフぁアア……」

い。すごく、い。
俺は次第に大胆になってきて、ヴァルの体に触れている手を胸から首へ、髪へ、頭へ、そしてピンと立った大きな三角形の耳へと移動させた。
彼の耳がピクン、と揺れる。
実家で飼っていた犬は、耳の根元を優しく揉むと、すごく喜んだっけ。
無意識に同じ動作をすると、ヴァルが顔を真っ赤にして喉を鳴らすように声を発した。

「ウムルルルゥ……」

耳の毛は、他の場所より毛が短く寝ているため、ツヤツヤサラッした触り心地で、とても気持ちいい。俺が無心で撫でていると、ヴァルがうっとりした表情で言った。

「ゆ、ユート……俺のを触るのは構わないが、他の者には、触ってはいけないぞ。初対面の相手にこんな風に触ると、もしかしたら殺されてしまうかもしれないから、手を出してはいけない。いいな?」

俺は慌てて、手を引っ込めた。確かに、俺だっていきなりこんな風にさわさわ撫でられたら、気持ち悪い。

「ごめん、俺、無作法だった。飼ってた子を思い出して……。ごめんな」

そう言って離れようとすると、ヴァルが慌てて言い繕う。

「あ、いいんだ、俺のは、存分に触ればよい。むしろ、触ってくれ!! おまえに限り、俺の体はどこでも触り放題だ!! さあ、引き続き、思いっきり触れ!!」

変態? もしかしてやっぱりこいつ、変態?
もしかしてそういう趣味の変態?
思いっきり触っといて何だけど、触ってくれと言われたら、気持ち悪い……。

俺が思いっきり眉をひそめると、ヴァルは傷ついた表情になって、しゅんとした。

あれ……、俺、何をしてたんだっけ?

そうだ、こいつをベッドで寝かせようとしてたんだった!
思いっきり脱線してしまった!

俺は再びヴァルの腕を掴んで強引に立たせると、背中を押してベッドの方に誘導する。彼がベッドに座ったのを見て、俺もベッドに上がった。多分、俺がソファに寝ようとしたら、ヴァルはベッドを使わないだろう。だからもう観念して、一緒のベッドに寝ることにした。幸い、倒立前転ができそうなほど、巨大なベッドだ。二人が寝ても、隙間はたくさん空いている。体の接触は無いだろう。
俺はヴァルからできるだけ距離を取ってベッドの端ギリギリに横たわると、チラッとヴァルを見て言った。

「じゃ、おやすみ」

「なんだ? あ、ああ、寝るのか。う、うむ……。で、では、寝るか、ユート」

俺は頷くと、心の中で念じた。
こいつは、犬。大きな、犬。可愛い、犬。無邪気な、犬。
俺は気のいい大型犬と一緒に、ベッドで寝るだけ。
そう思ったら、何だかリラックスして、俺はすぐに眠りについた。
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