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Chapter 1.極悪鬼畜研究所で絶体絶命の貞操危機
1-06 羞恥プレイ悪態リサイタルの、物言わぬ客
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ホーランちゃんが泣きながら部屋を出て行ったあと、リザードンは茫然自失状態の俺を別の部屋に連れて行った。そこで凌辱椅子に拘束された俺は今、またもや全裸で装置に弄られている。
しかし、いつもとは様子が違った。
まず目隠しがなかった。部屋はうす暗く、俺の付近だけがスポットライトのようなもので明るく照らし出されている。
それに、いつもはしばらくすると複数の客たちが部屋に入ってくるのだが、いつまで経っても部屋は静かなまま。でも一人だけ、部屋の隅で誰かが椅子に座っているみたいだ。じっと俺を見ている気配がするのだが、俺に照らされているライトが明るすぎて、部屋の隅は暗く、誰かがいる、ということしかわからない。
俺を見ているそいつの正体は、さっきホーランちゃんとリザードンが言っていた王牙卿、とかいう奴なんだろう。そいつ以外は誰もいない。研究所のスタッフも、いない。いつもならそばに必ず控えて、客にセールストークを垂れ流しているのに。
柔らかいブラシ状の道具で亀頭をなぶられ、竿の裏筋をこすられ続ける俺の痴態を、きっとその男は食い入るように見つめているのだろう。もしかしたら、しこっているのかもしれない。この変態め!
いったい、どんな姿をしているのだろう。俺は暗がりにいるそいつの姿を想像して、気配を探った。
その男の気配は独特で、静かなのに何だか押しつぶされるような重圧を感じる。
それにしても、俺はこんなに何もかも晒されているのに、なんで隠れるようにして姿を見せないんだ?! ああ――あれか、俺が弄られているのをひそかに覗き見て喜ぶ変態か。きっと、すごく醜いトロールとかオークみたいな感じなんだろうな。この変態の化け物め!
俺は嫌でも思い出してしまう。
ホーランちゃんの泣き声と言葉を。俺の悲惨な末路を。
血まみれ瞬殺王牙
股突き殺しの絶倫卿
ニンゲン喰らいの好色卿
散々弄んだあと、食べ……
散々弄んだあと、食べ……
散々弄んだあと、食べ……
散々弄んだあと、食べ……
ううう……。
これ、死亡フラグか?
俺には残酷で絶望的な、死亡フラグしかないのか?
どうやったら、その悲惨な末路を回避できる?
そうだ、この好色卿とやらに嫌われたら、俺を買うのやめるんじゃないか?
醜く泣き叫んでみるか? ――それだ。うるさい奴だと、諦めてくれるかも。
そうだ、それだ。
大騒ぎしてみよう。
すぐそうしよう、うん、今すぐ実行しよう!
「うっ……ううぅっ、いやだ、いやだ、いやだ、この変態野郎、やめろ、見るなぁ……っ!!」
演技でみっともなく泣き叫んでやろうと思ったのに、羞恥と恐怖で、自然に声が震えて、演技以上の効果が出た。主演男優賞はいただきだ。どの賞にもノミネートされてないけど。
それにしても、しまらない。変態御用達アヘアヘ椅子に拘束されて、お股パッカ~ン状態であそこをフルボッキさせて相手を威嚇とか、どんなお笑い破廉恥劇場なんだよ。
どんなに嫌だと思っていても、刺激されれば勃ち上がり元気よく精を吐き出してしまうその部分が、恨めしい。
それでも続けるしかない。
こいつに、俺を買うのをやめさせるんだ!
俺は精一杯虚勢を張り、叫び続けた。
「やいてめぇ、俺を買うと後悔するぞ! よく見ろ、俺は良いところなんて一つも無い、くだらない人間なんだ! ご覧の通りの地味な顔立ちだし、特にこれといった特技もなく、ドジでマヌケで音痴で根暗な小心者だ! ちょっとした失敗を2億年引きずって鬱々するし、俺と一緒にいたら底なしのウツ沼に沈んで二度と浮き上がってこれないぞ! だからやめとけ、全力でお薦めしない物件だぞ俺は! 不良品でいわくつきの呪い人形さながらだからな、絶対手を出すな!」
自分で自分をこきおろしているうち、だんだん、悲しくなってきた。どうして自分の欠点を連呼しなきゃいかんのだ。どうせ俺は地味顔で、ドジでマヌケな男だよ。
事実は時に、凶器のようだ。
俺を打ちのめす。
くそ、おまえが悪いんだ、変態野郎! そうだ、どうせ俺の言葉なんて意味わからないんだから、次はこいつの悪口を叫んでやろう。どんな奴か知らんけど。
「この、変態! いたいけな俺の痴態を見るのがそんなに楽しいか、この変態変態変態野郎!」
語彙力……。
いかん、続けて騒ぎ続けるんだ俺、負けるな俺、頑張れ俺! 喰われる運命を回避しろ! ぎゃんぎゃんうるさく泣き叫んで、嫌われる作戦、続行だ!
「い、い、いいか、やい、てめぇ、何でも金で買えると思うなよ、クソッ、金と欲にまみれた穢れたケダモノめ、恥を知れ!! 地獄に落ちやがれ、畜生め!! ヒッ!!」
最後の「ヒッ」は、男が動いたため、びっくりしたからだ。
俺の目には男のシルエットしかわからなかったが、さっきまでほとんど動かなかったそいつが立ち上がった気配に、俺の心臓は跳ね上がった。そいつは、巨大な熊が立ち上がったのかと錯覚するほど、でかかった。
やばいやばいやばいやばい!!
怒らせたのか?! そうなのか?! 俺は今すぐ食われるのか?!
どうしようどうしよう、近づいてきて、ガブリといかれるかもしれない!!
「嫌だぁっ!! やめろ、お願いだ、食べないでくれぇっ!! 俺はまずい、まずいぞ、骨と筋だけで、食べても美味しくない!! 腹壊すぞ、絶対だ!」
裏返った悲鳴まじりの俺の声が、静かな部屋にこだまする。
男がゆらりと身じろぎする気配がして、俺は恐怖で掠れる声をあげ続けた。
「やめろ来るなぁっ!! 神さま、助けて!! お願いですから、この悪夢を終わらせてください!! 助けて、助けて、助けて、だずげでぇっっっ!!」
溢れてきた涙と鼻水を拭うこともできず、俺はもういっそのことこのまま、心臓が破裂して死んでしまった方が楽だという気持ちで叫び続ける。
すると小山のようなシルエットが遠ざかり、大きな音を立てて部屋から出て行った。
「あ……あ……あ……」
俺は相変わらずガタガタ震えながら、淫乱椅子に縛り付けられたまま、バクバクする心臓を持て余していた。
しばらくするとリザードンが部屋に入ってきて、俺のすぐ傍まで来ると、装置を止めて言った。
「ドゥドゥ0801、どうした、具合が悪いのか? 安心しろ、もう終わったからな。大丈夫、大丈夫、もう大丈夫」
どこが大丈夫なんだ。全然大丈夫じゃない。そう文句を言ってやろうとした瞬間、リザードンは俺の口に何かをかぶせて、変な煙を吸い込ませた。
やばい、と思ったが、もう遅い。
抵抗することもできず、俺は意識を失った。
しかし、いつもとは様子が違った。
まず目隠しがなかった。部屋はうす暗く、俺の付近だけがスポットライトのようなもので明るく照らし出されている。
それに、いつもはしばらくすると複数の客たちが部屋に入ってくるのだが、いつまで経っても部屋は静かなまま。でも一人だけ、部屋の隅で誰かが椅子に座っているみたいだ。じっと俺を見ている気配がするのだが、俺に照らされているライトが明るすぎて、部屋の隅は暗く、誰かがいる、ということしかわからない。
俺を見ているそいつの正体は、さっきホーランちゃんとリザードンが言っていた王牙卿、とかいう奴なんだろう。そいつ以外は誰もいない。研究所のスタッフも、いない。いつもならそばに必ず控えて、客にセールストークを垂れ流しているのに。
柔らかいブラシ状の道具で亀頭をなぶられ、竿の裏筋をこすられ続ける俺の痴態を、きっとその男は食い入るように見つめているのだろう。もしかしたら、しこっているのかもしれない。この変態め!
いったい、どんな姿をしているのだろう。俺は暗がりにいるそいつの姿を想像して、気配を探った。
その男の気配は独特で、静かなのに何だか押しつぶされるような重圧を感じる。
それにしても、俺はこんなに何もかも晒されているのに、なんで隠れるようにして姿を見せないんだ?! ああ――あれか、俺が弄られているのをひそかに覗き見て喜ぶ変態か。きっと、すごく醜いトロールとかオークみたいな感じなんだろうな。この変態の化け物め!
俺は嫌でも思い出してしまう。
ホーランちゃんの泣き声と言葉を。俺の悲惨な末路を。
血まみれ瞬殺王牙
股突き殺しの絶倫卿
ニンゲン喰らいの好色卿
散々弄んだあと、食べ……
散々弄んだあと、食べ……
散々弄んだあと、食べ……
散々弄んだあと、食べ……
ううう……。
これ、死亡フラグか?
俺には残酷で絶望的な、死亡フラグしかないのか?
どうやったら、その悲惨な末路を回避できる?
そうだ、この好色卿とやらに嫌われたら、俺を買うのやめるんじゃないか?
醜く泣き叫んでみるか? ――それだ。うるさい奴だと、諦めてくれるかも。
そうだ、それだ。
大騒ぎしてみよう。
すぐそうしよう、うん、今すぐ実行しよう!
「うっ……ううぅっ、いやだ、いやだ、いやだ、この変態野郎、やめろ、見るなぁ……っ!!」
演技でみっともなく泣き叫んでやろうと思ったのに、羞恥と恐怖で、自然に声が震えて、演技以上の効果が出た。主演男優賞はいただきだ。どの賞にもノミネートされてないけど。
それにしても、しまらない。変態御用達アヘアヘ椅子に拘束されて、お股パッカ~ン状態であそこをフルボッキさせて相手を威嚇とか、どんなお笑い破廉恥劇場なんだよ。
どんなに嫌だと思っていても、刺激されれば勃ち上がり元気よく精を吐き出してしまうその部分が、恨めしい。
それでも続けるしかない。
こいつに、俺を買うのをやめさせるんだ!
俺は精一杯虚勢を張り、叫び続けた。
「やいてめぇ、俺を買うと後悔するぞ! よく見ろ、俺は良いところなんて一つも無い、くだらない人間なんだ! ご覧の通りの地味な顔立ちだし、特にこれといった特技もなく、ドジでマヌケで音痴で根暗な小心者だ! ちょっとした失敗を2億年引きずって鬱々するし、俺と一緒にいたら底なしのウツ沼に沈んで二度と浮き上がってこれないぞ! だからやめとけ、全力でお薦めしない物件だぞ俺は! 不良品でいわくつきの呪い人形さながらだからな、絶対手を出すな!」
自分で自分をこきおろしているうち、だんだん、悲しくなってきた。どうして自分の欠点を連呼しなきゃいかんのだ。どうせ俺は地味顔で、ドジでマヌケな男だよ。
事実は時に、凶器のようだ。
俺を打ちのめす。
くそ、おまえが悪いんだ、変態野郎! そうだ、どうせ俺の言葉なんて意味わからないんだから、次はこいつの悪口を叫んでやろう。どんな奴か知らんけど。
「この、変態! いたいけな俺の痴態を見るのがそんなに楽しいか、この変態変態変態野郎!」
語彙力……。
いかん、続けて騒ぎ続けるんだ俺、負けるな俺、頑張れ俺! 喰われる運命を回避しろ! ぎゃんぎゃんうるさく泣き叫んで、嫌われる作戦、続行だ!
「い、い、いいか、やい、てめぇ、何でも金で買えると思うなよ、クソッ、金と欲にまみれた穢れたケダモノめ、恥を知れ!! 地獄に落ちやがれ、畜生め!! ヒッ!!」
最後の「ヒッ」は、男が動いたため、びっくりしたからだ。
俺の目には男のシルエットしかわからなかったが、さっきまでほとんど動かなかったそいつが立ち上がった気配に、俺の心臓は跳ね上がった。そいつは、巨大な熊が立ち上がったのかと錯覚するほど、でかかった。
やばいやばいやばいやばい!!
怒らせたのか?! そうなのか?! 俺は今すぐ食われるのか?!
どうしようどうしよう、近づいてきて、ガブリといかれるかもしれない!!
「嫌だぁっ!! やめろ、お願いだ、食べないでくれぇっ!! 俺はまずい、まずいぞ、骨と筋だけで、食べても美味しくない!! 腹壊すぞ、絶対だ!」
裏返った悲鳴まじりの俺の声が、静かな部屋にこだまする。
男がゆらりと身じろぎする気配がして、俺は恐怖で掠れる声をあげ続けた。
「やめろ来るなぁっ!! 神さま、助けて!! お願いですから、この悪夢を終わらせてください!! 助けて、助けて、助けて、だずげでぇっっっ!!」
溢れてきた涙と鼻水を拭うこともできず、俺はもういっそのことこのまま、心臓が破裂して死んでしまった方が楽だという気持ちで叫び続ける。
すると小山のようなシルエットが遠ざかり、大きな音を立てて部屋から出て行った。
「あ……あ……あ……」
俺は相変わらずガタガタ震えながら、淫乱椅子に縛り付けられたまま、バクバクする心臓を持て余していた。
しばらくするとリザードンが部屋に入ってきて、俺のすぐ傍まで来ると、装置を止めて言った。
「ドゥドゥ0801、どうした、具合が悪いのか? 安心しろ、もう終わったからな。大丈夫、大丈夫、もう大丈夫」
どこが大丈夫なんだ。全然大丈夫じゃない。そう文句を言ってやろうとした瞬間、リザードンは俺の口に何かをかぶせて、変な煙を吸い込ませた。
やばい、と思ったが、もう遅い。
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