虹の月 貝殻の雲

たいよう一花

文字の大きさ
上 下
29 / 80
Ⅱ 幽閉

10. 二度目の交わり(2)

しおりを挟む
魔王はレイの放ったものを手ですくいとり、自身の猛りに擦り込むように塗り付けながら、視界にあるレイの全てを、貪るように見つめた。

目は物憂げに伏せられ、長い睫毛が涙を含んで光っている。
乱れた息に唇が震え、激しい接吻の名残が、唾液に濡れた口元を紅く彩る。
汗をにじませ上気した肌は、魔王の手に吸い付くように、しっとりと火照っている。

その全てが愛おしくて堪らず、魔王は自身の肌をレイにぴったりと密着させると、腕の中にくるむように抱きしめた。

「んっ……」

情熱的な抱擁に、レイは頭の芯が痺れてゆくのを感じ、目を閉じて身を任せた。

抵抗が止み、静かになったその体を、魔王は舌と唇、そして指先で、丹念に愛撫し始めた。レイの体のあちこちを、舌で弄り、指先で征服してゆく。

「はっ……んあっ……ん、ん、あぁ……」

レイの吐息まじりの甘い喘ぎ声が、魔王の口元から発せられる淫靡な水音と共に、室内に響く。
やがて魔王は、傍らに用意していた潤滑剤の容器を引き寄せると、とろりとした粘性の液体を指に絡ませた。
そうして再びち上がりはじめたレイのものを口に含みながら、濡れた指で後孔の周りを優しく揉み解す。

「あっ……! やっ、やめろ!」

その場所に触れられた途端、再び戦慄に襲われ、レイは怯えて身を捩った。

「いやだっ! 魔王、やめろ! うっ、ううっ、くっ……ああっ!」

魔王の舌がぴたりと寄り添いながら、温かい口内でレイをしごく。
唾液と先走りの露が混じりあい、じゅぷじゅぷと淫靡な音が、耳を犯す。
指でしごかれるよりもずっと強い快感を与えられ、レイはひたすら喘ぐ他なかった。

「はぁっ……はぁっ、くっ、ぅんんん……! んああっ! あああ!」

後ろを弄っていた指が、ゆっくりと中に押し入ってくる。
痛みはまるでなく、むしろ気持ちが良かったが、この後予想される展開に、レイは震えおののいた。

「いやだっ……! いやだ! 魔王っ! いやだ! やめてくれっ!」

最後の言葉は不覚にも涙声になった。しかし羞恥心よりも恐怖の度合いの方がずっと大きく、もし泣いて魔王を止められるなら、レイはためらわずそうしただろう。
怯えきったその様子に胸を痛め、魔王はレイのたかぶりをそっと解放すると、優しく語りかけた。

「レイ……あの夜は……本当にすまなかった。今夜は決して、おまえに苦痛を与えないと誓う。だからどうか……力を抜いて、私に体を委ねてくれ。むごいことはしない。絶対に、だ……」

「うっ……う……嘘だ……! 信じないぞっ……もう、あんたの言うことなんか……!」

その言葉に、魔王の顔が歪む。強烈な痛みに耐えているかのような苦しげな表情と、波のように襲い掛かってきた魔王の悲嘆が、レイの胸をズキリと直撃した。途端にレイは自らの発言を後悔し、そして後悔したことに狼狽した。

(何でだよっ……! 俺が……俺が、ひどい目に合わされてるのに……これじゃあ反対に、俺が魔王を苛めてるみたいじゃないか!)

レイの混乱をよそに、魔王は苦しげな表情のまま、震える息を吐き出した。

「そうだな……。私は我を忘れ、おまえにむごい仕打ちをした。あのとき……」

――もしサライヤが助けに来なければ、こうして再び肌を重ねることも叶わず、冷たい骸を抱くことになっていただろう……。

そう思いながら悔恨にくれ、言葉を詰まらせた魔王に、レイはためらいがちに声をかけた。

「俺にひどいことをしたという自覚が、あるなら、……もう、俺を、解放……してくれ……」

後ろにねじ込まれた指が気になって、発声さえ妨げる。
魔王がぼんやりしている間に、レイは逃げ出せないかと身を捩った。その刹那、魔王の指を呑み込んだ箇所から、甘い痺れが全身に駆け抜け、レイはビクリと体を硬直させた。

(何っ……!? 何だ、今の!?)

その反応の意味するところを敏感に察知した魔王は、おもむろに指の動きを再開させた。

「レイ……痛くはないだろう? ……ここはどうだ?」

ゆるく折り曲げられた指が、ある一点を刺激した途端、レイは体を仰け反らせて声を振り絞った。

「はっ……! あっ、くぅっ、ぅああああっ!」

逆らうことのできない快感に、声を抑えることも叶わず、すがる場所を求めてシーツを握り締める。しかし精一杯の力を込めても、術で縛られた体は足掻くことさえ、容易に許してくれない。

「ああああっ! ……やっ、……ぅああっ、いやっ……だぁ!」

快楽ににじみ落ちた涙を隠そうと、レイは片腕を上げて目を覆った。
強烈な快感に支配され、抗うこともできず、ただひたすらむせび泣きながら、レイはそんな自分に狼狽していた。

(どうして……あんな所に指を入れられて……俺は……)

その戸惑いに気付いたように、魔王がレイの猛りを舌でねっとりと弄りながら、囁いた。

「レイ……気持ち良いだろう? ……素直になれ」

レイの反応を確かめながら、魔王は挿入する指を一本から二本に増やす。
そして敏感な粘膜を傷付けないよう気を付けながら、休むことなく抜き差しを繰り返した。

「うあっ! ……はっ、あああっ、んん、ああ!」

何度も継ぎ足された潤滑剤が、ちゅぷちゅぷと卑猥な音を醸し出し、レイの尻から溢れ落ちてシーツを濡らしてゆく。

「いやっ……いやだっ……魔王っ! あっ、ああっ、ん……くぅっ……! ひっ……んああああ!」

「いい声だ……レイ。もっと聞かせてくれ……」

魔王は荒い息で苦しげに眉根を寄せた。

(くっ……! もう限界か……)

魔王の股の間で怒張した猛りは、レイの痴態に煽られ、天を突く勢いで反り返っている。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成) エロなし。騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? いいねありがとうございます!励みになります。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

【完結】虐げられオメガ聖女なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました(異世界恋愛オメガバース)

美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...