虹の月 貝殻の雲

たいよう一花

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Ⅰ 強奪

18. 狂乱の果てに

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「ああっ! ぐっ、がはっ、あああああっっっ!」

レイの仰け反った喉から、悲鳴がほとばしる。
その凄絶な叫び声を聞いても、魔王は動きを止めようとはしなかった。

「レイ……痛いのは……最初だけだ……。約束しよう。次に私に……抱かれるときは……今より痛みもなく……回を重ねるごとに……快感が強くなる……」

魔王は荒い息遣いの合間にそう言うと、凶器のごとき肉棒で、更に激しくレイを責め始めた。

「はっ……あぐっ! いっ……嫌っ…だ! ぐあっ! あっ! ああああああ!」

熱い肉のくさびに体の奥深くを突かれる度、レイは痛みと圧迫感に喉を振り絞って泣き叫んだ。

「ああっっ! あっあっ、ぐああっ!」

肉と肉がぶつかり合う音が響き、雄の放つ体臭が部屋中に充満する中、魔王は夢中でレイを抉り続けた。
激しい動きに寝台が金切り声を上げ、天蓋から垂れ下がった優美なカーテンが、ゆさゆさと踊る。

傍から見ればそれは、性交というよりは、殺戮現場であった。
魔王はまるで、飢えた肉食獣のような様相を呈し、その下に組み敷かれ、股の間から鮮血を滴らせたレイは、屠られ貪り食われる若鹿のように見えた。

「あっ、あぐっ! や……いやだぁ! ひいっ、うあああああっ! 魔王っ……やめろ! いやっ……ぐああああっっっ!」

泣き叫び、否定の言葉を繰り返すレイの姿に、魔王は次第に苛立ち始める。
凶暴な怒りに突き動かされた魔王は、いきなり乱暴に引き抜いた巨根を、間髪かんはつれずに再び最奥に当たるまで、一気に捻じ込んだ。
絹を引き裂くようなレイの悲鳴が、尾を引き部屋中にこだまする。しかしその悲鳴を聞いても、魔王は凶行を止めようとはしなかった。むしろ一層苛立ち、歯を剥いてえたてた。

「私を拒むな、レイ! 生涯おまえをここに幽閉することになろうとも、私はおまえを決して放さぬぞ!」

「嫌だっ! あっあああっ! ぐあっ、ひっ、や……嫌……! あああああああ!」

――もう何も、考えられなかった。

焼け付くような楔を体内深くに打ち込まれ、レイは気が狂ったように絶叫していた。

ぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てながら、抉られ、突き上げられ、今まで誰にも触れられたことのない内側を、男根という凶器で掻き回される。

――ちらりと、レイの脳裏に死の予感が浮かんだ。

その刹那、絶頂を迎えた魔王のほとばしりが、勢いよくレイの体内に注ぎこまれ、魔王のもう一振りの男根――レイの双丘でしごかれていた従根も、主根に連動して達し、大量の精液をレイの背中と尻にぶちまけた。

その放出が止まらぬうちに、突然魔王の唇がレイの首筋にあてがわれた。

ドクン、とレイの血管が脈動する。

その箇所を正確に捉え、魔王は皮膚越しに、レイの血をすすった。

「うっ……?!」

異様な感覚に、レイが呻く。
魔王は強い力で吸い付き、尖った犬歯をやんわりと当てながら、皮膚を破らずに血を吸い出していた。

魔族は幼い頃から、魔族特有の吸血方法を、本能的に身につける。
まだ目も開いていないときに、最初の血を母親からもらい、大人になって誰かと愛し合うようになれば、その相手の血をすする。
それは究極の、愛の表現だった。
性行為の最高潮に互いの血を交換すれば、二人の絆は、より堅固になる。

魔王は夢中でレイの血を貪った。
初めて口にする最愛の者の血は、例えようもなく甘く、舌の上を通過し、喉を通る度、痺れるような快感を魔王に与えた。

(何という甘美な味わい……! 欲しい、もっと欲しい、もっと……!)

魔王の喉が鳴る音に、レイは自分が吸血されていることに気付いたが、そのときにはもう、意識が朦朧としていた。

「はっ……あぁ…………」

どうすることも、できなかった。

我を失った魔王に大量の血を奪われ、レイの命の火は、今この瞬間にも儚く消え去ろうとしていた。
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