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迷走編
38-2話【daily work】渡辺 弘 63歳:ハプニング(藍原編)④
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渡辺さんの呼吸が浅く速くなり、左手がおもむろに動いて美余さんの頭を優しく撫でた。美余さんの右手はいつの間にか果物ナイフを離していて、代わりに渡辺さんの太くそそり立った陰茎を握っている。胸をいじられながら、美余さんはさらに切なげな呻き声を漏らした。
「んっ、んぅ、ふっ、ん……!」
美余さんの頭の動きが激しくなり、渡辺さんが苦し気な声をあげた。
「ああ……、美余、もう駄目だ、く、ああ……っ!!」
美余さんの頭を押さえたまま渡辺さんは絶頂を迎え、美余さんは口を離さずに、放たれた渡辺さんのものを、すべて飲み込んだ。
「あ……っ、はあ……っ、美余……」
うっすらと頬を紅潮させて、渡辺さんが美余さんを見つめる。美余さんは最後の一滴まで舐めとるように舌を動かしながら、顔をあげた。
「あなた……」
両の乳房をブラウスの間からはだけさせたまま、はあはあと肩で息をしている美余さんは、ものすごく色っぽい。西園寺先生が満足そうな顔で、さりげなくベッドの上に放置された果物ナイフを手に取った。
「ふふ。しばらくご無沙汰だったとは思えないほどの熱々ぶりでしたね」
そして倉科さんのほうを見やる。
「どうでした? あなたの不倫相手の本命が誰なのか、わかりました? 続き、見ていきます?」
倉科さんはそれには答えず、真っ赤な顔をして踵を返すと、あたしを押しのけるようにして病室のドアに手をかけた。
「あっ、倉科さん、ブラウス、はだけてますよ!? そのまま出て行ったらまずそうですけど!」
どつかれてこけそうになりながら、とりあえずそれだけ声をかける。倉科さんは眉を吊り上げてあたしを睨むと、震える手でささっとブラウスを直して、そして勢いよく病室を出ていった。入れ替わりに、よぼよぼの警備員が入ってきた。
「えー、ナイフを振り回している女性がいる病室というのは、こちらですかの?」
ああ、今さら来たのね、警備員。それも、あたしよりもさらに弱そうなおじいちゃん……。ハッとして顔を上げた美余さんを制して、西園寺先生が余裕の笑顔でいった。
「ああ、大丈夫です。それ、誤報です」
「誤報?」
「ええ、ナイフはナイフでも、刺されたらキモチよくなっちゃうナイフ。うっかり振り回しちゃった方がいてね、でももう収まりました。出すもの出して、円満解決です。病棟長の私も主治医も立会いのもとですから、個室ですし、問題ないですね?」
警備員は、意味もわからず目をぱちくりさせて、誤報でしたか……と呟きながら出ていった。どうやら、目が悪すぎて、美余さんが胸をもろ出ししていたことにも気づかなかった様子。今回は助かったけど……この病院、警備体制大丈夫かしら……?
「さて。秘書さんも出ていったことですし、あとのことはおふたりで、よくよく話し合われたらよろしいんじゃないかしら? ああ、果物ナイフは一応預かっておきますから、ご入用のときはおっしゃってください。あと、今後、騒ぎを起こすなら、退院してからになさってくださいね。こちらも迷惑ですから」
西園寺先生はそういうと、さっと立ち上がってあたしのほうに来た。
「さ、藍原さん、行くわよ」
「は、はい……」
促されるままに、病室を出る。外には楓ちゃんが心配そうな顔で立っていた。
「先生! どうなったんですか!? 秘書さんがさっき、すごい形相で走り去っていきましたけど」
「えっとね、西園寺先生が、……無事、解決……?」
といっていいものかどうか。西園寺先生は、満足そうに笑っていった。
「あら、最高だったじゃないの。濡れ場に修羅場、両方同時に味わっちゃって、傷害事件にも至らずに、おいしすぎるわ。藍原さんも、あれくらいは収められるようになりなさいね?」
「……まったく自信ありません」
そのとき。
『……あっ、あっ、あなた、ああ、もっと……!』
うしろの個室から、何やらまずい喘ぎ声が聞こえてきた! 楓ちゃんがぎょっとしてる。見ると、病室のスライドドアが微妙に締まりきってなくて、隙間から声が漏れていた。慌てて扉をしっかりと閉める。
「すみません、もうちょっとボリューム下げて、お願いします……」
閉める直前に、一応そっと、お願いしておいた……。
「んっ、んぅ、ふっ、ん……!」
美余さんの頭の動きが激しくなり、渡辺さんが苦し気な声をあげた。
「ああ……、美余、もう駄目だ、く、ああ……っ!!」
美余さんの頭を押さえたまま渡辺さんは絶頂を迎え、美余さんは口を離さずに、放たれた渡辺さんのものを、すべて飲み込んだ。
「あ……っ、はあ……っ、美余……」
うっすらと頬を紅潮させて、渡辺さんが美余さんを見つめる。美余さんは最後の一滴まで舐めとるように舌を動かしながら、顔をあげた。
「あなた……」
両の乳房をブラウスの間からはだけさせたまま、はあはあと肩で息をしている美余さんは、ものすごく色っぽい。西園寺先生が満足そうな顔で、さりげなくベッドの上に放置された果物ナイフを手に取った。
「ふふ。しばらくご無沙汰だったとは思えないほどの熱々ぶりでしたね」
そして倉科さんのほうを見やる。
「どうでした? あなたの不倫相手の本命が誰なのか、わかりました? 続き、見ていきます?」
倉科さんはそれには答えず、真っ赤な顔をして踵を返すと、あたしを押しのけるようにして病室のドアに手をかけた。
「あっ、倉科さん、ブラウス、はだけてますよ!? そのまま出て行ったらまずそうですけど!」
どつかれてこけそうになりながら、とりあえずそれだけ声をかける。倉科さんは眉を吊り上げてあたしを睨むと、震える手でささっとブラウスを直して、そして勢いよく病室を出ていった。入れ替わりに、よぼよぼの警備員が入ってきた。
「えー、ナイフを振り回している女性がいる病室というのは、こちらですかの?」
ああ、今さら来たのね、警備員。それも、あたしよりもさらに弱そうなおじいちゃん……。ハッとして顔を上げた美余さんを制して、西園寺先生が余裕の笑顔でいった。
「ああ、大丈夫です。それ、誤報です」
「誤報?」
「ええ、ナイフはナイフでも、刺されたらキモチよくなっちゃうナイフ。うっかり振り回しちゃった方がいてね、でももう収まりました。出すもの出して、円満解決です。病棟長の私も主治医も立会いのもとですから、個室ですし、問題ないですね?」
警備員は、意味もわからず目をぱちくりさせて、誤報でしたか……と呟きながら出ていった。どうやら、目が悪すぎて、美余さんが胸をもろ出ししていたことにも気づかなかった様子。今回は助かったけど……この病院、警備体制大丈夫かしら……?
「さて。秘書さんも出ていったことですし、あとのことはおふたりで、よくよく話し合われたらよろしいんじゃないかしら? ああ、果物ナイフは一応預かっておきますから、ご入用のときはおっしゃってください。あと、今後、騒ぎを起こすなら、退院してからになさってくださいね。こちらも迷惑ですから」
西園寺先生はそういうと、さっと立ち上がってあたしのほうに来た。
「さ、藍原さん、行くわよ」
「は、はい……」
促されるままに、病室を出る。外には楓ちゃんが心配そうな顔で立っていた。
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「えっとね、西園寺先生が、……無事、解決……?」
といっていいものかどうか。西園寺先生は、満足そうに笑っていった。
「あら、最高だったじゃないの。濡れ場に修羅場、両方同時に味わっちゃって、傷害事件にも至らずに、おいしすぎるわ。藍原さんも、あれくらいは収められるようになりなさいね?」
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うしろの個室から、何やらまずい喘ぎ声が聞こえてきた! 楓ちゃんがぎょっとしてる。見ると、病室のスライドドアが微妙に締まりきってなくて、隙間から声が漏れていた。慌てて扉をしっかりと閉める。
「すみません、もうちょっとボリューム下げて、お願いします……」
閉める直前に、一応そっと、お願いしておいた……。
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