妄想女医・藍原香織の診察室

Piggy

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迷走編

39話【on the way to work】新條 浩平 20歳:やりすぎ注意報(藍原編)①

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 4月の最初の月曜日。いつものように部屋を出ると、珍しく新條くんと鉢合わせした。

「おはよう新條くん、久しぶりに一緒になったわね」

 そういうと、新條くんが照れたように笑った。

「あ、俺、昨日まで春休みだったんで……」

 あ、そうか。新條くんはまだ大学生。春休みとか夏休みとか、そういう素敵な長期休暇があるのよね……う、うらやましい! ……あれ。ということは……。

「新條くん、今日から、3年生?」
「あ、そうっす」

 これまた照れたように頭を掻く。

「3年生って、何するの?」

 医学部は6年制だし、特殊な学部だから、普通の大学生はどんな生活をしているのか全然わからない。

「えっと……ゼミが始まったり、卒論のテーマ考え始めたり……かな……」
「授業は?」
「あるけど、まあ、2年までに取れるだけ単位取っちゃえば、3年はわりと暇かな……」

 へえ。よくわからないけど、意外と遊べるってことかな? 医学部は、単位を取っておくとかそういうのはなくて、学年ごとに必要な授業があって、テストも何回もクリアしていかないと、留年しちゃうからなあ……。あたしの大学でも、毎年10人近く留年してたなあ……。

 久しぶりに、駅まで新條くんと肩を並べて歩く。満員電車が来て、いつものようにぎゅうぎゅうに詰め込まれる。今日も、あたしが窓際で新條くんがその手前。いろいろ試行錯誤したけど、今日は、向かい合って乗る。そうすると、新條くんの顔が見られるし、おしゃべりもできる。……以前は、変に痴漢したりさせたりしないように苦労してたけど、今は……。もう、そんなことは気にしない。痴漢だって妄想だって、したい放題させたい放題!

 お互いの体温を感じるくらい、ぴったりと体をくっつけて立っていると、案の定、新條くんの顔がだんだん赤くなってきた。それと一緒に、あたしのお腹あたりになにやら硬いものが当たる。……新條くん。あたしと一緒に電車に乗って、勃起しなかったこと、ないわよね……? うれしいやら、驚くやら。新條くん、最初のころは勃起するたびにあたしにスミマセンスミマセンって謝ってたけど。……もう、謝るのはやめたみたい。恥ずかしそうに、開き直ってる……?

 そこで、いたずら心がムクムクと頭をもたげる。いつもは、あたしのほうが、新條くんの妄想やら生身の手やらにやられっぱなしでドキドキしちゃう。だから、今日は……。
 あたしはそっと手を動かすと、ジーパンの上から、新條くんのちょっとだけ大きくなったモノを、ゆっくりさすった。新條くんが、びっくりしたような顔であたしを見る。うふふ、可愛い。

「……っ」

 新條くんの呼吸がちょっとだけ乱れて、もぞもぞと体を動かし始めた。あたしはジーパンのチャックを下ろして、そっと中に手を入れる。トランクス越しに触る新條くんは、とってもあったかくて、硬い棒状のものに手のひらを添わせて上へ向かうと、先っぽは濡れて冷たくなっていた。しばらくトランクスの上から手を上下させる。

「……っ、はぁ……はぁ……」

 新條くんの息が熱く速くなる。手の中のモノはときどきピクピクと動いて、どんどん硬度を増していった。
 ……どうしよう。ちょっといたずらしてやるだけのつもりだったんだけど……。トランクス越しじゃ、物足りなくなってきちゃった……。キモチよさそうな新條くんを見てると、あたしも何だかもじもじしてきちゃって、もっともっと新條くんをキモチよくさせたくなって……。まずいわ、ミイラ取りがミイラになりそう……。
 理性と欲望の間で葛藤しているあたしのお尻に、突然新條くんが両手を這わせてきた。

「あ……っ」

 うっかり小さな声が漏れる。

「はぁ……先生……」

 新條くんが、熱っぽい目であたしを見つめてる。新條くんの体温が上がった両手は、下着の下から入り込んで、両方のお尻をやわやわと揉み込む。ああ、ダメ……一気に、あたしの体の中心が、その気になっちゃう。
 我慢できなくて、あたしは右手を、トランクスの割れ目から忍び込ませた。熱い新條くんのモノに直に触れた途端、新條くんがビクンと跳ねた。

「あっ……先生……ッ」

 新條くんの先っぽに手を這わせると、もうヌルヌルの粘液がたくさん溢れていて、それを手のひらに乗せてもう一度根元までしごくと、さっきより格段に滑りがよくなった。同時に、新條くんがビクビクと体を震わせる。

「あっ、先生っ……はぁ……っ」

 熱い吐息が耳にかかる。新條くんが、感じてくれてる。あたしも興奮が抑えられなくて、ちょっとだけしごく右手のスピードをあげると、新條くんが小さな悲鳴を上げた。

「あっ……せ、先生、ダメ……っ」

 お尻を揉んでいた左手を引き抜き、すぐさまあたしの手首を押さえる。眉を寄せて、すごく辛そうな顔をした新條くん。……もしかして、イキそうになった……?

 苦しそうな新條くんを見て、あたしはもうムラムラが止まらなくなって。
 キスしたい。
 突然そう思った。今すぐ、新條くんにキスして抱きついて、体を密着させたい。でもさすがに、電車の中でキスはできない。ああでもどうしよう、ムラムラもウズウズもどんどんひどくなる。ほんのいたずら心で新條くんをいじったばっかりに、自分のほうがやられるなんて、ぬかったわ。でも……唇へのキスは無理でも……。

 あたしはちょっとだけ背伸びをした。新條くんは、股間を隠すためにちょっとだけ猫背になっていて、背伸びをしたあたしの顔がぎりぎり新條くんの首元に届いた。肩口に顔をうずめ、ちょっとだけ、ペロリと新條くんの首筋を舐める。

「あ……っ、ダメっ、先生……!」

 切羽詰まった新條くんの声がして、あたしはもうそれでスイッチが完全に押されて、しゃぶりつくように新條くんの首を――

『M病院前~、M病院前~』

 突然のアナウンスにびっくりして、あたしは右手を引き抜いた。同時に新條くんの手もあたしのお尻から離れる。

「あっ、じゃあっ、あたし行くからっっ! 新学期、頑張ってねっ!」

 上ずった声でそういうと、あたしはそそくさと新條くんに背を向けて押されるように満員電車から出た。
 ……ああ、今日もやっちゃったわ。ドキドキが止まらない。なんだか、どんどんエスカレートしてる。まずいわね、こんなこと続けてたら、いつかほかの人にバレて駅員さんに突き出されるか、知り合いの病院の職員に見られるか、電車内でうっかり新條くんが暴発しちゃうか……。ああ、どれになってもヤバいやつばかりだわ! もう、朝っぱらかこんなこと、やっちゃダメ――

「先生!!」

 突然後ろから手首を掴まれて、心臓が止まるほど驚く。も、もう誰かに見つかった!?

 振り返ると、そこにいたのは、新條くんだった。

「え……え? 新條くん、あなた次の駅でしょ? なんで降りて――」

 新條くんは真っ赤な顔で、あたしを遮った。

「……先生、俺、我慢できない」
「え」

 新條くんはハアハアいいながら真っ赤な顔であたしの手をぐいと引っ張った。

「え、ちょ、ちょっと待って、新條くん! ど、どこに行くの……っ」
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