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迷走編
7話【daily work】看護師 佐々木 楓 24歳:ダブルデート(楓編)
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「藍原先生! 待ってましたよ~、もう、先生がいないといろいろ大変で」
1週間ぶりに病棟に現れた藍原先生は、いつも通り元気そうだった。
「ごめんなさいね、でも西園寺先生が東海林くんをしっかりフォローしてくれてたみたいで」
両手を顔の前に合わせて、先生が申し訳なさそうにいう。
「ええ、東海林先生、西園寺先生にめちゃくちゃしごかれてましたよ。藍原先生がいかに普段優しいか、思い知ったんじゃないですかね?」
西園寺先生、前からSぽいとは思ってたけど。東海林先生相手に、見事なドSっぷりを発揮してたわ。
「あ、そうそう、楓ちゃんに相談があるんだけど」
藍原先生が意味深に目くばせする。あたしは先生について備品室に入った。
「あのね、お願いがあって……。こないだ合コンで会った小山内くんにデートに誘われたんだけど、大橋くんと楓ちゃんも、一緒に行ってくれない?」
「ええ!? 小山内って、あの、先生にめちゃべったりだった、あの人ですか?」
もう合コンの最初っから藍原先生狙いで、ずっと引っ付いてて、王様ゲームで一気飲みして酔っぱらった藍原先生を介抱するふりして、そのまま外に連れ出そうとしてた人よね。確か、大橋くんが、来られなくなった新條くんの代わりに急遽声をかけた先輩だっていってた。あの人、まだ藍原先生にいい寄ってるんだ?
「え、先生……小山内くんと、デートしたいんですか?」
「えっと、その……し、してもいいとは思うんだけど、その、二人きりはちょっと……」
先生、しどろもどろになってる。そうなんだ、先生、まんざらでもなかったんだ? あたし、あの人あからさまにお持ち帰り狙ってる感じがして嫌だったから、そうなる前に大橋くんと一緒に藍原先生を連れて帰ってきちゃったけど……ひょっとして、余計なお世話だったのかな? 何か、ちょっと意外だけど。藍原先生、合コンの間も、グイグイ来る小山内くんと何だか話しづらそうにしてたし。
「でね、大橋くんと楓ちゃんが一緒なら、心強いなと思って……。ね、楓ちゃんも、大橋くんと仲いいんでしょ? もしかして、付き合ってる?」
「え、付き合ってるわけないじゃないですか」
「でも、連絡とり合ったりしてるんでしょ? 今回だって、まさか大橋くんと楓ちゃんが幹事だなんて」
「まあ、たまーに、連絡が来るくらいですよ。あいつ、病棟まで押しかけてきてあたしの連絡先よこせっていうから、つい……」
う、ちょっと恥ずかしくて少しだけ嘘ついちゃった。藍原先生みたいに純粋な人には、とてもいえないわ……好きでもないのにセックスだけは何となくしてる、なんて……。あの合コンのあとも、何かノリでついホテルに行っちゃって……ううっ、恥ずかしい。絶対いえない、こんなこと! ……ああ、でも、大橋くん口軽そうだから、新條くんに話したりして、それが藍原先生の耳に入ったりしてるのかな……? やだなあ。あたしのあんなとことかこんなとことか、新條くんに話してるのかな……。まあ、今更か。生でやってるとこ、見られちゃってるし。
「ねえ、大橋くんて、まだ楓ちゃんのこと好きなんでしょ? 楓ちゃんはどうなの? 嫌いだったら幹事なんてしないわよね」
「えっと、あいつがあたしをどう思ってるのかは知りませんけど……。まあ誘っては来ますけど、相変わらずノリは軽いし、どこまで本気なのか……。悪い奴じゃないんで、合コンのセッティングは引き受けましたけど……」
うーん、我ながら歯切れが悪いわ。
「じゃあ、小山内くんと四人で遊びに行く件、引き受けてくれる? 二人きりだと絶対間が持てない気がするの」
「……いいですよ。あいつの都合、聞いときますね」
「ありがとう、楓ちゃん!」
藍原先生はぱっと顔を輝かせてルンルンでナースステーションに戻っていった。……そんなに、小山内くんのこと、気に入ったんだ? でも……大丈夫かなあ?
昼休憩のとき、大橋くんにメールしてみた。
――小山内くんが、藍原先生をデートに誘った件、知ってる?
――今日先輩から頼まれた。ダブルデートしてくれって。
――あの人、大丈夫なの? せっかくあたしたちでブロックしたのにさ、藍原先生、意外とデートに乗り気っぽい。
――噂では、結構手が早いって聞くけど。合コンでは新條が来れなくなったから急遽誘ったけど、そうじゃなければ誘わなかった。だってさ、楓さんに手出されたら困るじゃん!?
――藍原先生、二人きりだと緊張するから四人で行きたいって。
――俺は楓さんに会えるなら何でもオッケーイ♡
――じゃああとでこっちの予定送るから、セッティングして。
――了解! また楓さんに会えるの、楽しみだな~♡
……やっぱり、手が早いんじゃん。あたしは好きじゃないけど、まあ、藍原先生が気に入ってるんなら、あたしがとやかくいうことでもないよね……?
1週間ぶりに病棟に現れた藍原先生は、いつも通り元気そうだった。
「ごめんなさいね、でも西園寺先生が東海林くんをしっかりフォローしてくれてたみたいで」
両手を顔の前に合わせて、先生が申し訳なさそうにいう。
「ええ、東海林先生、西園寺先生にめちゃくちゃしごかれてましたよ。藍原先生がいかに普段優しいか、思い知ったんじゃないですかね?」
西園寺先生、前からSぽいとは思ってたけど。東海林先生相手に、見事なドSっぷりを発揮してたわ。
「あ、そうそう、楓ちゃんに相談があるんだけど」
藍原先生が意味深に目くばせする。あたしは先生について備品室に入った。
「あのね、お願いがあって……。こないだ合コンで会った小山内くんにデートに誘われたんだけど、大橋くんと楓ちゃんも、一緒に行ってくれない?」
「ええ!? 小山内って、あの、先生にめちゃべったりだった、あの人ですか?」
もう合コンの最初っから藍原先生狙いで、ずっと引っ付いてて、王様ゲームで一気飲みして酔っぱらった藍原先生を介抱するふりして、そのまま外に連れ出そうとしてた人よね。確か、大橋くんが、来られなくなった新條くんの代わりに急遽声をかけた先輩だっていってた。あの人、まだ藍原先生にいい寄ってるんだ?
「え、先生……小山内くんと、デートしたいんですか?」
「えっと、その……し、してもいいとは思うんだけど、その、二人きりはちょっと……」
先生、しどろもどろになってる。そうなんだ、先生、まんざらでもなかったんだ? あたし、あの人あからさまにお持ち帰り狙ってる感じがして嫌だったから、そうなる前に大橋くんと一緒に藍原先生を連れて帰ってきちゃったけど……ひょっとして、余計なお世話だったのかな? 何か、ちょっと意外だけど。藍原先生、合コンの間も、グイグイ来る小山内くんと何だか話しづらそうにしてたし。
「でね、大橋くんと楓ちゃんが一緒なら、心強いなと思って……。ね、楓ちゃんも、大橋くんと仲いいんでしょ? もしかして、付き合ってる?」
「え、付き合ってるわけないじゃないですか」
「でも、連絡とり合ったりしてるんでしょ? 今回だって、まさか大橋くんと楓ちゃんが幹事だなんて」
「まあ、たまーに、連絡が来るくらいですよ。あいつ、病棟まで押しかけてきてあたしの連絡先よこせっていうから、つい……」
う、ちょっと恥ずかしくて少しだけ嘘ついちゃった。藍原先生みたいに純粋な人には、とてもいえないわ……好きでもないのにセックスだけは何となくしてる、なんて……。あの合コンのあとも、何かノリでついホテルに行っちゃって……ううっ、恥ずかしい。絶対いえない、こんなこと! ……ああ、でも、大橋くん口軽そうだから、新條くんに話したりして、それが藍原先生の耳に入ったりしてるのかな……? やだなあ。あたしのあんなとことかこんなとことか、新條くんに話してるのかな……。まあ、今更か。生でやってるとこ、見られちゃってるし。
「ねえ、大橋くんて、まだ楓ちゃんのこと好きなんでしょ? 楓ちゃんはどうなの? 嫌いだったら幹事なんてしないわよね」
「えっと、あいつがあたしをどう思ってるのかは知りませんけど……。まあ誘っては来ますけど、相変わらずノリは軽いし、どこまで本気なのか……。悪い奴じゃないんで、合コンのセッティングは引き受けましたけど……」
うーん、我ながら歯切れが悪いわ。
「じゃあ、小山内くんと四人で遊びに行く件、引き受けてくれる? 二人きりだと絶対間が持てない気がするの」
「……いいですよ。あいつの都合、聞いときますね」
「ありがとう、楓ちゃん!」
藍原先生はぱっと顔を輝かせてルンルンでナースステーションに戻っていった。……そんなに、小山内くんのこと、気に入ったんだ? でも……大丈夫かなあ?
昼休憩のとき、大橋くんにメールしてみた。
――小山内くんが、藍原先生をデートに誘った件、知ってる?
――今日先輩から頼まれた。ダブルデートしてくれって。
――あの人、大丈夫なの? せっかくあたしたちでブロックしたのにさ、藍原先生、意外とデートに乗り気っぽい。
――噂では、結構手が早いって聞くけど。合コンでは新條が来れなくなったから急遽誘ったけど、そうじゃなければ誘わなかった。だってさ、楓さんに手出されたら困るじゃん!?
――藍原先生、二人きりだと緊張するから四人で行きたいって。
――俺は楓さんに会えるなら何でもオッケーイ♡
――じゃああとでこっちの予定送るから、セッティングして。
――了解! また楓さんに会えるの、楽しみだな~♡
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