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迷走編
3話【on the way to work】病棟長 西園寺 すみれ 42歳:「痴漢プレイ?」(藍原編)
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どうしよう、もう、ドキドキが止まらない。電車の中で、新條くんにあんなことされて、もう、妄想が現実になっちゃって。……夢にまで見た、痴漢プレイ。それが、見ず知らずのおじさんのリアル痴漢じゃなくて、新條くんだなんて……もう、体が喜ばないはずがないじゃない! ああ、あと一駅あれば、もっとちゃんとイケたのに……! ううん、でも最後のほうなんて声もろくに我慢できなくて、危なかったわ。もっと我慢できるようにならないと、電車の中でイクなんて、危険すぎるわね……。でも……あの、周りにバレるかもしれないスリルと、我慢しなきゃいけない恥ずかしさが、痴漢プレイの醍醐味なのよね……! そうはいっても、通勤電車の中なんて、知り合いが乗ってるかもしれないんだから、やっぱり危なすぎるわよね。やりすぎないよう、気をつけなきゃ……。
ああ、そんなこと考えてるうちに、もう病院だわ。静まれ、あたしの心臓! 収まれ、体の火照り! 今から、仕事なのよっ!
「おはようございまーす」
平静を装って医局に入る。西園寺先生が振り返った。
「あら、どうしたの? まるで通勤電車で痴漢されてうっかり感じちゃいました、みたいな顔してるけど」
「えええっ!? ど、どうして……っ」
な、なんでこの人はっ、ピンポイントに言い当ててくるのかしら!?
「あらあら、図星? 嫌ねえ、知らないハゲオヤジに触られて感じちゃうなんて、エロい体」
「し、知らないハゲオヤジなんかじゃ……っ」
「あらまあ、じゃあ何? 知ってる人と、朝っぱらから痴漢プレイ? 嫌ねえ、ますますエロいこと。相手は誰かしら? まさか岡林?」
「ど、どうしてそこで岡林くんが出てくるんですかっ」
「あら、違うみたい。じゃあ誰かしら、私の知らない人? 彼氏?」
「……朝っぱらから、もういいじゃないですかっ」
「ふうん、そのあたりね……」
西園寺先生がニヤニヤして近づいてくる。うう、苦手だな、この、何でも見透かしてるみたいな目。
「……あなた、彼氏、いなかったわよね?」
「そ、そんなこといいましたっけ?」
うう、目が泳いじゃう。そこは、あまり突っ込まないでほしい。新條くんが彼氏かといわれると……正直、自分でもよくわからないから。もう、このエロい体のせいで、自分が新條くんを好きなのかもよくわからないし、どういう関係なのかもよくわからない。ただのお隣さんでもないし、ただの患者さんでもなくなった。それはわかるけど……その先に、踏み込んでもいいのか……。いや、もう踏み込んでるようなもんなんだけど……。昨夜は新條くんの気持ちがうれしくて、流されるように公園であんなことしちゃったけど……。今朝だって、本当は理性がやめろって叫んでた。なのに、つい……夢にまで見た妄想が現実になるかもって思うと……自分の性欲に、逆らえなくて……うう、あたしってばどんだけエロいの。新條くんだって、今ごろはドン引きしてるかもしれない。
「うふふ。朝っぱらからそんなフェロモン巻き散らかされると、私、誘われてるのかと思っちゃう」
西園寺先生が肩を組んできて、あたしの耳元で囁いた。
「ッ……ち、違いますっ、そんなわけないじゃないですか」
やだ、また体の火照りがぶりかえしちゃう。
「あら、そうなの? でもあなた……まだ、イケてないんでしょ? そんな中途半端な状態じゃあ仕事に差し支えるわね。私が、イカせてあげる……」
西園寺先生が、耳の後ろをペロリと舐めた。
「ひゃあっ」
ま、待って、さすがに朝の医局でいきなりそれはないですよね!? じょ、冗談ですよね……。
「ん? 何? ここじゃ気が散っちゃう? じゃ、女子トイレにでも行きますか……」
さりげなくスカートの下に入ろうとする西園寺先生の手を何とか追いやって、あたしはささっとロッカーへ逃げた。危ない、危なすぎるわ、西園寺先生……!
「うふふ、さすがの藍原さんも、朝は意外と冷静ね。残念だわ」
そういう西園寺先生も、しつこく追いかけるでもなく、すぐ自分のデスクへと戻っていく。……やっぱり、からかわれただけだったのね。
西園寺先生こそ、なんだかんだいっていつも冷静沈着。エロいことをしているときですら、すべてを掌握して計画通りに運ぶような……。
つい、指導医セミナーの温泉でのことを思い出してしまう。西園寺先生は、油断したあたしを、いとも簡単に翻弄して、……イカせてしまった。同じ女性同士なのに、そんなの気にならないくらい、キモチよくて……。それとも、女同士だから、よかったのかな。それもわからない。あたしは西園寺先生みたいなバイセクシャルじゃない。それは確かだけど。
仕事中の西園寺先生は、やっぱりすごく頼もしくて、尊敬もしてる。だからなのかな? セミナーであんなことされても、先生のことは信頼してるし、何だろう……この、不思議な安心感は、変わらない。先生はいつも自由気ままで、快楽のためにセックスをしてるといってはばからない。……ひょっとしたらあたしは、そんな西園寺先生が、うらやましいのかもしれない。あたしがしたくてもできないことを堂々とやってのける、西園寺先生が……。
ああ、そんなこと考えてるうちに、もう病院だわ。静まれ、あたしの心臓! 収まれ、体の火照り! 今から、仕事なのよっ!
「おはようございまーす」
平静を装って医局に入る。西園寺先生が振り返った。
「あら、どうしたの? まるで通勤電車で痴漢されてうっかり感じちゃいました、みたいな顔してるけど」
「えええっ!? ど、どうして……っ」
な、なんでこの人はっ、ピンポイントに言い当ててくるのかしら!?
「あらあら、図星? 嫌ねえ、知らないハゲオヤジに触られて感じちゃうなんて、エロい体」
「し、知らないハゲオヤジなんかじゃ……っ」
「あらまあ、じゃあ何? 知ってる人と、朝っぱらから痴漢プレイ? 嫌ねえ、ますますエロいこと。相手は誰かしら? まさか岡林?」
「ど、どうしてそこで岡林くんが出てくるんですかっ」
「あら、違うみたい。じゃあ誰かしら、私の知らない人? 彼氏?」
「……朝っぱらから、もういいじゃないですかっ」
「ふうん、そのあたりね……」
西園寺先生がニヤニヤして近づいてくる。うう、苦手だな、この、何でも見透かしてるみたいな目。
「……あなた、彼氏、いなかったわよね?」
「そ、そんなこといいましたっけ?」
うう、目が泳いじゃう。そこは、あまり突っ込まないでほしい。新條くんが彼氏かといわれると……正直、自分でもよくわからないから。もう、このエロい体のせいで、自分が新條くんを好きなのかもよくわからないし、どういう関係なのかもよくわからない。ただのお隣さんでもないし、ただの患者さんでもなくなった。それはわかるけど……その先に、踏み込んでもいいのか……。いや、もう踏み込んでるようなもんなんだけど……。昨夜は新條くんの気持ちがうれしくて、流されるように公園であんなことしちゃったけど……。今朝だって、本当は理性がやめろって叫んでた。なのに、つい……夢にまで見た妄想が現実になるかもって思うと……自分の性欲に、逆らえなくて……うう、あたしってばどんだけエロいの。新條くんだって、今ごろはドン引きしてるかもしれない。
「うふふ。朝っぱらからそんなフェロモン巻き散らかされると、私、誘われてるのかと思っちゃう」
西園寺先生が肩を組んできて、あたしの耳元で囁いた。
「ッ……ち、違いますっ、そんなわけないじゃないですか」
やだ、また体の火照りがぶりかえしちゃう。
「あら、そうなの? でもあなた……まだ、イケてないんでしょ? そんな中途半端な状態じゃあ仕事に差し支えるわね。私が、イカせてあげる……」
西園寺先生が、耳の後ろをペロリと舐めた。
「ひゃあっ」
ま、待って、さすがに朝の医局でいきなりそれはないですよね!? じょ、冗談ですよね……。
「ん? 何? ここじゃ気が散っちゃう? じゃ、女子トイレにでも行きますか……」
さりげなくスカートの下に入ろうとする西園寺先生の手を何とか追いやって、あたしはささっとロッカーへ逃げた。危ない、危なすぎるわ、西園寺先生……!
「うふふ、さすがの藍原さんも、朝は意外と冷静ね。残念だわ」
そういう西園寺先生も、しつこく追いかけるでもなく、すぐ自分のデスクへと戻っていく。……やっぱり、からかわれただけだったのね。
西園寺先生こそ、なんだかんだいっていつも冷静沈着。エロいことをしているときですら、すべてを掌握して計画通りに運ぶような……。
つい、指導医セミナーの温泉でのことを思い出してしまう。西園寺先生は、油断したあたしを、いとも簡単に翻弄して、……イカせてしまった。同じ女性同士なのに、そんなの気にならないくらい、キモチよくて……。それとも、女同士だから、よかったのかな。それもわからない。あたしは西園寺先生みたいなバイセクシャルじゃない。それは確かだけど。
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