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恋愛編
33話【off duty】佐々木 楓:「幹事やらない?」(楓編)
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日勤が終わって家に帰る途中で、携帯が鳴った。知らない番号からだ。090で始まってる。誰だろ?
「……もしもし?」
悩んだ末に、出てみる。
『あっ、楓さん?』
「……誰ですか」
『ええっ!? 俺だよ、大橋。大橋潤也』
「……なんであたしの番号知ってんのよ」
『え、だって、こないだ楓さんから俺にかけてくれたじゃん。てか、楓さんこそ、どうして俺の番号見て俺だってわからないの』
「は? あんたの番号なんて、登録してないし」
『じゃあ登録しといてよ』
「……そうね、登録しないと、着信拒否に設定できないもんね」
『……楓さん、今、もしかして、機嫌悪い?』
「普通だったけど、あんたの電話で機嫌悪くなった」
『うひゃ、どうしてだよ。俺まだ何にも怒らせるようなこといってないよ』
「じゃあこれ以上イライラする前に切るわ。バイバイ」
『ああっ、ちょっと待ってよ! まだ大事なこと話してないよ!』
「……大事なこと?」
『うん。……あのさ、楓さん。実は、お願いがあって。俺の友達が、ナースと合コンしたいっていってるんだよね。それで、楓さん、俺と一緒に、幹事やらない?』
「は?」
何を寝ぼけてるんだ、こいつは。相変わらずイラっと来る。
『あっ、ほらっ、俺は楓さん一筋だけどさっ、ナースの知り合いいるって話したら、すげぇ頼まれちゃってさぁ、断れないんだよね』
「それ、あたしに関係ないでしょ。あたしのこと知り合いとかって紹介してんじゃないわよ」
『ご、ごめん、つい、さ……。でも、ほら、楓さんだって、大人数でぱあっと飲んだら、また気が晴れるかな、と思ったり、さ……』
「……」
ついこないだの、東海林先生歓迎飲み会のあとのことが蘇る。あのときはひどく酔っぱらってたけど……でも、藍原先生のお隣さんの部屋に押し掛けたときよりかは、はっきり覚えてる。大橋くんを呼びだしたことも、泣きながら愚痴ったことも、そのあとのことも……。あんなことまでしたのに、電話かけてくるな、なんていってるあたしは、ひどい女なのかもしれない。
「……何人?」
『えっ、引き受けてくれるの!?』
「自分で頼んでおいて驚いてんじゃないわよ」
『ああっ、ごめんっ、えっとね、全部で4人! ナースがいなかったら、白衣系なら何でもいいって。女医さんとか、薬剤師さんとか、技師さんとか。あ、医療事務はナシね。あれ、白衣じゃないもんね?』
「……あんたの友達は白衣フェチか」
『知らないよ、そんなの』
「ちゃんとした友達なんでしょうね?」
『うん、みんな俺の直接の知り合いだから、大丈夫』
「ああ、それはまずいわね」
『楓さーん、そんなこといわないでよ~』
「じゃあね」
『あっ、じゃあ頼むね! 来週の土曜ね!』
「切るわよ」
『ああっ、待って、楓さんっ!』
「今度は何よ!?」
『俺、合コン主催はするけど、楓さん一筋だからね! 楓さんに会えるから、引き受けたようなもんだからねっ』
……ブチッ。
もう、返事する気にもならず、電話を切ってやった。
大橋くんの友達、か。みんな大橋くんみたいに、軽くてチャラい奴ばっかりなのかな。ちょっとビミョーな気もするけど……みんな、大学生ってことよね。……年下か。あたしはともかく、声をかけたら喜ぶナース、結構いるかも。……たまにはあたしも、まずい酒じゃなくて、何も考えずに楽しく飲んでみてもいいかもしれない。
「……もしもし?」
悩んだ末に、出てみる。
『あっ、楓さん?』
「……誰ですか」
『ええっ!? 俺だよ、大橋。大橋潤也』
「……なんであたしの番号知ってんのよ」
『え、だって、こないだ楓さんから俺にかけてくれたじゃん。てか、楓さんこそ、どうして俺の番号見て俺だってわからないの』
「は? あんたの番号なんて、登録してないし」
『じゃあ登録しといてよ』
「……そうね、登録しないと、着信拒否に設定できないもんね」
『……楓さん、今、もしかして、機嫌悪い?』
「普通だったけど、あんたの電話で機嫌悪くなった」
『うひゃ、どうしてだよ。俺まだ何にも怒らせるようなこといってないよ』
「じゃあこれ以上イライラする前に切るわ。バイバイ」
『ああっ、ちょっと待ってよ! まだ大事なこと話してないよ!』
「……大事なこと?」
『うん。……あのさ、楓さん。実は、お願いがあって。俺の友達が、ナースと合コンしたいっていってるんだよね。それで、楓さん、俺と一緒に、幹事やらない?』
「は?」
何を寝ぼけてるんだ、こいつは。相変わらずイラっと来る。
『あっ、ほらっ、俺は楓さん一筋だけどさっ、ナースの知り合いいるって話したら、すげぇ頼まれちゃってさぁ、断れないんだよね』
「それ、あたしに関係ないでしょ。あたしのこと知り合いとかって紹介してんじゃないわよ」
『ご、ごめん、つい、さ……。でも、ほら、楓さんだって、大人数でぱあっと飲んだら、また気が晴れるかな、と思ったり、さ……』
「……」
ついこないだの、東海林先生歓迎飲み会のあとのことが蘇る。あのときはひどく酔っぱらってたけど……でも、藍原先生のお隣さんの部屋に押し掛けたときよりかは、はっきり覚えてる。大橋くんを呼びだしたことも、泣きながら愚痴ったことも、そのあとのことも……。あんなことまでしたのに、電話かけてくるな、なんていってるあたしは、ひどい女なのかもしれない。
「……何人?」
『えっ、引き受けてくれるの!?』
「自分で頼んでおいて驚いてんじゃないわよ」
『ああっ、ごめんっ、えっとね、全部で4人! ナースがいなかったら、白衣系なら何でもいいって。女医さんとか、薬剤師さんとか、技師さんとか。あ、医療事務はナシね。あれ、白衣じゃないもんね?』
「……あんたの友達は白衣フェチか」
『知らないよ、そんなの』
「ちゃんとした友達なんでしょうね?」
『うん、みんな俺の直接の知り合いだから、大丈夫』
「ああ、それはまずいわね」
『楓さーん、そんなこといわないでよ~』
「じゃあね」
『あっ、じゃあ頼むね! 来週の土曜ね!』
「切るわよ」
『ああっ、待って、楓さんっ!』
「今度は何よ!?」
『俺、合コン主催はするけど、楓さん一筋だからね! 楓さんに会えるから、引き受けたようなもんだからねっ』
……ブチッ。
もう、返事する気にもならず、電話を切ってやった。
大橋くんの友達、か。みんな大橋くんみたいに、軽くてチャラい奴ばっかりなのかな。ちょっとビミョーな気もするけど……みんな、大学生ってことよね。……年下か。あたしはともかく、声をかけたら喜ぶナース、結構いるかも。……たまにはあたしも、まずい酒じゃなくて、何も考えずに楽しく飲んでみてもいいかもしれない。
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