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向日葵の中で
目覚め2
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着替えが終わって紫音とジャネットは外に出た。
「夕食のお手伝いは、やっぱりいいわ。ゆっくりしていて」
そう言いながらジャネットは主屋の方に歩いていった。
マイクは着替えた紫音を見て、とてもよく似合ってるよと言った。
紫音は、ありがとうと礼を言い、初めて見るこの世界を眺めた。
そこには、今まさに落ちようとする夕陽に照らされた眺めが広がっていた。
左右に遠く山を望んだ平野には田園が広がり、麦の穂が黄金色に輝いていた。
紫音はその美しさに暫く見とれた。
「あの山の中で君は倒れていたんだよ。」
マイクが家の後ろのすぐそばまで迫っている山を指差しながら言った。
「あの山の向こうは隣の国でね。ここはこの国の端っこなのさ。今この国はゴタゴタが続いてるけど、ここはのんびりしたもんだよ。」
「ゴタゴタって?」
紫音は聞いた。
「うん。一年ほど内乱が続いてる。この国の王はろくに考えもしないで、やたら税金ばかりを重くしてきたんだ。国民は疲れきってる。それを正そうと、革命軍が蜂起して戦っている最中なんだよ。」
紫音は、その内乱に関わることになるのだろうかと思った。
しかし正直な所、余り気が進まなかった。
長い間、時代を越えて旅をして来た紫音は、精神的に疲れているのかもしれなかった。
自分はいったい何者なのか?
特別な能力を持ち、若いままでさ迷う人生には、どんな意味があるのだろうか?
死ぬ時は来るのか?
そういう思いが、あの悪夢を見させたのかもしれなかった。
陽はもう暮れかかり、薄闇が辺りを覆っていた。
その時、ご飯が出来たわよー、と母屋の方からジャネットの声がした。
「それじゃ行こうか。」
マイクは先に母屋の方へ歩き出し、紫音もそれに続いた。
母屋に入って右の方へ行くと食堂があった。
そこは十畳ほどの広さで、奥の暖炉の前のソファーには、カレンお婆が座っていた。
その手前には、六脚の椅子とテーブルがあり、テーブルの上には、それぞれ四人分の食器と料理が、所狭しと並べられていた。
「ほぉ、ご馳走だな。」
料理を見ながらマイクが言った。
「えぇ、今日は町に行く日だったから、お肉も買ってきたのよ。」
ジャネットはそう言いながらスープを配り終え
「さぁ、頂きましょう。」
と言って椅子に座った。
ソファからカレンお婆が立ち上がり、テーブルの奥に腰かけ、右側にジャネットとマイクが並んで座り、向かいの席に紫音が座った。
カレンお婆が食事の祈りの言葉を唱え、皆もそれにならい、食事が始まった。
ジャネットは、スープを飲んでいるカレンお婆の皿に肉の塊を切り分けてから各々の皿に取り分け
「後は自分で勝手に取ってね。」
と言った。
スープを飲み終え、肉を口に入れたカレンお婆様が
「こりゃ、うまいわい。」
と言うと
「でしょ?良いお肉なのよ。私がどうしようか迷っていたら、ジャンが安くしとくから、って言ったのよ。」
「ジャンって、あの肉屋の息子かい?」
ジャネットの言葉を受けて、マイクが尋ねた。
そうよ、と言うジャネットにマイクは
「ふ~ん」
と言いながら、ニヤニヤしてジャネットを見た。
「何よ、お兄様ったら。私、別に色目なんか使ってないわよ。」
「だけど、ジャンはお前の事を好きなんだろう?」
「そうみたいだけど、あの人、どこか気の弱いところがあるのよね。私はもっと頼り甲斐のある人がいいわ。」
「夕食のお手伝いは、やっぱりいいわ。ゆっくりしていて」
そう言いながらジャネットは主屋の方に歩いていった。
マイクは着替えた紫音を見て、とてもよく似合ってるよと言った。
紫音は、ありがとうと礼を言い、初めて見るこの世界を眺めた。
そこには、今まさに落ちようとする夕陽に照らされた眺めが広がっていた。
左右に遠く山を望んだ平野には田園が広がり、麦の穂が黄金色に輝いていた。
紫音はその美しさに暫く見とれた。
「あの山の中で君は倒れていたんだよ。」
マイクが家の後ろのすぐそばまで迫っている山を指差しながら言った。
「あの山の向こうは隣の国でね。ここはこの国の端っこなのさ。今この国はゴタゴタが続いてるけど、ここはのんびりしたもんだよ。」
「ゴタゴタって?」
紫音は聞いた。
「うん。一年ほど内乱が続いてる。この国の王はろくに考えもしないで、やたら税金ばかりを重くしてきたんだ。国民は疲れきってる。それを正そうと、革命軍が蜂起して戦っている最中なんだよ。」
紫音は、その内乱に関わることになるのだろうかと思った。
しかし正直な所、余り気が進まなかった。
長い間、時代を越えて旅をして来た紫音は、精神的に疲れているのかもしれなかった。
自分はいったい何者なのか?
特別な能力を持ち、若いままでさ迷う人生には、どんな意味があるのだろうか?
死ぬ時は来るのか?
そういう思いが、あの悪夢を見させたのかもしれなかった。
陽はもう暮れかかり、薄闇が辺りを覆っていた。
その時、ご飯が出来たわよー、と母屋の方からジャネットの声がした。
「それじゃ行こうか。」
マイクは先に母屋の方へ歩き出し、紫音もそれに続いた。
母屋に入って右の方へ行くと食堂があった。
そこは十畳ほどの広さで、奥の暖炉の前のソファーには、カレンお婆が座っていた。
その手前には、六脚の椅子とテーブルがあり、テーブルの上には、それぞれ四人分の食器と料理が、所狭しと並べられていた。
「ほぉ、ご馳走だな。」
料理を見ながらマイクが言った。
「えぇ、今日は町に行く日だったから、お肉も買ってきたのよ。」
ジャネットはそう言いながらスープを配り終え
「さぁ、頂きましょう。」
と言って椅子に座った。
ソファからカレンお婆が立ち上がり、テーブルの奥に腰かけ、右側にジャネットとマイクが並んで座り、向かいの席に紫音が座った。
カレンお婆が食事の祈りの言葉を唱え、皆もそれにならい、食事が始まった。
ジャネットは、スープを飲んでいるカレンお婆の皿に肉の塊を切り分けてから各々の皿に取り分け
「後は自分で勝手に取ってね。」
と言った。
スープを飲み終え、肉を口に入れたカレンお婆様が
「こりゃ、うまいわい。」
と言うと
「でしょ?良いお肉なのよ。私がどうしようか迷っていたら、ジャンが安くしとくから、って言ったのよ。」
「ジャンって、あの肉屋の息子かい?」
ジャネットの言葉を受けて、マイクが尋ねた。
そうよ、と言うジャネットにマイクは
「ふ~ん」
と言いながら、ニヤニヤしてジャネットを見た。
「何よ、お兄様ったら。私、別に色目なんか使ってないわよ。」
「だけど、ジャンはお前の事を好きなんだろう?」
「そうみたいだけど、あの人、どこか気の弱いところがあるのよね。私はもっと頼り甲斐のある人がいいわ。」
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