紫音の少女

柊 潤一

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捕虜の処遇3

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 紫音はモハドに近づき、その目を見つめた。

 モハドは意思の強そうな目で紫音を見つめ返してきたが、すぐに目を閉じ、眠った。


「あれ?ここは?・・・」

 思う間もなく、彼は手を引っ張られた。

 母に手を引かれ走っている彼に、剣を持った兵隊達に追われ逃げ惑う人達の姿が見え、断末魔の叫び声が聞こえた。

 その時、足がもつれて倒れた彼の手が母の手と離れた。

 気付いた母が駆け寄ってきた時に、鬼のような形相をした兵隊が母に向かってきた。

 振りかざした剣に背中を貫かれた母は、叫び声をあげながらこちらに手を伸ばし、目の前まで這い寄ってきて動かなくなった。

 兵隊は自分を見て、そのあと走り去っていつた。

 呆然とする彼の耳に、阿鼻叫喚の叫び声が聞こえ続けていた。


「うぅ…」

 モハドはうめきながら目を覚ました。

 目の前に、自分をじっと見つめる紫音の紫がかった瞳があった。

 それは吸い込まれるように深く、こちらを包み込む大きさと心の奥まで理解している暖かさがあった。

「辛かったのね・・・」

 紫音の、心の底まで染み入るような声だった。

 モハドの目から涙が溢れ、彼は声をあげて泣いた。

 小さい時に戦争で親を亡くした彼は、戦争を引き起こす為政者を憎んでいた。

 そして復讐の為に、いつか自分が権力を握り、戦争を引き起こす為政者を倒し、平和な国を作ろうと心に決めていた。

 今、自分がしている事が、憎んでいる筈の為政者と変わらない事だとしても、それも理想の為だと割り切っているつもりだった。

 しかし紫音に見つめられ、彼女が自分の辛さや苦しみを全て解ってるのだと知ると、凝り固まっていた思いが溶けていき、涙が止まらないのだった。

「紫音様・・・私は・・・私は」

「わかっています。これから一緒に、私達の理想の国
 を作っていきましょう。手伝って貰えますね?」

「はい・・・私のような者で良ければ」

 紫音はハシバ国王に向き直った。

「国王様、お聞きの通りです。この人は私たちの力になってくれるでしょう。メイチは、あと二・三日様子を見たいと思います。私は今から、さっきの地の底に落とした兵達を連れ戻しにいきます。」
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