12 / 75
母子を救う
しおりを挟む
女の子はどこかの店で母親が帰るのを待っていたが、あまりに帰りが遅いので我慢出来ずに探しに出たらしかった。
ただ不思議な事に、女の子の記憶の映像はぼやけていたので、女の子の目をよく見ると眼球が黄いろく、焦点も虚ろだった。
(この子は目がよく見えないんだわ)
紫音はそう思いながら、女の子が持っている母親の生命の色とイメージを自分の中に取り込んで、今いる場所を中心に数多くの生命体の中から母親らしき人を探していった。
そして広場でそれらしき人を見付けると
「お母さんいたわよ。行こう」
と言いながら女の子の手を握って歩き出した。
そして広場に来てベンチに座っている女性に近寄っていくと
「お母ちゃん!」
と言いながら、女の子が女性の膝にとりすがって泣き出した。
「ユリちゃん!」
母親は、突然現れた娘と紫音達に戸惑っている様子だった。
「あなたの帰りが遅いので、探しに出て迷ってたんですよ」
紫音が母親に言った。
「どうして目の悪い子を残して出ていったんですか?」
責めるような口調で言った紫音だったが、ふと母親を見て黙り込み、そばにいるシュリ婆を見た。
シュリ婆も、うむ・・・と言うように頷いた。
母親の顔色は黒く身体も痩せこけていて、一目で病気だと分かるほど衰弱していた。
「さぁ、こんなところにいると身体に障るぞぇ。わし
らと一緒に来るがええだ」
紫音に代わってシュリ婆が母親に話しかけた。
シュリ婆の口調は優しかったが、有無を言わせない響きがあった。
シュリ婆と紫音は母子を連れてエリカの家に戻って来た。
「お帰りなさい」
繕い物をしていたエリカが立ち上がって出迎えた。
「お客さんを連れてきたぞぇ。子供は眠そうじゃから
寝かせてやってくれんか?」
エリカは今日一日の疲れでうとうととしている女の子を母親から受け取ると、ベットに連れ行った。
シュリ婆はテーブルを挟んで母親の向かいに座り、紫音が母親と並んで座ると口を開いた。
「さて・・・わしらはあんたの力になりたいんじゃ。見たところ病気のようじゃが具合はどうかえ?」
母親はしばらく黙ったままうつむいていたが、やがてシュリ婆にうながされてぽつりぽつりと話し出した。
母親は、五年前に所帯を持って一年後に女の子が生まれたが、妊娠中に風疹にかかってしまい女の子の目が生まれつき悪いこと。
二年前に夫を病気で亡くし、それからは目の悪い女の子を女手一つで育ててきたこと。
一年前位からお腹の辺りがおかしい時があったが、さして苦痛もなく忙しさにかまけて医者にかかりそびれたこと。
ところが最近になって血を吐いたりして、慌てて医者にいくと、胃の中に悪性の瘤のような物が出来ていて手の施しようがないと言われたこと。
この頃になるとお腹の痛みもひどく、床に伏せることが多くなり、生きていくのが辛くなって女の子を連れて一緒に死のうと思い、最後の贅沢にと子供と一緒に店に入ったこと。
そして近所に農薬を買いに出たが、目は悪くても頭が良くて素直な子供を一緒に死なせてやるのも不憫に思い、さりとてこれから生きていく希望もなく、思い迷って時間が経ってしまったことを話した。
その後で
「私はどうしてこんなに苦労しなければいけないのでしょうか?何も・・悪いことなどした覚えもないのに・・」
と顔を覆って泣き崩れた。
ただ不思議な事に、女の子の記憶の映像はぼやけていたので、女の子の目をよく見ると眼球が黄いろく、焦点も虚ろだった。
(この子は目がよく見えないんだわ)
紫音はそう思いながら、女の子が持っている母親の生命の色とイメージを自分の中に取り込んで、今いる場所を中心に数多くの生命体の中から母親らしき人を探していった。
そして広場でそれらしき人を見付けると
「お母さんいたわよ。行こう」
と言いながら女の子の手を握って歩き出した。
そして広場に来てベンチに座っている女性に近寄っていくと
「お母ちゃん!」
と言いながら、女の子が女性の膝にとりすがって泣き出した。
「ユリちゃん!」
母親は、突然現れた娘と紫音達に戸惑っている様子だった。
「あなたの帰りが遅いので、探しに出て迷ってたんですよ」
紫音が母親に言った。
「どうして目の悪い子を残して出ていったんですか?」
責めるような口調で言った紫音だったが、ふと母親を見て黙り込み、そばにいるシュリ婆を見た。
シュリ婆も、うむ・・・と言うように頷いた。
母親の顔色は黒く身体も痩せこけていて、一目で病気だと分かるほど衰弱していた。
「さぁ、こんなところにいると身体に障るぞぇ。わし
らと一緒に来るがええだ」
紫音に代わってシュリ婆が母親に話しかけた。
シュリ婆の口調は優しかったが、有無を言わせない響きがあった。
シュリ婆と紫音は母子を連れてエリカの家に戻って来た。
「お帰りなさい」
繕い物をしていたエリカが立ち上がって出迎えた。
「お客さんを連れてきたぞぇ。子供は眠そうじゃから
寝かせてやってくれんか?」
エリカは今日一日の疲れでうとうととしている女の子を母親から受け取ると、ベットに連れ行った。
シュリ婆はテーブルを挟んで母親の向かいに座り、紫音が母親と並んで座ると口を開いた。
「さて・・・わしらはあんたの力になりたいんじゃ。見たところ病気のようじゃが具合はどうかえ?」
母親はしばらく黙ったままうつむいていたが、やがてシュリ婆にうながされてぽつりぽつりと話し出した。
母親は、五年前に所帯を持って一年後に女の子が生まれたが、妊娠中に風疹にかかってしまい女の子の目が生まれつき悪いこと。
二年前に夫を病気で亡くし、それからは目の悪い女の子を女手一つで育ててきたこと。
一年前位からお腹の辺りがおかしい時があったが、さして苦痛もなく忙しさにかまけて医者にかかりそびれたこと。
ところが最近になって血を吐いたりして、慌てて医者にいくと、胃の中に悪性の瘤のような物が出来ていて手の施しようがないと言われたこと。
この頃になるとお腹の痛みもひどく、床に伏せることが多くなり、生きていくのが辛くなって女の子を連れて一緒に死のうと思い、最後の贅沢にと子供と一緒に店に入ったこと。
そして近所に農薬を買いに出たが、目は悪くても頭が良くて素直な子供を一緒に死なせてやるのも不憫に思い、さりとてこれから生きていく希望もなく、思い迷って時間が経ってしまったことを話した。
その後で
「私はどうしてこんなに苦労しなければいけないのでしょうか?何も・・悪いことなどした覚えもないのに・・」
と顔を覆って泣き崩れた。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
婚約者の浮気相手が子を授かったので
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ファンヌはリヴァス王国王太子クラウスの婚約者である。
ある日、クラウスが想いを寄せている女性――アデラが子を授かったと言う。
アデラと一緒になりたいクラウスは、ファンヌに婚約解消を迫る。
ファンヌはそれを受け入れ、さっさと手続きを済ませてしまった。
自由になった彼女は学校へと戻り、大好きな薬草や茶葉の『研究』に没頭する予定だった。
しかし、師であるエルランドが学校を辞めて自国へ戻ると言い出す。
彼は自然豊かな国ベロテニア王国の出身であった。
ベロテニア王国は、薬草や茶葉の生育に力を入れているし、何よりも獣人の血を引く者も数多くいるという魅力的な国である。
まだまだエルランドと共に茶葉や薬草の『研究』を続けたいファンヌは、エルランドと共にベロテニア王国へと向かうのだが――。
※表紙イラストはタイトルから「お絵描きばりぐっどくん」に作成してもらいました。
※完結しました
どうして隣の家で僕の妻が喘いでいるんですか?
ヘロディア
恋愛
壁が薄いマンションに住んでいる主人公と妻。彼らは新婚で、ヤりたいこともできない状態にあった。
しかし、隣の家から喘ぎ声が聞こえてきて、自分たちが我慢せずともよいのではと思い始め、実行に移そうとする。
しかし、何故か隣の家からは妻の喘ぎ声が聞こえてきて…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる