バースデーソング

せんりお

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優しく重なっていた唇をそっと離して、ニコラが顔を離した。恥ずかしさを押し込めてそろそろと視線をあげると、ニコラの微笑みにかち合う。それはいつも通りのようで、そうではなく。甘さが過分に含まれていた。
ニコラはカウンターを回って俺の隣にやって来た。そして俺をその腕に抱き締める。というより優しく囲い込まれて俺はもぞもぞと落ち着かなく体を動かした。

「ニコラ?」

「…チハル、もう一回言って」

俺の肩に顔を預けたニコラがそう言った。俺の体に回された腕にぎゅっと力が込められる。何を、と言われずともわかる。

「ニコラ、好きだ。大好き」

俺はニコラを長いこと待たせてしまった。だからその分を返していかなくちゃならない。思いをありったけ込めて好きだと言うと、更に腕に力がこもった。

「はぁー…どうしよう…嬉しすぎてどうにかなりそう」

ニコラがそう言いながら顔をあげた。慌てて顔を背けるも遅かった。ニコラが俺の顔をみて軽く吹き出す。

「っ、笑うなって!」

顔をそらすとまた笑われた。俺の今の顔はきっと真っ赤だ。好きな人に好きだって、行動も言葉も全部で伝えられるになんか慣れていない。さっきからほんとに火が出そうなほど体が熱い。

「真っ赤だねー」

からかうように言われて俺はむっと唇を尖らせた。それを見てニコラが更に笑う。

「っうるさい」

もう黙ってもらおうと俺はニコラにキスをする。そうするとニコラは驚いたように固まって、次の瞬間赤くなった。

「ぶはっ、ニコラも真っ赤」

今度は俺が吹き出す。すると今度はニコラが唇を尖らせる。

「しょうがないでしょ。好きなんだから」

笑っていた俺は、ニコラの言葉にぴたっと笑いを止めた。ニコラを見るとしてやったりというような笑顔を浮かべている。

「好きだよ」

甘い囁きと共に唇が重ねられる。舌でペロッと舐められて閉じた唇を開けばするりと侵入される。熱い舌で口内をゆっくりと擦られて息が上がる。

「…ふっ、ん」

息継ぎの合間、閉じていた目を少し開ければニコラの細められた目が見えた。

「…チハル」

名前を呼ばれて、また目を閉じると再び舌が入ってきて今度はざらりと歯列の裏をなぞられて「んっ」と声が出た。そのまま俺の舌を絡めとって吸われる。長くねっとりとしたキスに力が抜けてニコラにすがり付いた。するとニコラが俺の背に手を添えて、もう片方の手で俺の顎をとった。軽く上向けられたと思うと更に深く口付けられる。

「んっく…ふ…」

長く続く深いキス。そろそろ息が苦しくなってニコラの服を引っ張った。するとチュッとリップ音をたててニコラが離れていく。
軽く上がった息を整えていると、ふふっと笑われた。くっそ俺、肺活量はあるはずなのになんでニコラのほうが余裕なんだよ!
また無意識のうちに尖っていた唇を顎に添えられたままだった手の親指で拭うように撫でられた。
ニコラの視線が、行動が、表情がもうなんというか…ただひたすらに甘い。
ほんとに甘い。甘すぎて死にそうなくらいだ。いやほんとに死ぬかも、幸せで。
そんな馬鹿なことを考えながら俺はもう一回とニコラに唇を寄せた。
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