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14 奈月side

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高宮は次の日の夜に帰って来た。さすがの高宮にも急な出張は応えるのか、少しくたびれた様子だった。

「お帰り、お疲れ様」

「ただいま」

「その上着、洗うからここでちょーだい」

「あぁ。」

高宮からスーツの上着を受けとる。と、煙草の匂いに混ざってふっと甘い香りがしたように思った。ん?とそのスーツに鼻を近づけて匂いを嗅ぐ。やはりそこからは香水のような甘い香りがした。この匂い…女物の香水…?なんでこんな匂いが高宮から?

「なんかこのスーツ香水の匂いがする」

俺のその台詞にネクタイをほどいていた高宮ははっとこちらを見た。その反応に疑念を抱く。

「女物の香水…かなぁ」

もう一押ししてみる。

「こんな香水つくなんて、相当の距離が近いのと時間が必要だよな」

明らかに高宮の表情が変わる。しまった、とでも言いたげな表情に腹が立ったと同時に心臓が捕まれたようにぎゅっと痛んだ。ここでなんでもない表情で「接待だ」とかいつものように言えば俺も納得したのに、あからさまに表情が変わった高宮になにかあったのだと察する。

「何やってたんだ?これ着てさ」

件のスーツを高宮に突き出しながら問う。

「いや…なんでもない。ただの接待だ。」

なんでこいつはこんなに嘘が下手なんだろう。…なんでおれはこいつをこんなに問い詰めてるんだろう…
何故だかこれ以上聞いて、高宮の答えを待つのがひどく怖くて、俺はそこで会話を終わらせた。だって高宮に、女といた、なんて言われたら…言われたら俺はどうなるんだ?

「…そっか」

「…あぁ」

高宮は俺を番にするといいながら、他の女の人といたのか…?だったら俺はどうしたらいい?もし高宮にそういう人がいたとしたら俺は邪魔者じゃないか。高宮が俺を番にすると言ったのは“運命の番”としての義務感とか?そんなの酷すぎる…
そこまで考えてからはっと我にかえって自分の思考に驚く。
別に高宮がどうであろと、まだ付き合ってもいない俺には関係ないのに…俺はなんでこんなに胸が痛い?






高宮とはぼそぼそとした会話しかないままその日は終わっていった。
高宮もどうしていいかわからないらしいし、俺もどうしていいかわからない。もやもやとしたものを抱えて、俺は解消出来ないままだった。
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