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3章

書庫と侵入

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 フローラに連れられて隠れ家の書庫へとやって来たアンジェ。
 大量の本がズラリと並ぶその書庫をぐるりと見渡すなり、アンジェは目を輝かせた。

 本好きだから…という事も勿論あるが、初めて見る言語の本と言った未知の本がある事がよりアンジェの心を揺さぶっているらしい。

 ホコリ一つ無い整理整頓された書庫。
 最近使われた形跡は無い事からあまりフローラは使用していないことが垣間見えるが、きちんと掃除がされているのは、大切な祖父の書庫だからだろう。


 フローラ曰く、祖父とは本の趣味が合わなくて祖父が集めた本は一切読んでいないとのこと。
 通りで使われた形跡が無いわけだとアンジェは一人で納得した。


 それからベルも合流し、三人で書庫を探し始める。
 そして数時間過ぎた頃、フローラがとある事に気付いた。


 「……おかしい。本が足りないわ」


 フローラの言葉にアンジェとベルはすぐ様フローラ元へと向かう。
 そして本棚へと視線を向け、確かにと頷く。

 何処の本棚にもきっちりと隅から隅まで本が並べてある。
 けれど、この本棚だけはゴッソリと……まるで誰かに抜き取られてしまったかの様に空っぽだった。

 しかも不自然な事にそこの本棚はフローラの祖父が書き記した日記だけがズラリと置かれた所。
 一定の感覚で抜き取られたその本棚と、ある事に気付いたフローラが強い違和感を感じとったらしい。


 「お爺様の日記に何か記されている可能性があると思って見てたの。そうしたら気づいたの。日記帳の数が足りないって。だから……ベル。お願い」


 「はい。畏まりました」


 フローラがベルへと目配せをする。
 そうすればベルが頷き、不自然な程に空っぽなその本棚に手を当てて目を瞑った。


 一体ベルが何をしているのかアンジェには分からない。
 けれど、何となくだがゾワゾワと何かの違和感を覚え始め自身の体を抱き締めた。


 「……何者かが侵入した形跡を感じ取りました」


 「だとしたら変よ。侵入者がいた場合管理者の私が気付くはずだもの」


 「恐らくフローラ様の管理者の権限を回避し、忍び込んだのでしょう。だとしたら」


 「相当な手練ね」


 「……つまり、何者かがフローラ様に気付かれないようにこの書庫に忍び込み、本を盗んだ…って事であってますか?」


 「その通りよ。にしても…私の管理者の権限を回避して忍び込める様な人が正直居るとは思えないわ。この空間に入れるのは私が心を許した者のみ。そして入口はこの鍵を使って呪文を唱えて扉を開ける以外無いもの」


 フローラは自身の首にかけていた鍵をアンジェ達へと見せる。

 三人は頭を悩ませた。

 そんな中、ふとアンジェは尋ねる。


 「そう言えば…フローラ様が此処へ来る時に度々唱えているあの呪文は一体何語何なんですか?」


 「あー『*❖❖◇▢**▢❖❖❖』のこと? これはお爺様に教えて貰った呪文よ。確かこの空間を作ってくれた方が鍵と一緒に教えてくれた呪文だと言っていたけど…確か…」


 『……エルフの言葉だよ』


 フローラの行き着かなかった答えの解を呟いたのはマモンだった。
 そしてそう呟いた本人こそが、目を見張り、一番驚きを隠せない様子でいた。


 
 
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