66 / 93
3章
フラグ回収
しおりを挟む「すっかりここもお花畑ですね」
フローラの秘密の隠れ家へとやって来たアンジェは、すっかりお花畑へと変わった隠れ家周辺を見渡した。
満開の美しい花々が咲き誇った大地は、もう花畑と称しても過言ではないだろう。
「じゃあ、簡単に箒の説明をしておくわね。操作方法はとっても簡単。箒に跨れば、あっという間に空を飛べるわ! 以上よ!」
「え、それだけ…ですか?」
「言葉よりも実践で覚えた方が早いわよ。ほら、早く乗ってみなさい」
そうフローラに急かされてアンジェは渋々と箒へと跨った。
そうすればゆっくりと、箒が浮上し始める。
「え、ちょ……ふ、フローラ様っ!?」
「大丈夫、怖がる心配は無いわ! アンジェと箒は言わば一心同体っ! 」
「な、なるほど? つまり……箒さん。下ろして下さい」
そうアンジェが言うと、箒がゆっくりと地へと降りる。
成程。どうやらアンジェの意思で箒を自由自在に操る事が出来るらしい。
だから一心同体だとフローラは言ったのか。
そうアンジェは理解しつつ、今度こそと意を決して箒へと跨る。
「徐々に上がって下さい」
不安げにアンジェが言うと、箒はゆっくりと徐々に浮上していく。
そしてあっという間に大樹の上にまで到達する。
まさかこうして空飛ぶ箒に乗る日が来るとは…。
アンジェは感激のあまり、箒でくるりと一回転してみたりと、自由自在に箒を操り空を満喫し始める。
「フローラ様ー! 凄く楽しですっ!」
地上にいるフローラへと大きく手を振りながら声を掛ければ、フローラが少し不安げに返事をする。
「今回のは最高傑作だもの! 因みにあまり油断してると箒から滑り落ちてしまうから気を付けなさいよー!」
……何という盛大なフラグだろうか。
その瞬間、アンジェは左手を滑らせた。
いや、突然左腕に響いた痛みで左手が使えなくなったのだ。
突然の痛みに驚き、アンジェが背を反らす。
そうすれば、あっという間に箒から体が離れてしまい、アンジェは地上へと真っ逆さまに落ちて行く。
(え、私……もしかして死ぬ? 余命を迎えずにして?)
不安と恐怖で押しつぶされそうにながらも、目を瞑ることしかアンジェには出来なかった。
(ほんと、こう言う時に魔法が使えたら保護魔法を自分に掛けれるのに)
何度目かも分からない自分への苛立ちを胸にアンジェが盛大なため息を吐いた時だった。
「あれ……?」
時間が経っても尚痛まない体。
アンジェは不思議に思い、恐る恐ると目を開ければ視界に映った人物に目を見開いた。
『……死なれたら困るから助けただけだから』
(マモンだ……)
真っ赤な瞳がアンジェを静かに見つめている。
マモンとこうして会ったのは何時ぶりだろうか。
少なくともあの日、バルコニーで噛まれて以来会っていなかった様な気もする…。
アンジェはあやふやな記憶の中で、目の前にいるマモンの姿が以前よりもハッキリと実態している事に驚いた。
『じゃ、もうボク行くから…』
「あ、うん。ありがとう…」
そう言ってマモンは消えた。
アンジェは箒を右手にゆっくりと地上に降り立つ。
そうすれば顔を真っ青にしたフローラがそこには居た。
そしてフローラはアンジェへと駆け寄るとアンジェを強く抱きしめた。
「ごめんなさい! 危険な目に合わせてしまって…」
「私の不注意が原因ですし、フローラ様が謝ることじゃありませんよ。それに今こうして私は無事なんですし」
「箒から落ちた時を考えて保護魔法は掛けておいたんだけど……」
フローラはそう言うと、ゆっくりアンジェから距離をとる。
そして
「アンジェを助けたあの禍々しいアレは何? 」
35
お気に入りに追加
3,082
あなたにおすすめの小説
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
稚拙ながらも投稿初日(11/21)から📝HOTランキングに入れて頂き、本当にありがとうございます🤗 今回初めてHOTランキングの5位(11/23)を頂き感無量です🥲 そうは言いつつも間違ってランキング入りしてしまった感が否めないのも確かです💦 それでも目に留めてくれた読者様には感謝致します✨
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷
嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜
みおな
恋愛
伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。
そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。
その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。
そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。
ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。
堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・
【完結】彼の瞳に映るのは
たろ
恋愛
今夜も彼はわたしをエスコートして夜会へと参加する。
優しく見つめる彼の瞳にはわたしが映っているのに、何故かわたしの心は何も感じない。
そしてファーストダンスを踊ると彼はそっとわたしのそばからいなくなる。
わたしはまた一人で佇む。彼は守るべき存在の元へと行ってしまう。
★ 短編から長編へ変更しました。
殿下が恋をしたいと言うのでさせてみる事にしました。婚約者候補からは外れますね
さこの
恋愛
恋がしたい。
ウィルフレッド殿下が言った…
それではどうぞ、美しい恋をしてください。
婚約者候補から外れるようにと同じく婚約者候補のマドレーヌ様が話をつけてくださりました!
話の視点が回毎に変わることがあります。
緩い設定です。二十話程です。
本編+番外編の別視点
タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒―
私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。
「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」
その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。
※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています
【完結】愛してるなんて言うから
空原海
恋愛
「メアリー、俺はこの婚約を破棄したい」
婚約が決まって、三年が経とうかという頃に切り出された婚約破棄。
婚約の理由は、アラン様のお父様とわたしのお母様が、昔恋人同士だったから。
――なんだそれ。ふざけてんのか。
わたし達は婚約解消を前提とした婚約を、互いに了承し合った。
第1部が恋物語。
第2部は裏事情の暴露大会。親世代の愛憎確執バトル、スタートッ!
※ 一話のみ挿絵があります。サブタイトルに(※挿絵あり)と表記しております。
苦手な方、ごめんなさい。挿絵の箇所は、するーっと流してくださると幸いです。
私の愛した婚約者は死にました〜過去は捨てましたので自由に生きます〜
みおな
恋愛
大好きだった人。
一目惚れだった。だから、あの人が婚約者になって、本当に嬉しかった。
なのに、私の友人と愛を交わしていたなんて。
もう誰も信じられない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる