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3章

フラグ回収

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 「すっかりここもお花畑ですね」


 フローラの秘密の隠れ家へとやって来たアンジェは、すっかりお花畑へと変わった隠れ家周辺を見渡した。

 満開の美しい花々が咲き誇った大地は、もう花畑と称しても過言ではないだろう。


 「じゃあ、簡単に箒の説明をしておくわね。操作方法はとっても簡単。箒に跨れば、あっという間に空を飛べるわ! 以上よ!」


 「え、それだけ…ですか?」


 「言葉よりも実践で覚えた方が早いわよ。ほら、早く乗ってみなさい」


 そうフローラに急かされてアンジェは渋々と箒へと跨った。
 そうすればゆっくりと、箒が浮上し始める。


 「え、ちょ……ふ、フローラ様っ!?」


 「大丈夫、怖がる心配は無いわ! アンジェと箒は言わば一心同体っ!  」


 「な、なるほど? つまり……箒さん。下ろして下さい」


 そうアンジェが言うと、箒がゆっくりと地へと降りる。

 成程。どうやらアンジェの意思で箒を自由自在に操る事が出来るらしい。
 だから一心同体だとフローラは言ったのか。


 そうアンジェは理解しつつ、今度こそと意を決して箒へと跨る。


 「徐々に上がって下さい」


 不安げにアンジェが言うと、箒はゆっくりと徐々に浮上していく。
 そしてあっという間に大樹の上にまで到達する。
 まさかこうして空飛ぶ箒に乗る日が来るとは…。
 アンジェは感激のあまり、箒でくるりと一回転してみたりと、自由自在に箒を操り空を満喫し始める。


 「フローラ様ー! 凄く楽しですっ!」


 地上にいるフローラへと大きく手を振りながら声を掛ければ、フローラが少し不安げに返事をする。


 「今回のは最高傑作だもの! 因みにあまり油断してると箒から滑り落ちてしまうから気を付けなさいよー!」


 ……何という盛大なフラグだろうか。
 その瞬間、アンジェは左手を滑らせた。
 いや、突然左腕に響いた痛みで左手が使えなくなったのだ。

 突然の痛みに驚き、アンジェが背を反らす。 
 そうすれば、あっという間に箒から体が離れてしまい、アンジェは地上へと真っ逆さまに落ちて行く。


 (え、私……もしかして死ぬ? 余命を迎えずにして?)


 不安と恐怖で押しつぶされそうにながらも、目を瞑ることしかアンジェには出来なかった。


 (ほんと、こう言う時に魔法が使えたら保護魔法を自分に掛けれるのに)


 何度目かも分からない自分への苛立ちを胸にアンジェが盛大なため息を吐いた時だった。


 「あれ……?」
 

 時間が経っても尚痛まない体。
 アンジェは不思議に思い、恐る恐ると目を開ければ視界に映った人物に目を見開いた。


 『……死なれたら困るから助けただけだから』


 (マモンだ……)


 真っ赤な瞳がアンジェを静かに見つめている。

 マモンとこうして会ったのは何時ぶりだろうか。
 少なくともあの日、バルコニーで噛まれて以来会っていなかった様な気もする…。

 アンジェはあやふやな記憶の中で、目の前にいるマモンの姿が以前よりもハッキリと実態している事に驚いた。


 『じゃ、もうボク行くから…』


 「あ、うん。ありがとう…」


 そう言ってマモンは消えた。
 アンジェは箒を右手にゆっくりと地上に降り立つ。
 そうすれば顔を真っ青にしたフローラがそこには居た。
 そしてフローラはアンジェへと駆け寄るとアンジェを強く抱きしめた。


 「ごめんなさい! 危険な目に合わせてしまって…」


 「私の不注意が原因ですし、フローラ様が謝ることじゃありませんよ。それに今こうして私は無事なんですし」


 「箒から落ちた時を考えて保護魔法は掛けておいたんだけど……」


 フローラはそう言うと、ゆっくりアンジェから距離をとる。
 そして


 「アンジェを助けたあの禍々しいアレは何? 」


 
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