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竜の国 編

72 様々な竜人

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 直ぐにでも失踪した竜人たちを探しに行きたい所だけれど、今からアンくんのお父さんとお母さんが三区に仕事へ行かなければいけないらしく、竜人たちの捜索は二人が仕事から帰宅する明日からという事になった。なぜ二人が帰ってきてからなのかと言うと、この事件を主に二人が担当しているからだそうだ。

 アンくんはエルゼさんに連れられて何処かへ行ってしまった。
 ルカはこの竜の国では人間の姿になる必要は無いのでドラゴンの姿になって遊びに出かけてしまった。なので今部屋にいるのは私はリーネ様とリーネ様の側近であるシキさんだけ。

 客室にもてなされた私は用意されたお茶を口に運びつつ、今この状況に何とか慣れようと思っていた。
 けど、気まずい。
 とにかく話す話題が無いので気まずいのだ。

 私は恐る恐るリーネ様を見つめる。
 やはりシキさんと比べると小柄だし、筋肉もあまりついていないように見える。
 何か事情があるのかな? と思っていると、目がバッチリ合ってしまった。

 「どうかしましたか?」

 「あ、いえ。ただリーネ様は他の竜人の方に比べたら小柄だなと思いまして……」

 ちょっと直球過ぎたかな、と思ったけどリーネ様は気にした様子は一つも見せずに説明してくれた。

 「確かに私は竜人の中では小柄ですからね。そこに気づくとは中々鋭いお方だ。簡単に説明すると竜人にも種類があるんです。大柄で鎧のような硬さを誇る肉体を持っている竜人を+Aプラス  エーがクラスと呼んでいて……例えばディガン、アンドレくんの父親とシキはそれに値します。そしてエルゼ、アンドレくんの母のユキはAクラスと呼ばれる竜人で、この竜の国の竜人達のほとんどはこれに値するのですが、私のような小柄な竜人はCクラスに値し、Cクラスの竜人は何かに特化している竜人のことを言うんです」

 リーネ様の分かりやすい説明に、私はなるほどと頷いた。
 となるとアンくんは恐らくAクラスなんだと思う。

 「では、リーネ様は何に特価された竜人なんですか?」

 「強いて言うならば身軽さ……ですかね」

 曖昧な答えに首を傾げる私。
 確かにリーネ様は最初窓から室内へと入ってきた。そう思えば確かに身軽さに特化している気がするけど……。

 それって、竜人誰もが出来そうだ。それに私だって出来る気がする。
 あ、だから強いて言うなら、なのか。

 「エデンさん」

 「はい」

 突然名前を呼ばれ、私は思わず返事をする。
 リーネ様が私をジーッと見ており、私は息を飲んだ。

 あの時感じた見透かされているような気分ではなく、今度は何だか威圧的なものを感じ、やはり竜の国を国を治める王様なんだと実感した。
 何だか私は彼から目が逸らせず、リーネ様を見詰め返す。

 するとリーネ様が小さく笑った。

 「エデンさんは巫女として私達に力を貸してくださるんですよね?」

 「はい。私に出来ることがあればの話ですが」

 「巫女の力を持つエデンさんが居るだけで心強い……と言いたいところですが現実はそう甘くないんですよね」

 「と言うと?」

 「実は犯人の目星はだいたい着いてるんですよ」

 リーネ様の言葉に私とシキさんが「えぇ!?」と声を上げた。
 どうやらシキさんも知らなかったみたい。

 シキさんが眉間に皺を寄せ、低い声で言った。

 「陛下。あれほど勝手に動いては行けないと俺は言いましたよね? そう勝手に行動されては困ります」

 「分かってるから、取り敢えず落ち着いてよ」

 そう言うとリーネ様はニコリと笑う。
 何だかよく掴めない人だなと思った。

 「それで、陛下。目星とはいったい……」

 「行方不明になった竜人達は全員が竜騎士見習い。最初は竜人自ら失踪した可能性も考えたけど、それだと法律を反することになる。真面目で戦いにしか脳がない竜人だから法律を破るなんてことはしない。だから残すは誰かによって拉致された可能性が大きくなる。しかも相手は竜人を連れ去る事が出来るほどの力を持つ者。これは私の推測にすぎないが、恐らく魔法が使える人間。丈夫な竜人でもさすがに睡眠魔法には勝てないし、何より魔法攻撃は竜人が最も苦手とする攻撃だ」

 「なるほど。それで、その竜人達を拉致した相手というのは」

 「はい。それも大体目星はついてますよ」 

 「陛下!? 私達が動いている裏でまさか勝手に……!」

 「仕方ないだろ。全ての区の竜騎士達が必死に探っても中々情報を得られない。竜の国の王として早くこの問題はなんとしてでも解決したいんだ」

 ……かっこいい。

 思わず私はそう思ってしまった。

 これが王の器というやつなのだろうか。


 「そこで、エデンさんにお力を借りたいのです」

 「私に出来ることがあれば」

 胸を張り私は言った。
 何故だろう? 私は力を貸したい。協力したいと強く思うようになっていた。

 「なに。エデンさんなら直ぐに出来てしまう簡単なことですよ」

その言葉に私は首を傾げることにしか出来なかった。


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