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一緒にダンジョン編

26 ルゲル村に帰ってきた!

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 ダンジョンをクリアし、ルゲル村へと帰ってきた頃にはもう既に日が落ち、辺りは暗くなっていた。
 因みにルゲル村までレッドドラゴンが連れてきてくれた。
 私は初めてドラゴンに乗って空を飛んだ。
 ドラゴンの上から見る星空はとても綺麗で、手を伸ばせば掴めそうな気さえした。


 「ここが私の家だよ。うぅー! やっぱり我が家が一番だよ!」

 私はレッドドラゴンから飛び降り、その場で大きく背伸びをする。
 そうすれば少しだけ体が軽くなった気がした。

 【魔導師さん! 私……竜の国には帰りたくないです!】

 「え!?」

 【私、魔導師さんと一緒に居たいです! 魔導師さんと居るとドキドキします! ワクワクします! ダメですか?】

 「……とは言ってもドラゴンを飼えるようなスペースもないし、ここはドラゴンにはあまり適さないと思うよ。食料だって竜の国に比べたら少ないと思う」

 レッドドラゴンのお願いにはビックリしたけど、その願いを叶えるのは難しい。なにせドラゴンの食べる量は異常だと聞く。それにこんな大きなドラゴン皆が怖がってしまうだろう。
 幸い今は夜。だから村の人達には見えないとは思うけど、レッドドラゴンを見たら皆飛び上がり怖がってしまう。

 【では魔導師さんの力で私を別の生き物に変えてください!】

 「変身魔法って……こと?」

 こくこくと頷くレッドドラゴン。
 確かにドラゴンじゃない違う生物だったら大丈夫な気がする。
 私は腕を組み、うーんと唸る。

 「故郷には……帰らなくていいの?」

 【私には家族が居ません。なので……大丈夫です】

 「家族が居ないの?」

 【はい。だから……二人をみて凄く楽しそうだなって思ったんです。あの……ダメ、でしょうか?】

 うるうるした瞳で訴えかけられ、私はグッと言葉を飲み込む。
 この子もいろいろ苦労しているんだと分かった途端、私の答えは1つに絞られた。

 「分かった。貴方のここでの生活を許可します」

 【魔導師さん!!】

 「お師匠はほんとお人好しだよね」

 「いい事でしょ?」

 アンくんの言う通り私は本当にお人好しだと思う。
 でも放っておけないのだ。どうしても。

 「じゃあ変身魔法かけてみるね。でも初めてだからもし失敗したら本当にごめん」

 そう私が謝ればレッドドラゴンは大きく首を振った。
 私はレッドドラゴンの頭に手を置き、呟く。

 「この子を人間の姿に変えて」

 次の瞬間レッドドラゴンが眩い光に包まれた。
 目が暗みそうなくらい眩しい光。
 それに激しい風が吹き始め、森の木々達が激しくぶつかり合いだした。

 数分後光がやみ、風がやんだ。

 「変身魔法……成功したみたいだね」

 視線の先には先程のレッドドラゴンではなく赤毛の少女がポツンと立っていた。
 ボサボサの長い髪に、白い肌。まん丸な黄色の瞳。
 その姿はどこからどう見ても人間の少女だった。

 「……まずはお洋服を探さないとね」

 私はレッドドラゴンに着ていたローブを差し出す。
 そう、人間の姿になったレッドドラゴンは裸だったのだ。
 アンくんはそっぽを見てる。うん、男の子だしね。女の子の裸はさすがに見ちゃダメだし、見れないよね。
 レッドドラゴンが雌だということにも驚いたけど、なにより驚いたのはその人間の姿の年齢である。見た感じ八歳ぐらい見えた。

 「魔導師さん! ありがとうございます!」

 花が咲いたような満面の笑みで微笑まれ、私は思わず抱き締めたくなる衝動を必死で堪えた。

 「私はエデン。魔導師だよ」

 「俺はアンドレ。お師匠の弟子」

 「エデンさんにアンドレさん! 私はレッドドラゴンです! 今日からよろしくお願いします!」

 深々と頭を下げる人間の姿となったレッドドラゴン。
 レッドドラゴン………………うーん呼びにくいな。
 それに、村の皆にはなんと説明しよう。
 ダンジョンで新しく出会った仲間? というべきなのだろうか? それともレッドドラゴンだと本当の事を言うべき? 
 
 私は再び頭を悩ませた。

 でも……

 「アンドレさん! アンドレさん! お家大きいですね!」

 「……うん」

 「私、ドキドキします!」

 「うん、良かったね……」

 満々の笑みで微笑むレッドドラゴンを、優しい笑みで見つめるアンくんに私も思わず笑顔が零れた。


 まぁ、今はまだいっか……
 今はまだこの微笑ましい光景をただ見ていたかった。

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