上 下
25 / 28
第一章 帰ってきた幼馴染

紅里の告白(1)

しおりを挟む
 あれから数日が経った。
 相変わらず、わたしの勤めている国道沿いのレストランには新人が入らない。
 新しい人を入れてくれないといつまでたっても辞められないし、辞められないといつまでたっても青司くんのお店を手伝えない。
 焦りばかりがつのっていた。

 わたしはレストランに出勤する一方、朝と夕方だけは青司くんの喫茶店を手伝っていた。
 試食をしたり一緒に料理を作ったりと、その時間は楽しい。
 でも、この日の朝は少し違っていた。

「真白、ちょっとこれ見て」
「ん? なに」

 青司くんがそう言って納戸から持ってきたのは、たくさんの水彩画だった。
 今まで作ったスイーツやドリンクなどが描かれている。
 いつのまに。

「うわあ……。すごい、これ全部描いたの?」
「うん。メニューもだいぶ出揃ってきたからね。結構描きたまってきたよ。どうかな?」
「うん! 良い! すごく良いと思う」
「そっか。じゃあさっそくこれ、紫織さんのデザイン会社に頼んで製本してもらうね」
「うん。そう、だね……」

 わたしはそうつぶやいたきり、テーブルの上に広げられた水彩画たちから目がそらせなくなってしまった。
 美しい彩色。精密な描写。
 ここまでモチーフの良さを引き出しているのに感心する。さすがはプロだ。

 でも、そんな風に見入っているわたしに、青司くんは不安そうに声をかけてきた。

「真白……? どうした? もしかして紫織さんのところにお願いするの、良くない?」
「あ。ううん。そんなことないよ。そうじゃなくって……。青司くん、スランプだって言ってたけど……これもうスランプじゃなくない?」
「え。いや……」

 そう言ったわたしに、青司くんはあまりいい顔をしなかった。

「これはさすがに自分の身近なものだから……どうにか描けたんだ。でも……お客さんから注文を受けたテーマとかは……まだ描けないと思う。自分が興味の持てないものには、なんていうか……筆が乗らないんだ」
「そう、なの……」
「うん。描きたい、っていうモチベーションが上がらないんだ。ホント、これは深刻な問題だよ」

 そう言ってしゅんとうつむく。
 わたしはなんだか可哀想になった。
 青司くんはこんなに素晴らしい絵を描けるのに。その技術があるのに。それをうまく発揮できないなんて……。

「なんか、今までのわたしみたい」
「え?」
「わたしもずっと描けなかった、って言ったじゃない? 筆を持つことすら昔を思い出して辛かったの。この間、青司くんに促されて、ようやく久しぶりに描いたけど。でも全然……へたっぴだし、また嫌になっちゃったよ」
「……」

 青司くんはハッとするとまた急に納戸に戻っていく。
 そしてとある絵を持ってきた。
 それは、わたしがこのあいだ描いた「青司くんの絵」だった。

「なっ! ちょ、ちょっと青司くん!? なんで今、それ持ってくるの……!」
「いいじゃないか。俺、これ本当に嬉しかったんだ。描けなくなったって言ってたのに……真白がためらいながらも俺を、描いてくれたんだから。全然下手なんかじゃないよ。最高だよ」
「そんな……」

 恥ずかしくって、もう目の前の人の顔がまともに見られない。

「ホントやめて。青司くん、それ、まだ完成させてないし……あんまり見てほしくないんだけど……」

 わたしが顔を熱くしてなおもそう言うと、青司くんはなぜかハッとなった。

「あ。そうか」
「え?」
「いや、真白が……苦手だと思っていてもこうして『俺の絵』を描いてもらえたんなら……。俺だって、『真白の絵』を描こうとしたら……」
「せ、青司くん?」
「そうだ。『真白の絵』を描こう!」
「えええっ?」

 青司くんは拳をにぎりしめると、また納戸に行ってしまった。
 今度持ってきたのは、水彩紙のブロック、鉛筆、パレット、筆、水入れ、タオル、そして水彩絵の具などの画材一式だ。
 それらを、新聞紙をしいたテーブルの上に並べていく。

「そうだ。俺の興味の沸くモチーフなら……」

 そして筆をとると、息つく間もなくわたしの絵を描きはじめる。

「や、やめて……!」

 わたしは自分の顔がだんだんと紙の上に表現されてくると、無性に恥ずかしくなってきた。 
 耐えきれなくなって、ついに店を飛び出す。
 胸には自分の描いた「青司くんの肖像画」を抱えて。だってこれをあそこに置いたままにはできない。

「わっ……!」

 玄関を開けるとすぐ外に業者の人がいた。
 危うくぶつかりそうになって頭を下げる。

「す、すみません!」
「え? ああ……おはようございます」

 たしか今日はケーキを冷蔵するショーケースが届く手筈になっていたはずだ。
 業者の人たちはびっくりした様子だったが、わたしはかまわず逃げ出した。

 絵を描くことに集中していた青司くんがようやく気付いたのか、背後から「真白!」と叫ぶ声がする。
 でも、たぶん追いかけてはこないだろう。
 業者の人に対応しなきゃならないからだ。

 ごめんね、青司くん。

 家に帰るとわたしは自室に駆け込み、もう一度自分の描いた絵をじっくりと見直した。

「全然、だめだ……」

 本気で描いてないってすぐわかる。
 デッサンも微妙に狂ってるし、なにより青司くんの良さが全く表現しきれていない。

「青司くんがわたしをちゃんと描こうとしたんだ……わたしも、それに応えられるようにしないと……」

 わたしは押入れを開けると、奥の方にしまっていた段ボールを引っ張り出した。
 そこには十年前に封印したものが全て放り込まれている。

「まずは下書きだけでもちゃんとやり直さないとね……」

 箱の中から鉛筆を探し出し、わたしは自分の机に向かう。
 記憶の中の、青司くんの姿を思い浮かべた。昔の青司くんではなく、今の青司くんを。
 そして、一心不乱に鉛筆を走らせた。

 気が付くともうバイト先に行かなくてはならない時間だった。

「いけない。早く行かないと……」

 立ち上がったそのとき、ちょうどスマホの着信音が鳴った。
 青司くんからかと思ったら、違った。
 それは紅里あかりからのメールだった。

『真白、話があるの。今日空いてる時間ある?』

 いきなり用件を伝えて来るなんてよっぽどだ。
 どうしたんだろう。
 いつもはお互いの近況を報告し合ったりするくらいなのに。なにか重要な話があるのだろうか。

『うん。バイトが終わってからで、いいかな?』
『いいよ。じゃあ終わり次第、駅前の公園で待ってるから。また連絡して』

 駅前の、公園? 
 え、どういうこと? 電話で話すんじゃなくって? 実際に会う、って……。
 だって今、紅里は東京で働いているはずじゃ。あっちで一人暮らしをしているはずなのにどうして……?

 地元に帰ってくるのは年に数回、お盆や正月のときぐらいだ。
 それなのに、いったいどうしたんだろう。

「え? まさか。紅里、帰ってきてるの……?」

 わたしは動揺する心を必死で抑えつけながら、バイトに行く準備をはじめた。


 ※ ※ ※ ※ ※


 その日はあまり仕事に身が入らなかったけれど、どうにか一日をやり終えた。
 タイムカードを切って、店を出る。
 駅前の公園へは自転車でわずか数分の距離だ。

 なんだか……ペダルをこいでいても胸がどきどきして落ち着かない。
 いい報告だといい。
 でも、なんとなく反対の気がする。

 加輪辺駅まで来ると、すぐ南にある公園へと向かった。
 ここには家の前のような小さな川が流れていて、遊水地みたいなとこもある。わりと広い公園だ。
 駅前はロータリーしかないため、待ち合わせはみんなこの公園内と決まっていた。

 自転車で入っていくと、すぐ手前のベンチに紅里が座っている。

「あ、紅里」
「真白……」

 声をかけると紅里はすぐに立ち上がって手を振ってくれた。
 でもその表情はどことなく暗い。

「どうしたの? いつ、戻ってきたの?」
「……そのことについて、話があって」
「あ、うん」

 わたしはベンチの側に自転車を停めると、紅里の横に座った。
 傾いた日が紅里の顔に影を落としている。

「あのね、あたし……」
「うん」
「実は……半月前に仕事を辞めてたんだ」
「え!? 仕事を、辞めた?」

 半月前……。
 そんなの全然知らなかった。だって紅里は……ついこの前まで仕事の愚痴をメールで言ってたくらいなのに。

「ごめん、ずっと言い出せなかったの。長年憧れてた広告代理店だったから……どうしても辞めたくなくて。だからずっと、我慢して戦ってきたんだけど……でも、やっぱり耐え切れなくなっちゃって。でも、真白にはなんか知られたくなくて……ごめん」
「うん。うん……」

 紅里はそれこそ、学生の頃からその会社で働きたいっていつも言っていた。
 そこでいろんな表現をしてみたいんだって、いつも夢と希望に満ちあふれていた。
 だから、晴れてそこに入社できたときには、他の友人たちと一緒に盛大にお祝いしたのに。

 ……そこを辞めてしまっただなんて。

 愚痴はいつも聞かされていたから、きっとその件だろう。
 なんでも上司とうまくいってなかったとか。

 わたしは東京の大学に行くことも、一人暮らしすることも、希望の会社に就職することも、しようとすらしなかったので、紅里がそれを傍で全部かなえていくのをすごいと思っていた。
 その人生をうらやましいと思ったことも一度や二度ではない。

 わたしには、それは全部できなかったことだから。
 だから、そんな友人をわたしは精一杯応援してきた。
 
 でも……だからこそ、紅里はわたしに言い出せなかったんだろう。
 夢が破れたことを。
 わたしが同じ立場だったとしても、やっぱりうまく言い出せないと思う。

「ごめんね。もうとっくに辞めてたのに、まだ働いてるみたいな嘘ついちゃって」
「ううん。言い出しにくかったなら……仕方ないよ」
「ありがと。でも、皮肉だよね。あたしは真白と違って前に進んでたつもりだったのに……こんなことになっちゃってさ」
「え……?」

 言い方に、なんだかとげがあるような気がした。
 まさかと思って見ると、紅里は自嘲するように苦笑していた。

「最近、真白にメールで言ってたじゃない? わたし、えらそうにさ。けじめつけろ、なんて」
「あ。ああ、うん……」
「けじめつけられてなかったのは、あたしの方だった」

 紅里は泣き笑いみたいな表情で言う。

「あたしね、実は……ずっと青司くんが好きだったの」
「えっ!?」
「でもその気持ちをふっきるために……無理やり前を向いたんだ。そうできたのは……たぶん真白ほど、青司くんのことを好きでい続けられなかったからだと思う。でも、それは……けじめをつけたフリだった」

 衝撃的な発言のはずなのに、今のわたしはそれを不思議と穏やかに聞けていた。
 きっと、心のどこかで分かっていたのだと思う。
 だって、あの頃のお絵かき教室ではみんな青司くんを特別視していた。だから、紅里もそういう想いを抱いていたとしても、不思議じゃない。

 ただ、わたしに今まで黙っていたということは、それは紅里なりの優しさだったのだと思った。
 わたしはいつも自分の気持ちにばかり振り回されていて、周りを思いやる余裕なんてなかった。
 誰かを傷つけてばかりで、いっこうに成長できなくて。

 だからもし、そのときのわたしがそれを聞いていたら、きっともっとひどい有り様になっていたと思う。

「あたし、青司くんが帰ってきたって知って、何度か見に行ったんだ。でも……そこにはすでに真白がいた。真白と仲良さそうにしている青司くんも……。あたしはそれを見て、いままでの生き方を初めて後悔したよ。自分の心に嘘をついていたって気づいたんだ。でも後悔するなんて資格、あたしにはない。全部自分で選んだことなんだから」
「紅里……」
「真白、ごめんね。醜いでしょ? 嘘ばっかりで……。こんなんで親友だなんて、笑っちゃうよね。親友失格だよ。いいよ、笑っても……。笑われた方がいっそすっきりする」

 わたしはそう言ってうつむいている紅里の頬を、気付いたらはたいていた。
 ビクッとして顔を上げる紅里。

「ま、真白……?」
「ごめん。でも、そんな……そんなふうに言わないでよ。親友失格だなんて。誰だって、話したくない思いはあるよ。わたしだって……わたしだって紅里に黙ってることあるもん。黄太郎のこと、とか……」
「え? 黄太郎?」
「そう」

 わたしは紅里に、かつて黄太郎と付き合っていたことを明かした。
 たった一週間だったけれど。
 それでも、まったくその件を話したことがなかったので紅里は驚いていた。

「ああそう。そうだったんだ……あー、たしかに一時期、あんたたちが変な空気だったときあったもんねえ」
「そう、それ。たぶんそれ別れたばっかりのときだったと思う……」
「そっかあ。うん、別にどうでもいいよ。だって何にもなかったんでしょ」
「うん……。てか紅里、怒らないの?」
「え。何が?」
「だって……ずっと内緒っていうか、話したことなかったから……」
「そんな、怒らないよー。そんなら真白こそ。あたしのこと、怒らないの? あんたの大事な人を、あたしもずっと好きだったんだよ?」

 紅里はそう言いつつ、とても不安そうな顔をしていた。
 わたしは真面目な顔で言う。

「怒らないよ。むしろ……わたしが無神経だった。ごめん。なんにも知らなくて……わたしばっかり、好き好き言ってたよね。だから……紅里は余計言えなかったんじゃないの?」
「あー、まあね。でも、あの時はあれで良かったんだよ。自分と真白は違うんだってそう思えて、最終的には自分に発破かけられたんだから。真白には悪かったけど……わたしは恋愛以外でもどうしてもやりたいことがあったからさ」
「そう。それなんだよね。わたしにはそれが、すごくうらやましかった……」
「実際夢は叶えられたけどね。でも、結局最後は失敗しちゃった」
「失敗、なんかじゃないよ」
「え?」

 きょとんとする紅里に、わたしは静かにそう告げる。

「失敗なんかじゃない」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

秘密部 〜人々のひみつ〜

ベアりんぐ
ライト文芸
ただひたすらに過ぎてゆく日常の中で、ある出会いが、ある言葉が、いままで見てきた世界を、変えることがある。ある日一つのミスから生まれた出会いから、変な部活動に入ることになり?………ただ漠然と生きていた高校生、相葉真也の「普通」の日常が変わっていく!!非日常系日常物語、開幕です。 01

ガラスの世代

大西啓太
ライト文芸
日常生活の中で思うがままに書いた詩集。ギタリストがギターのリフやギターソロのフレーズやメロディを思いつくように。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ノイジーガール ~ちょっとそこの地下アイドルさん適性間違っていませんか?~

草野猫彦
ライト文芸
恵まれた環境に生まれた青年、渡辺俊は音大に通いながら、作曲や作詞を行い演奏までしつつも、ある水準を超えられない自分に苛立っていた。そんな彼は友人のバンドのヘルプに頼まれたライブスタジオで、対バンした地下アイドルグループの中に、インスピレーションを感じる声を持つアイドルを発見する。 欠点だらけの天才と、天才とまでは言えない技術者の二人が出会った時、一つの音楽の物語が始まった。 それは生き急ぐ若者たちの物語でもあった。

【完結】美人の先輩と虫を食う

赤崎火凛(吉田定理)
ライト文芸
昆虫食 × 大学生ラブコメ 読めばゴキブリが食べたくなる?  僕(渡辺)は何の取り柄もない大学1年生。同じ学科の人に話しかけることもできないし、自分からサークルに入る勇気もなく、入学早々ぼっちになっていた。だが、廊下でクモを捕まえようとしている美人だが変人の先輩と出会う。カニを食べさせてもらえると思ってホイホイ付いていくと、先輩は捕まえたクモを茹でで食べ始めた。ここは虫を捕まえて食べるサークル『虫の輪』だったのだ。このまま何のサークルも入れずに四年間をぼっちで過ごすくらいなら、と思って、僕はそのサークルに入ることにしたが……。  これは、僕と残念美人の先輩の、恋の物語。 *実在する団体や人物とは無関係です。 *吉田定理作。「第15回GA文庫大賞」最終候補作を修正した作品です。 *カクヨムにも掲載中。

とべない天狗とひなの旅

ちはやれいめい
歴史・時代
人間嫌いで悪行の限りを尽してきた天狗、フェノエレーゼ。 主君サルタヒコの怒りを買い、翼を封じられ人里に落とされてしまう。 「心から人間に寄り添い助けろ。これ以上悪さをすると天狗に戻れなくなるぞ」 とべなくなったフェノエレーゼの事情を知って、人里の童女ヒナが、旅についてきた。 人間嫌いの偏屈天狗と、天真爛漫な幼女。 翼を取り戻すため善行を積む旅、はじまりはじまり。 絵・文 ちはやれいめい https://mypage.syosetu.com/487329/ フェノエレーゼデザイン トトさん https://mypage.syosetu.com/432625/

月曜日の方違さんは、たどりつけない

猫村まぬる
ライト文芸
「わたし、月曜日にはぜったいにまっすぐにたどりつけないの」 寝坊、迷子、自然災害、ありえない街、多元世界、時空移動、シロクマ……。 クラスメイトの方違くるりさんはちょっと内気で小柄な、ごく普通の女子高校生。だけどなぜか、月曜日には目的地にたどりつけない。そしてそんな方違さんと出会ってしまった、クラスメイトの「僕」、苗村まもる。二人は月曜日のトラブルをいっしょに乗り越えるうちに、だんだん互いに特別な存在になってゆく。日本のどこかの山間の田舎町を舞台にした、一年十二か月の物語。 第7回ライト文芸大賞で奨励賞をいただきました。ありがとうございます、

ブエン・ビアッヘ

三坂淳一
ライト文芸
タイトルのブエン・ビアッヘという言葉はスペイン語で『良い旅を!』という決まり文句です。英語なら、ハヴ・ア・ナイス・トリップ、仏語なら、ボン・ヴォアヤージュといった定型的表現です。この物語はアラカンの男とアラフォーの女との奇妙な夫婦偽装の長期旅行を描いています。二人はそれぞれ未婚の男女で、男は女の元上司、女は男の知人の娘という設定にしています。二人はスペインをほぼ一ヶ月にわたり、旅行をしたが、この間、性的な関係は一切無しで、これは読者の期待を裏切っているかも知れない。ただ、恋の芽生えはあり、二人は将来的に結ばれるということを暗示して、物語は終わる。筆者はかつて、スペインを一ヶ月にわたり、旅をした経験があり、この物語は訪れた場所、そこで感じた感興等、可能な限り、忠実に再現したつもりである。長い物語であるが、スペインという国を愛してやまない筆者の思い入れも加味して読破されんことを願う。

処理中です...