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<水無瀬葉月>
「お前……遠足も行ったことなかったのか……」
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『『葉月。お前の行きつく先は地獄だよ。今、きちんと説明しないせいで、お前の人生は皆に嫌われて終わる。それでいいのか?』』
ぴょん太の声がした。
僕が居るのはカウンターだ。カウンターの後ろには調理場があって、その向こうに更衣室がある。
ぴょん太が居るのは更衣室のロッカーの中だ。
到底聞こえる距離じゃないのにはっきりと聞こえてきた。
奥さんはぴょん太の声に気が付いてない。料理に集中してるからかな? なんにせよ、聞かれなくてよかった。
心の中で、答える。
(いいんだよ。今、僕は生活ができて幸せなんだ。
僕が汚いって話してしまったら、ここをクビになる。
クビになったら路頭に迷って飢え死にするしか無くなる。そんなのは嫌だ)
僕が生きてるだけで人に迷惑が掛かるって知ってる。
ここで働いているだけで沢山のお客様を汚す。
遼平さんの傍にいるだけで遼平さんを汚す。
それを知ってるのに、浅ましくも、僕は、ギリギリまで生きていたい。
幸せなんだ。
十八年生きてて、初めて、毎日が幸せなんだ。
一秒でも長くこの幸せを噛み締めたい。
最期に、皆に嫌われて終わっていい。
死んでから地獄に落ちたっていい。
今は、
――――今だけは。
働いてお給料を貰って生活して、遼平さんと一緒に布団で寝れる毎日をなくしたくない。
ピリリリリ。と、タイマー音が鳴った。
時間だ。タイムカードを押さなきゃ。
このお店にはタイムカードというシステムがあって、毎日、10時と14時に押さなきゃ駄目って言われてた。
これを忘れたらお給料をもらえないのだ。
丁度買いに来てくれてたタクシー運転手のおじさんにお弁当を渡してから、タイムカードを押す。
こっそりとこの音が楽しみだったりする。
僕の仕事が終わるのは18時半。このタイマー音が鳴ると、もう一踏ん張りである。
ここまでくれば、残りの時間はあっという間だ。
この日も、すぐに4時間半が過ぎ去り、無事に一日の仕事が終わった。
「お先に失礼します」
椅子に座って雑誌を見ている奥さんに頭を下げて従業員出入り口を開く。
疲れたなぁ……。体中くたくただ。
あ、でも、今日は家に帰れば遼平さんがいるんだった!
誰かが家で待っててくれるって嬉しいな。
早く帰ってご飯を作ろう。
何にしようかな。冷蔵庫に何が残ってたっけ。遼平さん、豚汁と煮付け食べてくれたかな?
あれこれ考えながらドアを閉めると――――。
「葉月」
重たく響く優しい声が僕を呼んだ。
「遼平さん……!?」
遼平さんが迎えに来てくれてた!
余りにも嬉しくて飛びつきそうになってしまった。
「お仕事お疲れ様。変な客に絡まれたりしなかったか? 困ったことがあったら何でも相談してくれよ」
「大丈夫だよ。皆優しい人ばかりだから……。でも、心配してくれてありがとう!」
あ、そうだ、遼平さんに聞かなきゃならないんだった。
「遼平さん、女子高生好き?」
「いきなりどうした。すげー質問だな。好きとか嫌いとか考えたこともねーよ。怖がられるから近づかないように気をつけてるけどな」
「女子高校生のお客様が遼平さんを紹介してほしいって」
「なるほど、そういう意味か。お断りしなさいね。おじさん、若い女の子と何を話せばいいかわからないから」
遼平さんのどこがおじさんなんだろ。正確な年齢は知らないけど、どう見てもまだ二十代前半なのに。
「凄く美人だよ」
「この世で一番の美人が俺の隣にいるから興味無いよ」
隣?
遼平さんの横を覗きこむ。ガードレールがあるばかりだ。
「ガードレールが美人……???」
「違う違う」
「電信柱だね!」
「納得するな。道路の設置物を美人って言うような特殊な性癖はねーよ」
電信柱にポスターでも貼ってるのかと思ったんだけど、違ったのかな。
「お前だよ。葉月君がこの世で一番美人だ」
「ええ……?」
「だから露骨に不満そうな顔をするなって」
露骨なお世辞を言うからだよ。遼平さんの冗談は好きだけど、容姿に関しての冗談にはどうしても笑えない。
「ファミレスでモデルみたいって言われたろ。お前は綺麗だよ」
あれは服の効果だよ。
「納得してないみたいだな。葉月はもう少し自分自身を評価しないと」
自分自身を評価なんて出来ないよ。
返事も見付からずに口を噤むと、ぷに、と、頬を突かれた。
話題を変えたいなぁ……、そうだ!
「来週の月曜日は祝日だからお休みを貰えたんだよ!」
僕、知らなかったんだけどホコホコ弁当は祝日がお休みだったんだ。なんだか得した気分だ。
「知らなかったのか? 昔から休みだぞあそこは。そのつもりで一泊の予定を組んだんだからな」
「え」
「明日は、海に行って、お泊りです」
「ええええ!? お、おとまり!? ぼく、お金無い」
遼平さんにプレゼントを買ったから余分なお金はまるでない。一泊旅行なんて無理だ!
「金のことは言うな。俺に全部任せてくれ」
「え、ぅ」
「葉月はただ付いてきてくれればいいんだ」
「ぅ、ぅ……でも、申し訳ないよ……」
「どうして。俺がお前と一緒に遊びたいんだ。遊んでくれるって約束しただろ?」
そうだけど……。
遼平さんなら、僕なんかじゃなく可愛い女の子――それこそ、愛美さんや由紀さんとでも遊びにいけるのに。
『『遼平さんの本当の目的は、遊びじゃない』』
リックの中でぴょん太が呟いた。
遼平さんを見上げる。
聞こえて無かったのか遼平さんは反応しなかった。
ひょっとしたら、聞こえていてとぼけてるのかも知れない。
ぴょん太の言うように、遼平さんの本当の目的が『遊び』じゃなく、『人に言えないような大変なこと』ならこんな道の真ん中で言えるはずもないから。
「そういや、ぴょん太は生きてるか? リュックに詰め込んでるから怒ってるんじゃないか? おーい、ぴょん太?」
遼平さんがリックを撫でて笑う。
ぴょん太は答えなかった。
「あれ、随分静かだな。まぁいいか。市場に寄って帰るぞ。お泊りに必要な物を揃えよう」
お泊まりに必要な物?
「何が必要かな? 歯ブラシや歯磨き粉は家のを持って行きたいけど変?」
旅行の為に新品を買うのはもったいない気がしてしまう。貧乏だから。
「歯ブラシはホテルに備え付けのがあるからいらないよ。それよりもっと大事なのがあるだろ?」
「大事なの……?」
なんだろう?
首を傾げる僕に、遼平さんは人差し指を立てた。
「おやつだよ。金額は三百円までな」
「おやつ! そっか、必要だよね。なんだか遠足みたいで楽しい……! 生まれて初めての遠足だよ……!!」
あれ?
遼平さんが道端にしゃがみこんでしまった。
「どうしたの?」
「お前……遠足も行ったことなかったのか……」
俯き自分の額に手を当て唸るように言う。
「う、うん……」
自慢じゃないけど自慢にもならないけど、遠足にも社会見学にも宿泊学習にも行ったことない。
学校は勉強をする場所だっていわれてた。一度、遠足があるって話したことがあるけど『家事もせず遊びに行きたいなんて何様のつもりだ』ってお父さん、お母さん、兄、弟にまで入れ替わり立ち変り何時間も怒られたからそれきり二度と話しはしなかった。
何時間も正座させられ怒鳴られるぐらいなら、行事を諦めて家事をしてたほうが楽だったし。
「よし! 俺が連れて行ってやるからな。今度は山に行こうな! 行ってみたい山はあるか? いっそ富士山に登るか? 屋久島でもいいな。遠足できなかった分を取り戻せるような濃い原生林に行くぞ!」
「えええ!? 屋久島って鹿児島の島だよね? 樹齢が千年以上の木があるって聞いたことある……」
「そうだ。テント担いで登ろう。大学時代に買ったのがあるんだ。今度見せてやる」
「テント持ってるの!? す、凄い、サバイバルだ」
「アウトドアと言ってくれ」
「遼平さんってできないことなんて無いんだね」
「一杯あるだろ。まず料理だな。そして裁縫。アイロン掛けも下手くそだしな……って、しまった、市場を通り過ぎちまった。行き先変更だ。スーパーで買い物しよう」
「うん」
遼平さんと一緒だと時間の流れが早いなあ。いつの間に通り過ぎてたんだろ。
時間のせいかスーパーは混み合ってた。買い物をするお母さん達の間を縫い、お菓子売り場へと向かう。
「おー、意外と駄菓子も揃ってるんだな」
「どれにしよう……!」
お菓子、と一口に言っても種類は様々だ。
スナック菓子から、ガム、飴、チョコレートまで。
「俺はコレにするかな」
遼平さんが選んだのはとんがりコーンと、つぶつぶがついた苺のポッキーだった。
「遼平さん……」
とんがりコーンは180円、苺ポッキー150円。300円を越えている。
「葉月。こう言う時の魔法の言葉を教えてやる。『端数は切り捨て』だ。もしくは『四捨五入』でもいい。先生に問い詰められたら『タイムサービスで大安売りでした』なんていうのもありだ。覚えておけ」
「う、うん……」
ひょっとして、遼平さんの小学校時代の担任の先生は大変な思いをしてらっしゃったんじゃないだろうか。
「僕は、これにしようかな……」
僕が選んだのは、三角のパッケージに入った苺ミルク飴(30円)、四角の小さなグミの詰め合わせ(30円)、そして、一個10円の、中にチョコレートが入ったマシュマロを4個。
「葉月……300円に全く届いて無いぞ……。こんなときまできちんとした奴だなあ。遠足のおやつの上限なんて破るためにあるようなもんなのに」
それは違うと思いますですよ。
反論はしないまま、遼平さんが持ってくれてた買い物カゴにお菓子を入れたのでした。
ぴょん太の声がした。
僕が居るのはカウンターだ。カウンターの後ろには調理場があって、その向こうに更衣室がある。
ぴょん太が居るのは更衣室のロッカーの中だ。
到底聞こえる距離じゃないのにはっきりと聞こえてきた。
奥さんはぴょん太の声に気が付いてない。料理に集中してるからかな? なんにせよ、聞かれなくてよかった。
心の中で、答える。
(いいんだよ。今、僕は生活ができて幸せなんだ。
僕が汚いって話してしまったら、ここをクビになる。
クビになったら路頭に迷って飢え死にするしか無くなる。そんなのは嫌だ)
僕が生きてるだけで人に迷惑が掛かるって知ってる。
ここで働いているだけで沢山のお客様を汚す。
遼平さんの傍にいるだけで遼平さんを汚す。
それを知ってるのに、浅ましくも、僕は、ギリギリまで生きていたい。
幸せなんだ。
十八年生きてて、初めて、毎日が幸せなんだ。
一秒でも長くこの幸せを噛み締めたい。
最期に、皆に嫌われて終わっていい。
死んでから地獄に落ちたっていい。
今は、
――――今だけは。
働いてお給料を貰って生活して、遼平さんと一緒に布団で寝れる毎日をなくしたくない。
ピリリリリ。と、タイマー音が鳴った。
時間だ。タイムカードを押さなきゃ。
このお店にはタイムカードというシステムがあって、毎日、10時と14時に押さなきゃ駄目って言われてた。
これを忘れたらお給料をもらえないのだ。
丁度買いに来てくれてたタクシー運転手のおじさんにお弁当を渡してから、タイムカードを押す。
こっそりとこの音が楽しみだったりする。
僕の仕事が終わるのは18時半。このタイマー音が鳴ると、もう一踏ん張りである。
ここまでくれば、残りの時間はあっという間だ。
この日も、すぐに4時間半が過ぎ去り、無事に一日の仕事が終わった。
「お先に失礼します」
椅子に座って雑誌を見ている奥さんに頭を下げて従業員出入り口を開く。
疲れたなぁ……。体中くたくただ。
あ、でも、今日は家に帰れば遼平さんがいるんだった!
誰かが家で待っててくれるって嬉しいな。
早く帰ってご飯を作ろう。
何にしようかな。冷蔵庫に何が残ってたっけ。遼平さん、豚汁と煮付け食べてくれたかな?
あれこれ考えながらドアを閉めると――――。
「葉月」
重たく響く優しい声が僕を呼んだ。
「遼平さん……!?」
遼平さんが迎えに来てくれてた!
余りにも嬉しくて飛びつきそうになってしまった。
「お仕事お疲れ様。変な客に絡まれたりしなかったか? 困ったことがあったら何でも相談してくれよ」
「大丈夫だよ。皆優しい人ばかりだから……。でも、心配してくれてありがとう!」
あ、そうだ、遼平さんに聞かなきゃならないんだった。
「遼平さん、女子高生好き?」
「いきなりどうした。すげー質問だな。好きとか嫌いとか考えたこともねーよ。怖がられるから近づかないように気をつけてるけどな」
「女子高校生のお客様が遼平さんを紹介してほしいって」
「なるほど、そういう意味か。お断りしなさいね。おじさん、若い女の子と何を話せばいいかわからないから」
遼平さんのどこがおじさんなんだろ。正確な年齢は知らないけど、どう見てもまだ二十代前半なのに。
「凄く美人だよ」
「この世で一番の美人が俺の隣にいるから興味無いよ」
隣?
遼平さんの横を覗きこむ。ガードレールがあるばかりだ。
「ガードレールが美人……???」
「違う違う」
「電信柱だね!」
「納得するな。道路の設置物を美人って言うような特殊な性癖はねーよ」
電信柱にポスターでも貼ってるのかと思ったんだけど、違ったのかな。
「お前だよ。葉月君がこの世で一番美人だ」
「ええ……?」
「だから露骨に不満そうな顔をするなって」
露骨なお世辞を言うからだよ。遼平さんの冗談は好きだけど、容姿に関しての冗談にはどうしても笑えない。
「ファミレスでモデルみたいって言われたろ。お前は綺麗だよ」
あれは服の効果だよ。
「納得してないみたいだな。葉月はもう少し自分自身を評価しないと」
自分自身を評価なんて出来ないよ。
返事も見付からずに口を噤むと、ぷに、と、頬を突かれた。
話題を変えたいなぁ……、そうだ!
「来週の月曜日は祝日だからお休みを貰えたんだよ!」
僕、知らなかったんだけどホコホコ弁当は祝日がお休みだったんだ。なんだか得した気分だ。
「知らなかったのか? 昔から休みだぞあそこは。そのつもりで一泊の予定を組んだんだからな」
「え」
「明日は、海に行って、お泊りです」
「ええええ!? お、おとまり!? ぼく、お金無い」
遼平さんにプレゼントを買ったから余分なお金はまるでない。一泊旅行なんて無理だ!
「金のことは言うな。俺に全部任せてくれ」
「え、ぅ」
「葉月はただ付いてきてくれればいいんだ」
「ぅ、ぅ……でも、申し訳ないよ……」
「どうして。俺がお前と一緒に遊びたいんだ。遊んでくれるって約束しただろ?」
そうだけど……。
遼平さんなら、僕なんかじゃなく可愛い女の子――それこそ、愛美さんや由紀さんとでも遊びにいけるのに。
『『遼平さんの本当の目的は、遊びじゃない』』
リックの中でぴょん太が呟いた。
遼平さんを見上げる。
聞こえて無かったのか遼平さんは反応しなかった。
ひょっとしたら、聞こえていてとぼけてるのかも知れない。
ぴょん太の言うように、遼平さんの本当の目的が『遊び』じゃなく、『人に言えないような大変なこと』ならこんな道の真ん中で言えるはずもないから。
「そういや、ぴょん太は生きてるか? リュックに詰め込んでるから怒ってるんじゃないか? おーい、ぴょん太?」
遼平さんがリックを撫でて笑う。
ぴょん太は答えなかった。
「あれ、随分静かだな。まぁいいか。市場に寄って帰るぞ。お泊りに必要な物を揃えよう」
お泊まりに必要な物?
「何が必要かな? 歯ブラシや歯磨き粉は家のを持って行きたいけど変?」
旅行の為に新品を買うのはもったいない気がしてしまう。貧乏だから。
「歯ブラシはホテルに備え付けのがあるからいらないよ。それよりもっと大事なのがあるだろ?」
「大事なの……?」
なんだろう?
首を傾げる僕に、遼平さんは人差し指を立てた。
「おやつだよ。金額は三百円までな」
「おやつ! そっか、必要だよね。なんだか遠足みたいで楽しい……! 生まれて初めての遠足だよ……!!」
あれ?
遼平さんが道端にしゃがみこんでしまった。
「どうしたの?」
「お前……遠足も行ったことなかったのか……」
俯き自分の額に手を当て唸るように言う。
「う、うん……」
自慢じゃないけど自慢にもならないけど、遠足にも社会見学にも宿泊学習にも行ったことない。
学校は勉強をする場所だっていわれてた。一度、遠足があるって話したことがあるけど『家事もせず遊びに行きたいなんて何様のつもりだ』ってお父さん、お母さん、兄、弟にまで入れ替わり立ち変り何時間も怒られたからそれきり二度と話しはしなかった。
何時間も正座させられ怒鳴られるぐらいなら、行事を諦めて家事をしてたほうが楽だったし。
「よし! 俺が連れて行ってやるからな。今度は山に行こうな! 行ってみたい山はあるか? いっそ富士山に登るか? 屋久島でもいいな。遠足できなかった分を取り戻せるような濃い原生林に行くぞ!」
「えええ!? 屋久島って鹿児島の島だよね? 樹齢が千年以上の木があるって聞いたことある……」
「そうだ。テント担いで登ろう。大学時代に買ったのがあるんだ。今度見せてやる」
「テント持ってるの!? す、凄い、サバイバルだ」
「アウトドアと言ってくれ」
「遼平さんってできないことなんて無いんだね」
「一杯あるだろ。まず料理だな。そして裁縫。アイロン掛けも下手くそだしな……って、しまった、市場を通り過ぎちまった。行き先変更だ。スーパーで買い物しよう」
「うん」
遼平さんと一緒だと時間の流れが早いなあ。いつの間に通り過ぎてたんだろ。
時間のせいかスーパーは混み合ってた。買い物をするお母さん達の間を縫い、お菓子売り場へと向かう。
「おー、意外と駄菓子も揃ってるんだな」
「どれにしよう……!」
お菓子、と一口に言っても種類は様々だ。
スナック菓子から、ガム、飴、チョコレートまで。
「俺はコレにするかな」
遼平さんが選んだのはとんがりコーンと、つぶつぶがついた苺のポッキーだった。
「遼平さん……」
とんがりコーンは180円、苺ポッキー150円。300円を越えている。
「葉月。こう言う時の魔法の言葉を教えてやる。『端数は切り捨て』だ。もしくは『四捨五入』でもいい。先生に問い詰められたら『タイムサービスで大安売りでした』なんていうのもありだ。覚えておけ」
「う、うん……」
ひょっとして、遼平さんの小学校時代の担任の先生は大変な思いをしてらっしゃったんじゃないだろうか。
「僕は、これにしようかな……」
僕が選んだのは、三角のパッケージに入った苺ミルク飴(30円)、四角の小さなグミの詰め合わせ(30円)、そして、一個10円の、中にチョコレートが入ったマシュマロを4個。
「葉月……300円に全く届いて無いぞ……。こんなときまできちんとした奴だなあ。遠足のおやつの上限なんて破るためにあるようなもんなのに」
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反論はしないまま、遼平さんが持ってくれてた買い物カゴにお菓子を入れたのでした。
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