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<水無瀬葉月>
眼鏡を没収されてしまった
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差し出した手に、茶髪さんが丸めた手を乗せる。
「ワン」
「ちが、メガネを、その」
「メガネは没収。あんなダセーの掛けてちゃ駄目よ。変に目立って注目浴びちゃうから」
え!? そうなんですか!?
「俯くのもやめなさいね。葉月君だって、挙動不審な人がいたら目に付いちゃうでしょ。普通が一番。堂々としなさい」
言われて見ればそのとおりだ……。
恐る恐る、顔を上げる。
でも人の目を見るのは怖いから、視線は斜め下のままで。
「そだ、自己紹介してなかったね。お兄さんはこういう者です」
名刺を差し出され、受け取る。
透明なプラスチックの名刺には、スタイリスト『谷 静』と書かれていた。
「谷さん……」
「しずかちゃんでいいよ。国民的ヒロインと同じ名前だから覚えやすいでしょ」
そう言われるとすごく覚えやすいな……。
「ここで一番の腕を自負してるスタイリストです。長い付き合いになると思うからヨロシクな」
長い付き合い?
きょとんとしてしまった僕を他所に遼平さんが言う。
「葉月をここの仕事に関わらせる気はないぞ。俺の大事な友達だからな」
「はぁ!? マジで言ってんの!?」
「大マジだよ」
「いいけどさ……勿体ないねぇ」
「相変わらず、大切なものは地面に埋めてしまう犬のような性格をしてますね。貴方は」
静さんと二本松さんが顔を顰める。
「ほっとけ。服も頼む」
「はいはい。わかりましたよ……。こっちおいで、葉月君」
手招きされて、静さんの後ろを付いていく。
続いてる隣室には、色とりどりの洋服が掛けられていた。ざっと数えるだけでも千枚近くはありそうだ。
こんな大量の洋服始めて見た。
「うわぁ、細いねー。肩なんかペラッペラじゃない。飯食ってる?」
「うわ!」
肩を触られ背中を摩られて横に飛びのく。
また、頭を壁にぶつけ脳にダイレクトに衝撃が入って頭を抱えて蹲った。
「触るなって言っただろうが! 大丈夫か? 葉月」
うぅ、目に星が飛びました……。
「これ、悪いのはオレじゃなくね? 過剰反応しすぎだろ。もっと人に慣れなさいよ。このままじゃ日常生活も危ないでしょ。弁当屋なら油とかあるんだろ? こんな感じで飛び跳ねてたら怪我するよ」
「……。それは俺も思うんだよな……」
どうにか立ち上がった僕を、頭一つ以上高い位置から遼平さんが見下ろしてくる。
「?」
腕の下に僕より1.5倍は太い腕が回って――体が持ち上がるぐらいに抱き上げられた!
「――――――!!」
強く抱き寄せてくる腕が背中に食い込む。
「遼平さん……!!?」
「ちょっとがんばれ」
ちょっとってどれぐらい!?
(ぁ……、ぅ……)
心臓がガンガン鳴って足も腕も震えてくる。
香水だろうか。爽やかな遼平さんの香りに眩暈がした。
暖かい、気持ちいい。顔に当たる服の感触までキモチイイ――。
「んぅ……」
遼平さんがようやくガバって引き離してくれた。
あ、足がガクガクする。血が頭に上って顔が熱いのに貧血みたいに目が回る……!
「危なかった! 後二秒で通報するところでした」
二本松さんが携帯を握っていた。手に力が入りすぎているのかミシリと携帯が軋んだ。
「なんでだよ!? 今の流れを見てたんなら、人に慣れさせるために葉月に触ったって判るだろ! つか110まで押してるじゃねーか」
「嫌がる青少年を無理矢理抱き締める変質者にしか見えませんでした。自重してください」
「は、反論できねえ……。気をつけます……」
遼平さんが歯を食いしばって言葉を呑む。
「とりあえずこんだけでいいか。葉月君、決まったから試着してみて」
「もっと可愛いのは無いんですか? ウサギのアップリケがついたような」
「あるわけねーでしょー。まっちゃんの可愛い物好きも重症だねぇ」
心臓が痛いぐらい鳴ってるよ……。おぼつかない足取りながらも言われるがまま着替え、建物を出て…………。
着てきた僕の服が無くなっているのに気が付いたのは、車が発進してからだった。
「ぼ、僕の服、メガネ!」
「処分させたぞ。変わりに、その服と、別に二着用意してあるからな」
「お金払わなきゃ……いくらですか!?」
「気にするな。俺からのプレゼントだから」
プレゼント!? この服、着心地が良い。明らかに上質で高そうなのに……!?
「それより飯にしよう。食べたい物はあるか?」
「た、食べたい物は特に無いけど……、ファミレスに行ってみたいです。ドリンクバーがあるところ」
「おう」
どうやら近くにあったらしく車はすぐに右折した。到着したレストランは僕でも知ってる有名なチェーン店だった。
「ただいま満席で、10分待ちとなっております」
とのことだったので、名前を書いて待つ。
店内は結構広くて、いろんな食べ物の匂いとさざなみみたいな人の話し声で満ちていた。
開いたソファに遼平さんと並んで座る。
ファミレスに入るのも生まれて初めてだ。
噂のドリンクバーにはどんな飲み物があるんだろう。コーラとお茶しか想像つかないな。
隣に座っていた遼平さんが、僕の頬を軽く摘んだ。
「なにニヤニヤしてるんだよ」
「ドリンクバーが楽しみで……!」
「ほんっとガキだなー」
「もう18だよ」
「触っても過剰反応しなくなったな」
「さっきのショックがまだ響いてるからだよ……。多分すぐもとに戻ると思う」
「戻ったらまたショック療法してやるからな」
「次は死ぬかもしれない……」
抱きつかれるのに慣れる気がしないよ。毎回失神してしまいそうだ。
カランコロン。
来客を告げるチャイムが鳴る。
入り口が一気に賑やかになった。甲高く喋りながら、女子高生の集団が入って来たのだ。
「うえー超混んでる」
「お昼だもん。しょうがなくね?」
「腹減ったー。早く席あかないかな」
我が物顔で入ってくる彼女たちに、僕は思わず俯いた。
派手な女子には碌な思い出がない。キモイって言われたり、ただ歩いてるだけでストーカー扱いされたり。目をあわさないに越したことはない。
「悠美、名前書いて」
「めんどくせーなもう。自分で書けばいーじゃん」
「うっわ、超綺麗な人いるー!」
「バカ、声でけーって。でもマジキレー。男かな? 女かな? 超小顔。アイドルっぽい」
「女に決まってんじゃん? 知らんけど」
「あ! アタシ、雑誌で見たことある。あの人モデルだよ」
「マジでぇ? あんたバカだから勘違いしてるだけじゃねーの?」
「マジだって。心愛に聞けば名前もわかるかも。画像送ろっと」
正面に座った女子高生が携帯を上げる。
――――!?
カメラが僕の方を向いてる!?
人の目が怖いのと写されるのが怖いのとで体が硬直した。
「はい、禁止ー」
大きな手が僕の顔の前に翳された。
「他人を撮影すんのはマナー違反だぞ。第一、こいつはモデルでも何でもない一般人だしな」
遼平さんだ。女子高生達を嗜めてくれる。
「やべ」
「ごめんなさい、つい。あんまり綺麗だから勘違いしちゃいましたー」
今、遼平さんに気が付いたのかな。慌てて携帯をバッグに入れて雑貨売り場に立って行った。
「あ、ありがとう遼平さん……、びっくりしたよ……!!」
「しまったな……。葉月が綺麗になりすぎたから周りの目が面倒になったぞ。これなら、元のままのお前でいさせたほうが良かったかも……」
綺麗……?
遼平さんは身内贔屓が過ぎるんじゃないかな。人に聞かれたら恥ずかしいからあまり言わないで欲しい。
「綺麗って実感が無いって顔してるな」
「うん。無いです。全然」
「どれだけ実感がなかろうが、今のが葉月に対する周りの評価だよ。自覚しろ」
「うーん……」
服装効果もあるんだろうな。この服、本当にモデルが着てるみたいに派手な服だから。魔法をかけられたシンデレラになった気分だ。
いつもの服に戻れば、いつもの僕に逆戻りする。地味で、女子高生に笑われて、奥さんにキノコみたいな髪型してって呆れられるのが、一番、僕に相応な、楽な生き方だ。
「陸王さま、どうぞ」
「はい」
ウエイトレスさんに案内された席は、ドリンクバーのまん前の席だった……!
「ご注文がお決まりになりましたらお呼びください」
「ありがとうございます」
差し出されたメニューを受け取って、開く。
うわー。メニューも一杯……!
何にしようかな……? う。どれも結構高い。
五百円ぐらいで食べられるものだとばかり……! パスタでも最低九百円もするよ。
「何にする?」
「うーうーうーうー……ホット……ケーキ……」
一番安いのがこれだったんだけどそれでも七百円。ドリンクバーを付けたら九百円! ドリンクバーは諦めよう……。
「それじゃ足りないだろ。今日は俺が奢ってやるんだから金は心配するな」
「……」
「奢られてばかりは嫌か?」
「その……、とても、ありがたいんだけど、初めて出来た友達の負担にはなりたくなくて……してもらうばっかりなのも、不安で」
遼平さんは自分のこと安月給だっていった。でも、あんなすごいオフィスビルに出入りするぐらいだ。僕とは安月給の感覚が違うんだろう。
ここの食費ぐらい簡単に出せるのかもしれない。それでも抵抗があった。
「してもらうばっかりじゃないぞ。実は、葉月にして欲しいことがあるから、先に恩を売っているんだ」
「え……!? 何? 僕にできることなら何でもするけど、できることなんて家事ぐらいしかないよ?」
まさかそんな企みがあったとは!
「今は内緒だ。ほら、遠慮せずにメニューを選びなおせ。細いんだから飯はしっかり食べておけ」
「じ、じゃあ、お言葉に甘えて……」
千円の海鮮ドリアと、ドリンクバーを注文させてもらったのだった……。
「ワン」
「ちが、メガネを、その」
「メガネは没収。あんなダセーの掛けてちゃ駄目よ。変に目立って注目浴びちゃうから」
え!? そうなんですか!?
「俯くのもやめなさいね。葉月君だって、挙動不審な人がいたら目に付いちゃうでしょ。普通が一番。堂々としなさい」
言われて見ればそのとおりだ……。
恐る恐る、顔を上げる。
でも人の目を見るのは怖いから、視線は斜め下のままで。
「そだ、自己紹介してなかったね。お兄さんはこういう者です」
名刺を差し出され、受け取る。
透明なプラスチックの名刺には、スタイリスト『谷 静』と書かれていた。
「谷さん……」
「しずかちゃんでいいよ。国民的ヒロインと同じ名前だから覚えやすいでしょ」
そう言われるとすごく覚えやすいな……。
「ここで一番の腕を自負してるスタイリストです。長い付き合いになると思うからヨロシクな」
長い付き合い?
きょとんとしてしまった僕を他所に遼平さんが言う。
「葉月をここの仕事に関わらせる気はないぞ。俺の大事な友達だからな」
「はぁ!? マジで言ってんの!?」
「大マジだよ」
「いいけどさ……勿体ないねぇ」
「相変わらず、大切なものは地面に埋めてしまう犬のような性格をしてますね。貴方は」
静さんと二本松さんが顔を顰める。
「ほっとけ。服も頼む」
「はいはい。わかりましたよ……。こっちおいで、葉月君」
手招きされて、静さんの後ろを付いていく。
続いてる隣室には、色とりどりの洋服が掛けられていた。ざっと数えるだけでも千枚近くはありそうだ。
こんな大量の洋服始めて見た。
「うわぁ、細いねー。肩なんかペラッペラじゃない。飯食ってる?」
「うわ!」
肩を触られ背中を摩られて横に飛びのく。
また、頭を壁にぶつけ脳にダイレクトに衝撃が入って頭を抱えて蹲った。
「触るなって言っただろうが! 大丈夫か? 葉月」
うぅ、目に星が飛びました……。
「これ、悪いのはオレじゃなくね? 過剰反応しすぎだろ。もっと人に慣れなさいよ。このままじゃ日常生活も危ないでしょ。弁当屋なら油とかあるんだろ? こんな感じで飛び跳ねてたら怪我するよ」
「……。それは俺も思うんだよな……」
どうにか立ち上がった僕を、頭一つ以上高い位置から遼平さんが見下ろしてくる。
「?」
腕の下に僕より1.5倍は太い腕が回って――体が持ち上がるぐらいに抱き上げられた!
「――――――!!」
強く抱き寄せてくる腕が背中に食い込む。
「遼平さん……!!?」
「ちょっとがんばれ」
ちょっとってどれぐらい!?
(ぁ……、ぅ……)
心臓がガンガン鳴って足も腕も震えてくる。
香水だろうか。爽やかな遼平さんの香りに眩暈がした。
暖かい、気持ちいい。顔に当たる服の感触までキモチイイ――。
「んぅ……」
遼平さんがようやくガバって引き離してくれた。
あ、足がガクガクする。血が頭に上って顔が熱いのに貧血みたいに目が回る……!
「危なかった! 後二秒で通報するところでした」
二本松さんが携帯を握っていた。手に力が入りすぎているのかミシリと携帯が軋んだ。
「なんでだよ!? 今の流れを見てたんなら、人に慣れさせるために葉月に触ったって判るだろ! つか110まで押してるじゃねーか」
「嫌がる青少年を無理矢理抱き締める変質者にしか見えませんでした。自重してください」
「は、反論できねえ……。気をつけます……」
遼平さんが歯を食いしばって言葉を呑む。
「とりあえずこんだけでいいか。葉月君、決まったから試着してみて」
「もっと可愛いのは無いんですか? ウサギのアップリケがついたような」
「あるわけねーでしょー。まっちゃんの可愛い物好きも重症だねぇ」
心臓が痛いぐらい鳴ってるよ……。おぼつかない足取りながらも言われるがまま着替え、建物を出て…………。
着てきた僕の服が無くなっているのに気が付いたのは、車が発進してからだった。
「ぼ、僕の服、メガネ!」
「処分させたぞ。変わりに、その服と、別に二着用意してあるからな」
「お金払わなきゃ……いくらですか!?」
「気にするな。俺からのプレゼントだから」
プレゼント!? この服、着心地が良い。明らかに上質で高そうなのに……!?
「それより飯にしよう。食べたい物はあるか?」
「た、食べたい物は特に無いけど……、ファミレスに行ってみたいです。ドリンクバーがあるところ」
「おう」
どうやら近くにあったらしく車はすぐに右折した。到着したレストランは僕でも知ってる有名なチェーン店だった。
「ただいま満席で、10分待ちとなっております」
とのことだったので、名前を書いて待つ。
店内は結構広くて、いろんな食べ物の匂いとさざなみみたいな人の話し声で満ちていた。
開いたソファに遼平さんと並んで座る。
ファミレスに入るのも生まれて初めてだ。
噂のドリンクバーにはどんな飲み物があるんだろう。コーラとお茶しか想像つかないな。
隣に座っていた遼平さんが、僕の頬を軽く摘んだ。
「なにニヤニヤしてるんだよ」
「ドリンクバーが楽しみで……!」
「ほんっとガキだなー」
「もう18だよ」
「触っても過剰反応しなくなったな」
「さっきのショックがまだ響いてるからだよ……。多分すぐもとに戻ると思う」
「戻ったらまたショック療法してやるからな」
「次は死ぬかもしれない……」
抱きつかれるのに慣れる気がしないよ。毎回失神してしまいそうだ。
カランコロン。
来客を告げるチャイムが鳴る。
入り口が一気に賑やかになった。甲高く喋りながら、女子高生の集団が入って来たのだ。
「うえー超混んでる」
「お昼だもん。しょうがなくね?」
「腹減ったー。早く席あかないかな」
我が物顔で入ってくる彼女たちに、僕は思わず俯いた。
派手な女子には碌な思い出がない。キモイって言われたり、ただ歩いてるだけでストーカー扱いされたり。目をあわさないに越したことはない。
「悠美、名前書いて」
「めんどくせーなもう。自分で書けばいーじゃん」
「うっわ、超綺麗な人いるー!」
「バカ、声でけーって。でもマジキレー。男かな? 女かな? 超小顔。アイドルっぽい」
「女に決まってんじゃん? 知らんけど」
「あ! アタシ、雑誌で見たことある。あの人モデルだよ」
「マジでぇ? あんたバカだから勘違いしてるだけじゃねーの?」
「マジだって。心愛に聞けば名前もわかるかも。画像送ろっと」
正面に座った女子高生が携帯を上げる。
――――!?
カメラが僕の方を向いてる!?
人の目が怖いのと写されるのが怖いのとで体が硬直した。
「はい、禁止ー」
大きな手が僕の顔の前に翳された。
「他人を撮影すんのはマナー違反だぞ。第一、こいつはモデルでも何でもない一般人だしな」
遼平さんだ。女子高生達を嗜めてくれる。
「やべ」
「ごめんなさい、つい。あんまり綺麗だから勘違いしちゃいましたー」
今、遼平さんに気が付いたのかな。慌てて携帯をバッグに入れて雑貨売り場に立って行った。
「あ、ありがとう遼平さん……、びっくりしたよ……!!」
「しまったな……。葉月が綺麗になりすぎたから周りの目が面倒になったぞ。これなら、元のままのお前でいさせたほうが良かったかも……」
綺麗……?
遼平さんは身内贔屓が過ぎるんじゃないかな。人に聞かれたら恥ずかしいからあまり言わないで欲しい。
「綺麗って実感が無いって顔してるな」
「うん。無いです。全然」
「どれだけ実感がなかろうが、今のが葉月に対する周りの評価だよ。自覚しろ」
「うーん……」
服装効果もあるんだろうな。この服、本当にモデルが着てるみたいに派手な服だから。魔法をかけられたシンデレラになった気分だ。
いつもの服に戻れば、いつもの僕に逆戻りする。地味で、女子高生に笑われて、奥さんにキノコみたいな髪型してって呆れられるのが、一番、僕に相応な、楽な生き方だ。
「陸王さま、どうぞ」
「はい」
ウエイトレスさんに案内された席は、ドリンクバーのまん前の席だった……!
「ご注文がお決まりになりましたらお呼びください」
「ありがとうございます」
差し出されたメニューを受け取って、開く。
うわー。メニューも一杯……!
何にしようかな……? う。どれも結構高い。
五百円ぐらいで食べられるものだとばかり……! パスタでも最低九百円もするよ。
「何にする?」
「うーうーうーうー……ホット……ケーキ……」
一番安いのがこれだったんだけどそれでも七百円。ドリンクバーを付けたら九百円! ドリンクバーは諦めよう……。
「それじゃ足りないだろ。今日は俺が奢ってやるんだから金は心配するな」
「……」
「奢られてばかりは嫌か?」
「その……、とても、ありがたいんだけど、初めて出来た友達の負担にはなりたくなくて……してもらうばっかりなのも、不安で」
遼平さんは自分のこと安月給だっていった。でも、あんなすごいオフィスビルに出入りするぐらいだ。僕とは安月給の感覚が違うんだろう。
ここの食費ぐらい簡単に出せるのかもしれない。それでも抵抗があった。
「してもらうばっかりじゃないぞ。実は、葉月にして欲しいことがあるから、先に恩を売っているんだ」
「え……!? 何? 僕にできることなら何でもするけど、できることなんて家事ぐらいしかないよ?」
まさかそんな企みがあったとは!
「今は内緒だ。ほら、遠慮せずにメニューを選びなおせ。細いんだから飯はしっかり食べておけ」
「じ、じゃあ、お言葉に甘えて……」
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