32 / 40
32 輿入れ準備
しおりを挟む
2月の始め、工事が進み、段々と形になってくると、更にもう一つの村が、計画に乗っかってきた、さらに100名の人工を確保できる見通しが立った。工事は凡そ7割程度進んでいる。もう少し。
「惣佐衛門殿、お話があります」
俺がいつもの様に、奥の間で陰々鬱々としてたら、母が、スッと襖を開け部屋に入ってきた。
襖を音もなく閉めると、歩み寄り、俺の前に座り、
「涼香は4月に嫁ぐことになりました。それまで準備を整えなければなりませぬ。惣佐衛門殿もお忙しい様なので、母が取り仕切ってもよろしいですか?」
そんなに進んでいたのか……ちょっと待て、この一月まともに涼香殿と会話をしていなかった。相変わらずの無視っぷりに嫌気がさしていたのだが、そんなことに……なっていたのか。
「惣佐衛門殿、如何いたした? お顔の色が優れませぬが、大丈夫ですか? 母の話を聞いておいでか?」
「ああ、もちろん、聞いておりました」
聞いてはいたが、その先の思考が止まっていただけだ。
4月か……今が2月の初めだから……残り2か月。間に合うかな……
「それでは、母が準備いたします」
というだけ言ったら部屋の外に消えていった。
直ぐに、何やら、部屋の外で話し声が聞こえたので、俺も襖を開けると、廊下に涼香殿と母上が笑みを漏らしにこやかにというか嬉しそうに会話をしていて、俺が襖を開けたことに気付いた二人は俺を一瞬見て顔を逸らすと、そのまま二人でそそくさと廊下の曲がりに消えて姿が見えなくなった。
何を嬉しそうに、楽しそうに話をしていたんだ?
「惣佐衛門殿、お話があります」
俺がいつもの様に、奥の間で陰々鬱々としてたら、母が、スッと襖を開け部屋に入ってきた。
襖を音もなく閉めると、歩み寄り、俺の前に座り、
「涼香は4月に嫁ぐことになりました。それまで準備を整えなければなりませぬ。惣佐衛門殿もお忙しい様なので、母が取り仕切ってもよろしいですか?」
そんなに進んでいたのか……ちょっと待て、この一月まともに涼香殿と会話をしていなかった。相変わらずの無視っぷりに嫌気がさしていたのだが、そんなことに……なっていたのか。
「惣佐衛門殿、如何いたした? お顔の色が優れませぬが、大丈夫ですか? 母の話を聞いておいでか?」
「ああ、もちろん、聞いておりました」
聞いてはいたが、その先の思考が止まっていただけだ。
4月か……今が2月の初めだから……残り2か月。間に合うかな……
「それでは、母が準備いたします」
というだけ言ったら部屋の外に消えていった。
直ぐに、何やら、部屋の外で話し声が聞こえたので、俺も襖を開けると、廊下に涼香殿と母上が笑みを漏らしにこやかにというか嬉しそうに会話をしていて、俺が襖を開けたことに気付いた二人は俺を一瞬見て顔を逸らすと、そのまま二人でそそくさと廊下の曲がりに消えて姿が見えなくなった。
何を嬉しそうに、楽しそうに話をしていたんだ?
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
鏡の守り人
雨替流
歴史・時代
時は応仁の大乱から三十年。
鏡の社(かがみのやしろ)に伝わる古文書によって警告されていた大厄災、この世の終焉を意味する恐ろしき事態が現実のものとなった。宮司の親子は特別な精霊を持つ少女と戦で郷を失った精鋭の忍び達と共にこの世を守る為、大厄災に挑む事となる。
鎮魂の絵師
霞花怜(Ray)
歴史・時代
絵師・栄松斎長喜は、蔦屋重三郎が営む耕書堂に居住する絵師だ。ある春の日に、斎藤十郎兵衛と名乗る男が連れてきた「喜乃」という名の少女とで出会う。五歳の娘とは思えぬ美貌を持ちながら、周囲の人間に異常な敵愾心を抱く喜乃に興味を引かれる。耕書堂に居住で丁稚を始めた喜乃に懐かれ、共に過ごすようになる。長喜の真似をして絵を描き始めた喜乃に、自分の師匠である鳥山石燕を紹介する長喜。石燕の暮らす吾柳庵には、二人の妖怪が居住し、石燕の世話をしていた。妖怪とも仲良くなり、石燕の指導の下、絵の才覚を現していく喜乃。「絵師にはしてやれねぇ」という蔦重の真意がわからぬまま、喜乃を見守り続ける。ある日、喜乃にずっとついて回る黒い影に気が付いて、嫌な予感を覚える長喜。どう考えても訳ありな身の上である喜乃を気に掛ける長喜に「深入りするな」と忠言する京伝。様々な人々に囲まれながらも、どこか独りぼっちな喜乃を長喜は放っておけなかった。娘を育てるような気持で喜乃に接する長喜だが、師匠の石燕もまた、孫に接するように喜乃に接する。そんなある日、石燕から「俺の似絵を描いてくれ」と頼まれる。長喜が書いた似絵は、魂を冥府に誘う道標になる。それを知る石燕からの依頼であった。
【カクヨム・小説家になろう・アルファポリスに同作品掲載中】
※各話の最後に小噺を載せているのはアルファポリスさんだけです。(カクヨムは第1章だけ載ってますが需要ないのでやめました)
不屈の葵
ヌマサン
歴史・時代
戦国乱世、不屈の魂が未来を掴む!
これは三河の弱小国主から天下人へ、不屈の精神で戦国を駆け抜けた男の壮大な物語。
幾多の戦乱を生き抜き、不屈の精神で三河の弱小国衆から天下統一を成し遂げた男、徳川家康。
本作は家康の幼少期から晩年までを壮大なスケールで描き、戦国時代の激動と一人の男の成長物語を鮮やかに描く。
家康の苦悩、決断、そして成功と失敗。様々な人間ドラマを通して、人生とは何かを問いかける。
今川義元、織田信長、羽柴秀吉、武田信玄――家康の波乱万丈な人生を彩る個性豊かな名将たちも続々と登場。
家康との関わりを通して、彼らの生き様も鮮やかに描かれる。
笑いあり、涙ありの壮大なスケールで描く、単なる英雄譚ではなく、一人の人間として苦悩し、成長していく家康の姿を描いた壮大な歴史小説。
戦国時代の風雲児たちの活躍、人間ドラマ、そして家康の不屈の精神が、読者を戦国時代に誘う。
愛、友情、そして裏切り…戦国時代に渦巻く人間ドラマにも要注目!
歴史ファン必読の感動と興奮が止まらない歴史小説『不屈の葵』
ぜひ、手に取って、戦国時代の熱き息吹を感じてください!
【完結】長屋番
かずえ
歴史・時代
長屋シリーズ三作目。
綾ノ部藩の藩士、松木時頼は三年前のお家騒動の折、許嫁との別れを余儀なくされた。許嫁の家は、藩主の側室を毒殺した家の縁戚で、企みに加担していたとして取り潰しとなったからである。縁切りをして妻と娘を実家へ戻したと風のうわさで聞いたが、そのまま元許嫁は行方知れず。
お家騒動の折り、その手で守ることのできなかった藩主の次男。生きていることを知った時、せめて終生お傍でお守りしようと心に決めた。商人の養子となった子息、作次郎の暮らす長屋に居座り続ける松木。
しかし、領地のある実家からはそろそろ見合いをして家督を継ぐ準備をしろ、と矢のような催促が来はじめて……。
荊軻伝 傍らに人無きが若し (short ver)
Tempp
歴史・時代
秦王政によって中華は間もなく統一されようとしていた。
燕の太子丹は一縷の望みをかけ、始皇帝の暗殺を荊軻に依頼する。
秦の始皇帝の暗殺。その意味。成し遂げても成し遂げずともその場で殺される。それでも義を守るために。
水滸拾遺伝~飛燕の脚 青龍の眼~
天 蒸籠
歴史・時代
中国は北宋時代、梁山泊から野に下った少林拳の名手「浪子」燕青は、薊州の山中で偶然少女道士の「祝四娘」と出会い、彼女ら二仙山の道士たちの護衛をすることになる。二人はさまざまなトラブルに遭いながら、青州観山寺に巣くう魔物その他、弱きを助け悪きを挫く旅を続ける。
女の子だって羽ばたけるのよ!
みるく♪
歴史・時代
主人公の 加藤つぐみは、1969年(昭和44年)生まれの 女の子。
泣いたり笑ったり怒ったりの日々。
中学時代の思い出を語ります。
リアルな昭和年代の お話です。
母や、母と同世代の オバチャンたちから聞いた お話を もとにしました。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
短編『トマレとミコの ひなまつり』には、大人に なった つぐみが登場しています。
フラれ侍 定廻り同心と首打ち人の捕り物控
sanpo
歴史・時代
吉原にて、雨天に傘を持っていながら「思いを遂げるまでは差さずに濡れていく」……という〈フラれ侍〉が評判をとっていたある日。南町奉行所の定廻り同心、黒沼久馬のもとに、雨の夜の連続辻斬りが報告される。そこで友人の〈首斬り浅右衛門〉と調査に乗り出す久馬。そうして少しずつ明らかになっ ていく事件の裏には、傘にまつわる悲しい因縁があって――
※令和2年「白殺し」~ 新作!令和3年「宝さがし」掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる