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伍場 二

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「靜華、俺と繋がれ」

興奮した様子の吉右衛門が屋敷に着くなり発した言葉がそれだ。吉右衛門の帰宅を楽しみにしていた靜華にしてみれば、いささか色気のない言葉が出てきてもう少し言い方があるだろうといったところである。

「いやや」

明らかに態度のおかしい靜華を見ながら、さらに一押し、

「北面武士団であった事を教えるから繋がれ」

「そやさかい、いやや。話してくれたらええやろ。こん間なんてな、見えてる女全部の裸を想像してはったもんな」

靜華の表情が険しくなった。

「いや。それは間違いだな。お前の裸だけは想像してないから全員ではないだろう」

「あんた、想像したら心臓まで止たるわ。忘れんといてな。」

さすがの吉右衛門もこれ以上押すと面倒になることぐらいこの二年だか三年で学んでいる。

「なんでそれほど嫌なのか……何処から話せばいい……まず、食べ物に困る生活は終わりだ」

「え? ほんま? 何でやの?」

靜華の顔がぱっと明るくなった。

「俺とお前で戦うことになった」

「何と?」

うって変わってきつく睨んでいる。

「法皇の敵対勢力と」

「何でなん?」

「……なんでかな……金のため?」

あきれ顔の靜華に吉右衛門は先ほどのいきさつを説明してどうだとばかりに満面の笑顔で反応を伺っている。

「あんた上手いこと言われて取り込まれましたなぁ。戦う相手は人やないの……そもそも、昨日のお化け退治はその何とかって奴に仕組まれてたんとちゃうん? タイミングよすぎやろ。昨日の爺っちなんやろ。その何とかって」

「そうだな。そうなんだけど、でも、もっといい暮らしが出来るぞ。もう、金塊貰ってきちまったしな」

「やめときよし! ウチがそんな事で、今まで一度でも不満を言うた事がありますか? なのにそんな事決めてきはって。危ない仕事はさせとうありまへん」

靜華が遠い眼をして瞳をそらしている。こうなるとしばらくは戻るのに時間がかかる奴だ。このままいても言い合いになるので少し時間を置こうと思う吉右衛門だった。

「……チョット出てくる」

「おはようおかえり」

いつものやり取りではあるが……
目を合わせるようなことも笑顔も無く送り出された吉右衛門だ。まだ、相槌をくれただけ、ましな方ではある。
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