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伍場 八
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「霞、捉えていたか?」
「ごめんなさい。わからなかった」
「そうだろうな。こいつら初めて会ったときは靜華でも接近に気付かんかったからな。霞、このあいだの黒い煙の出る武者と同じ様にとらえて見ろ。それで靜華はあいつらを補足していたぞ」
霞はうなずいて集中している。
吉右衛門の前で九郎が太刀を抜いて構える。
「吉右衛門様、お久しぶりでございます」
先頭の黒ずくめが三人の前に歩み出てきた。
「本日は、我らとお手合わせ願いたく参上いたしました」
「お手合わせか……俺は女人としか手合わせはしない主義なのだ。すまんな、夜も暮れているし、この通り子供連れだ。お前たちの首が飛ぶようなところは見せたくない。約束は出来んがまた後にしてくれ」
吉右衛門の一通りの逃げ口上。言った本人もこれで済むとは思っていない。
目の前には半年ほど前に突然現れて吉右衛門と靜華の眼前の敵を瞬殺した黒ずくめの自称影の軍団が再度、現れている。
「そうですか。我らは決して表に出る事の無い禁裏の最高戦力でございます。それが我らの存在する意味。我らが対峙する勢力は我らに傅かせなくてはなりません。あなたは敵対勢力ではない。しかし、あなたは別格のお力をお持ちだ。強すぎる。強すぎる事は我らにとっては脅威そのもの。脅威は敵なら殲滅するだけ、御味方となりうるのであれば……是非とも我らと組していただけませんか?」
黒ずくめの腹から響く声を聴いていた吉江御門は、いつもの様に半笑いを浮かべ調子よく答える。
「ああ、そういうお話なら、間に合ってるんで、すべてお断わりしてるんですよね~」
「ならば、仕方ないですね。ここにいる我が軍団百名の総力を挙げて大滝様に戦いを挑みます。おそらく、それでもあなた様には敵うとは思っておりません。残念ながらこれが我らの生きる理由。お供の方々に手出ししないことはここで確約いたします。それでは参ります……」
黒ずくめの声がいつしか攻撃性を帯びたものになってきたことを三人は感じている。霞は既に体制を整え吉右衛門の指示を待っている。九朗も吉右衛門と霞の背面を固め攻撃態勢を整えていた。
しかし、吉江御門は、
「ちょっと、ちょっと待て!! それは誰かの指示なのか? 戦う以外でわかり合える方法は無いのか? 何も全滅覚悟で突っ込んでくるとかおかしいだろ。それにお前らにはこの間、助けてもらっているからな出来れば戦いたくない。」
吉右衛門が手を出して制止している。
「ならば、やはり、我らと……」
「すまん、それは考えていない。俺はこいつらと屋敷にいる奴らの安全を守るのが仕事だ。どこかの勢力に組みしたとなればその敵勢力が俺たちの敵になる。それは俺が望んでいる事と違う結果になる。……しかし、お前達もこのままでは収まらないのだろう?」
吉右衛門が逡巡し、
「では、とりあえず一対一でどうだ? それでお前たちが勝てたら考えてやる。お前たちが負けたら今まで通りだ。誰でもいい一番強い奴を出せ。それと、その他の応援団は下がらせてくれ」
「ごめんなさい。わからなかった」
「そうだろうな。こいつら初めて会ったときは靜華でも接近に気付かんかったからな。霞、このあいだの黒い煙の出る武者と同じ様にとらえて見ろ。それで靜華はあいつらを補足していたぞ」
霞はうなずいて集中している。
吉右衛門の前で九郎が太刀を抜いて構える。
「吉右衛門様、お久しぶりでございます」
先頭の黒ずくめが三人の前に歩み出てきた。
「本日は、我らとお手合わせ願いたく参上いたしました」
「お手合わせか……俺は女人としか手合わせはしない主義なのだ。すまんな、夜も暮れているし、この通り子供連れだ。お前たちの首が飛ぶようなところは見せたくない。約束は出来んがまた後にしてくれ」
吉右衛門の一通りの逃げ口上。言った本人もこれで済むとは思っていない。
目の前には半年ほど前に突然現れて吉右衛門と靜華の眼前の敵を瞬殺した黒ずくめの自称影の軍団が再度、現れている。
「そうですか。我らは決して表に出る事の無い禁裏の最高戦力でございます。それが我らの存在する意味。我らが対峙する勢力は我らに傅かせなくてはなりません。あなたは敵対勢力ではない。しかし、あなたは別格のお力をお持ちだ。強すぎる。強すぎる事は我らにとっては脅威そのもの。脅威は敵なら殲滅するだけ、御味方となりうるのであれば……是非とも我らと組していただけませんか?」
黒ずくめの腹から響く声を聴いていた吉江御門は、いつもの様に半笑いを浮かべ調子よく答える。
「ああ、そういうお話なら、間に合ってるんで、すべてお断わりしてるんですよね~」
「ならば、仕方ないですね。ここにいる我が軍団百名の総力を挙げて大滝様に戦いを挑みます。おそらく、それでもあなた様には敵うとは思っておりません。残念ながらこれが我らの生きる理由。お供の方々に手出ししないことはここで確約いたします。それでは参ります……」
黒ずくめの声がいつしか攻撃性を帯びたものになってきたことを三人は感じている。霞は既に体制を整え吉右衛門の指示を待っている。九朗も吉右衛門と霞の背面を固め攻撃態勢を整えていた。
しかし、吉江御門は、
「ちょっと、ちょっと待て!! それは誰かの指示なのか? 戦う以外でわかり合える方法は無いのか? 何も全滅覚悟で突っ込んでくるとかおかしいだろ。それにお前らにはこの間、助けてもらっているからな出来れば戦いたくない。」
吉右衛門が手を出して制止している。
「ならば、やはり、我らと……」
「すまん、それは考えていない。俺はこいつらと屋敷にいる奴らの安全を守るのが仕事だ。どこかの勢力に組みしたとなればその敵勢力が俺たちの敵になる。それは俺が望んでいる事と違う結果になる。……しかし、お前達もこのままでは収まらないのだろう?」
吉右衛門が逡巡し、
「では、とりあえず一対一でどうだ? それでお前たちが勝てたら考えてやる。お前たちが負けたら今まで通りだ。誰でもいい一番強い奴を出せ。それと、その他の応援団は下がらせてくれ」
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