18 / 56
弐場 八
しおりを挟む
「私はあの寺社で呪詛によって作り出された人ざらなるもの。元々は出雲で神官をしていた家に生まれたのだけれど、幼いころより、少し勘がいいって言うので有名だったわ。感がいいって言ってもそんな大したものでは無かった。たかが相手の考えていることがわかったような気がしていただけ。それでも、人々は私に救いを求めてきたわ。まぁ、何もわからないから適当に言うんだけど、それでも、みんな感謝して帰って行くの。そのうち自分でも本当は凄いんじゃないかって思ってきて、いつの間にか自分で自分を騙していたみたい。
そんな時よ。京から私の噂を聞きつけてもっと力を発揮できる修行があるから来ないかと誘いが来たわ。父は二つ返事だった。もっと力をつければもっと金持ちになれるってね。私はどうでもいいと思ったけどこんな偽物みたいなのが嫌だったので京まで来たの。それが、ちょうど三か月くらい前のこと。
でも、違ったわ。修行なんて嘘。私以外にもたくさん女の子はいたの。境内の倉庫に押し込まれて、毎晩、あいつらの慰みものになる毎日……それだけ。それでも、みんな朝には戻ってこれるだけ良かったのかも。
ただ、満月の夜だけは違った。満月の夜に連れていかれた子達は戻ってこなかった。連れていかれると三日三晩祈祷すると言っていたのを聞いたけど。それでも三日目の夜までそれが続くことは無かったわ。後から知ったけど戻ってこなかった子はみんな死んじゃったんだって。
一月前、私が満月の夜に連れ出されて社殿の中に入れられた。中には女の子が五人。神官が香を焚いて祈祷するのよ。延々と。それでも、何も起こらなかった。でも、二日目の夜に傍で寝ていた子が苦しみだして、あっという間に死んだわ。それからは次々に血を吐きながら、目から耳から……全員が尋常では無い苦しみ方で死んでいった。私もずっと苦しんでいたの。身体ももちろんだけど心をいじられる様な感覚。心と身体が離れて行くような苦しみ。こんなに苦しいなら死にたいと何度も思ったけど身体が動かせないの……
そして、私だけ生き残った。
初めて生き残ったって神官は大喜びしていたけど。喜びついでに言っていたのが、香に秘密があって巫女の残滓が練りこめられているとか言っていた。その力で降天の巫女を作るのが目的で延々と祈祷していた。と」
少女は淡々と語る。まるで、おとぎ話でも語るかの様に。
「その巫女の残滓の元がウチの妹や」
靜華が話を継ぐ。
「おそらく、あのじっちと戦った時に取られたんだと思うわ」
行徳の事だ。
「降天の巫女が元々持っているものをなんや怪しげなツボに入れて精製する言うとった。こないだ戦った時にな。その精製したもんをどうするかまでは知らんが残滓ちゅうんならそのツボに残った奴を集めて香にしたんやろうな」
「靜華よ。そんな事が出来るのか?」
「出来るも何も、目の前に一人おるやろ。それが全てや」
「そこにはほかに囚われているものはいなかったか?」
吉右衛門が顔をかきながら聞いている。靜華がその仕草を見つめている。
「他? 他ってどういう意味?」
「その神官、僧侶、女の子意外だ。お前、相手の名前もわかるのか?」
「わかるわ。」
「源義経。源九郎義経だ」
「その名前はわからないわ。でも、いつも同じ男が何回か来ている。なんていったかしら……馬場……頼……頼嗣……そう! 馬場頼嗣。昨日も来ていたわ」
「そうか……ほかの捕まっていた娘はどうした?」
弁慶が聞いた。
「私が殺した。全員。あのままいても地獄だから。私の手で殺してあげたの。今日の朝。奴らごと全部消滅させてあげたわ。本当は私も一緒に消えるはずだったのに……」
今まで無機質に話続けていた少女が感情を露わにして慟哭している……
「弁慶。あの話を聞いていると、そもそもあそこにその御曹司がいたとは思えないぞ」
「わからないが、そこにいると聞いていたんだ」
「弁慶よ、鎌田に話をするのちょっと待ってくれ。俺に考えがある」
屋敷の廊下で話し込む二人。吉右衛門は顔をかきながら考え込んでいた。
そんな時よ。京から私の噂を聞きつけてもっと力を発揮できる修行があるから来ないかと誘いが来たわ。父は二つ返事だった。もっと力をつければもっと金持ちになれるってね。私はどうでもいいと思ったけどこんな偽物みたいなのが嫌だったので京まで来たの。それが、ちょうど三か月くらい前のこと。
でも、違ったわ。修行なんて嘘。私以外にもたくさん女の子はいたの。境内の倉庫に押し込まれて、毎晩、あいつらの慰みものになる毎日……それだけ。それでも、みんな朝には戻ってこれるだけ良かったのかも。
ただ、満月の夜だけは違った。満月の夜に連れていかれた子達は戻ってこなかった。連れていかれると三日三晩祈祷すると言っていたのを聞いたけど。それでも三日目の夜までそれが続くことは無かったわ。後から知ったけど戻ってこなかった子はみんな死んじゃったんだって。
一月前、私が満月の夜に連れ出されて社殿の中に入れられた。中には女の子が五人。神官が香を焚いて祈祷するのよ。延々と。それでも、何も起こらなかった。でも、二日目の夜に傍で寝ていた子が苦しみだして、あっという間に死んだわ。それからは次々に血を吐きながら、目から耳から……全員が尋常では無い苦しみ方で死んでいった。私もずっと苦しんでいたの。身体ももちろんだけど心をいじられる様な感覚。心と身体が離れて行くような苦しみ。こんなに苦しいなら死にたいと何度も思ったけど身体が動かせないの……
そして、私だけ生き残った。
初めて生き残ったって神官は大喜びしていたけど。喜びついでに言っていたのが、香に秘密があって巫女の残滓が練りこめられているとか言っていた。その力で降天の巫女を作るのが目的で延々と祈祷していた。と」
少女は淡々と語る。まるで、おとぎ話でも語るかの様に。
「その巫女の残滓の元がウチの妹や」
靜華が話を継ぐ。
「おそらく、あのじっちと戦った時に取られたんだと思うわ」
行徳の事だ。
「降天の巫女が元々持っているものをなんや怪しげなツボに入れて精製する言うとった。こないだ戦った時にな。その精製したもんをどうするかまでは知らんが残滓ちゅうんならそのツボに残った奴を集めて香にしたんやろうな」
「靜華よ。そんな事が出来るのか?」
「出来るも何も、目の前に一人おるやろ。それが全てや」
「そこにはほかに囚われているものはいなかったか?」
吉右衛門が顔をかきながら聞いている。靜華がその仕草を見つめている。
「他? 他ってどういう意味?」
「その神官、僧侶、女の子意外だ。お前、相手の名前もわかるのか?」
「わかるわ。」
「源義経。源九郎義経だ」
「その名前はわからないわ。でも、いつも同じ男が何回か来ている。なんていったかしら……馬場……頼……頼嗣……そう! 馬場頼嗣。昨日も来ていたわ」
「そうか……ほかの捕まっていた娘はどうした?」
弁慶が聞いた。
「私が殺した。全員。あのままいても地獄だから。私の手で殺してあげたの。今日の朝。奴らごと全部消滅させてあげたわ。本当は私も一緒に消えるはずだったのに……」
今まで無機質に話続けていた少女が感情を露わにして慟哭している……
「弁慶。あの話を聞いていると、そもそもあそこにその御曹司がいたとは思えないぞ」
「わからないが、そこにいると聞いていたんだ」
「弁慶よ、鎌田に話をするのちょっと待ってくれ。俺に考えがある」
屋敷の廊下で話し込む二人。吉右衛門は顔をかきながら考え込んでいた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
王妃の手習い
桃井すもも
恋愛
オフィーリアは王太子の婚約者候補である。しかしそれは、国内貴族の勢力バランスを鑑みて、解消が前提の予定調和のものであった。
真の婚約者は既に内定している。
近い将来、オフィーリアは候補から外される。
❇妄想の産物につき史実と100%異なります。
❇知らない事は書けないをモットーに完結まで頑張ります。
❇妄想スイマーと共に遠泳下さる方にお楽しみ頂けますと泳ぎ甲斐があります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる