凪の始まり

Shigeru_Kimoto

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2015年5月 凪の始まり(前編)

8 2015年5月 8

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「ごめんなさいね。佐藤さん。
ここで会おうって、言ったんだけど……先に来て喧嘩するとか……」

おっとり口調の未海ちゃん……いや、未海さん……
可愛い……
すっかりお姉さんっぽくなった未海さん5年ぶりの再会です。

「佐藤さん……さっき、結城さんに聞いて、今、来てみたんだけど……

もしかして……
リリィちゃんを?……」

潤む瞳が……
輝いた気がした……

「え? ま、まさか……」

いやいや、分かりやすい動揺を……
だって、なんか……人に言われるってやっぱり恥ずかしい……

「だって、ここって……リリィちゃんとの思い出の場所だし……

佐藤さん……
リリィちゃんなら……

もう……」

「いいよ! 分かってる! 言わないで……」

もうって……
なんだよ……
未海さんも雅さんと同じことを言いたのだろうな……
そんなに待ってどうするって……

もう、ここで、待つようなことはするなって……

リリィさんは……
待っていても来ないよって……
来るはずが無いよって……

そう言いたいんだろう?

「でも……
ここって……
リリィちゃんと良く来てた場所じゃ---」

「本当に……
これは俺がしたいからそうしているだけだから……

リリィさんとは関係が無いんだよ」

精一杯の強がりだ……

「でも……でも、釣竿……」

潤む瞳で未海さんは言いたいことを飲み込んで……

ああ……
仕掛けが付いてないのに気が付かれちまったか……

俺はここで待つ間、ただ座っていたのでは、傍から見たら、不審この上ないので、釣竿を持ってきていたのだが……

もう面倒なので、仕掛けも投げ込まずに只、竿を転がして置いていた。
それをあざとく見つけて、その真意をくみ取ったであろう未海さんが、俺から少し視線を外して、小さく、

「そうなの? なら……

何も言わないよ……

でも……
リリィちゃん……
聞いたら……
悲しむよ……」
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