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12月 健太郎は人を愛せない
9 レイアさん3
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「あれ? 健太郎、夜もいるの?」
深夜22時過ぎのことだ。
「もう18歳になったんで、色々、やってますよ」
「へ~、色々ねー。じゃあさ、今晩、あたしこれで終わりだから、ご飯一緒に食べよう! あたしのおごりだよ。いいよね? 店長!」
「……ああ? 変な事教えんじゃねえぞ。まだ、子供なんだから。
健太郎、お姉ちゃんがそうおっしゃってるんだから、今日はもうあがっていいよ。レイアよろしくな」
俺は近くの夜でもやっている寿司屋に連れていかれた。
レイアさんはビールを飲みながら、お任せで大将に握ってもらっている。
俺は寿司は苦手……だった。
「健太郎、お寿司嫌いなの?」
カウンターの隣で大将がいなくなった隙をついてレイアさんが耳打ちしてきた。
レイアさん……いい匂い。
何で分かったんだろうか。レイアさんは俺の食べ具合からでも察したようで。
「酢飯が苦手なのと……」
「なにヨ」
「子供の頃、良く父さんがお土産に買って来て、寝てた俺を起こすんですよ。食べろって……」
「……そう、その頃を思い出すんだね……」
この頃のキャストは俺の境遇を知っていた。
「早く言いなよ、なら……
蕎麦でも、お好み焼きでも、焼肉でも、お子様ランチでもあるんだからさ。一番高いのおごって嫌いとか……
ねえ! ちょっと、私のガッカリ感半端ないよ!」
笑顔で怒られた。
「でも、大丈夫ですよ。食べれないとかじゃないから。食べますよ」
「そう? 無理してない?」
「無理してないです」
レイアさんは優しい、とっても俺には優しい……
いや、多分、誰にでも優しい人だった。
深夜22時過ぎのことだ。
「もう18歳になったんで、色々、やってますよ」
「へ~、色々ねー。じゃあさ、今晩、あたしこれで終わりだから、ご飯一緒に食べよう! あたしのおごりだよ。いいよね? 店長!」
「……ああ? 変な事教えんじゃねえぞ。まだ、子供なんだから。
健太郎、お姉ちゃんがそうおっしゃってるんだから、今日はもうあがっていいよ。レイアよろしくな」
俺は近くの夜でもやっている寿司屋に連れていかれた。
レイアさんはビールを飲みながら、お任せで大将に握ってもらっている。
俺は寿司は苦手……だった。
「健太郎、お寿司嫌いなの?」
カウンターの隣で大将がいなくなった隙をついてレイアさんが耳打ちしてきた。
レイアさん……いい匂い。
何で分かったんだろうか。レイアさんは俺の食べ具合からでも察したようで。
「酢飯が苦手なのと……」
「なにヨ」
「子供の頃、良く父さんがお土産に買って来て、寝てた俺を起こすんですよ。食べろって……」
「……そう、その頃を思い出すんだね……」
この頃のキャストは俺の境遇を知っていた。
「早く言いなよ、なら……
蕎麦でも、お好み焼きでも、焼肉でも、お子様ランチでもあるんだからさ。一番高いのおごって嫌いとか……
ねえ! ちょっと、私のガッカリ感半端ないよ!」
笑顔で怒られた。
「でも、大丈夫ですよ。食べれないとかじゃないから。食べますよ」
「そう? 無理してない?」
「無理してないです」
レイアさんは優しい、とっても俺には優しい……
いや、多分、誰にでも優しい人だった。
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