凪の始まり

Shigeru_Kimoto

文字の大きさ
上 下
164 / 390
11月 質の悪い奴ら

2 雅さんの悩み2

しおりを挟む
しかし、

次の日も、そのまた次も、同じように雅さんは郷田さんに教わっては、俺が来ると消えていった。

「郷田さん、雅さん……どうしたんでしょうね」

郷田さんはそれと知らなければ、一見すると、ヒットマンのような、いかつい外見と、鋭い眼光を俺に向け、

「店長、お口は堅い方ですか?」

「口は堅いです。ハマグリ健ちゃんって言われてます。でも、煮るとパカッて開きます」

「………………」

ヒットマンが俺を凝視する。ホンの軽い冗談じゃないですか……イッツ、ジャパニーズジョーク……俺の心中の呟きをよそに郷田さんは、相変わらず、冗談じゃねぇと言う表情を俺に向けている。俺の知っている郷田さんなら、簡単に折れるとも思えないので、

「すいませんでした。口外致しません」

ヒットマンの望んでいるだろう答えを口にした。

「申し訳ございません。店長。それでは……」

と、郷田さんは、重い口を開くのだった。
しおりを挟む

処理中です...