上 下
29 / 44
SSSランクへ

ルシファー

しおりを挟む
 俺は3か月間依頼で国を離れていた。他国でも最強の2つ名が広がっていた事には驚きだった。そして周りからの切望が何よりも息苦しかった。やっと解放されたと思ったら指名依頼でダンジョンに向かうことになるとは。
 無駄にカッコつけずに一緒に帰ればよかったなあ。

(SSSランクになっても休む暇なさそうだな)

『手紙図書館』と別れ50階層の階段を下りると、再び空間が広がる。
 空間に入った瞬間に第六感が働く。空から白と黒の翼を広げた堕天使が出現する。

「よくぞ来た!我が名は堕天使ルシファー。『傲慢』の守護し」
「「あああああああああああああああああああああああ」」

 メフィスとラファがルシファーに人差し指を向け、叫び声をあげる。
 ルシファーが驚いた顔をしているが、横にいた俺の方が驚いている顔をしているに違いない。

「二人ともどうしたんだ。知り合いか?」
「ええ、あいつは天使達の敵です」
「冥界でも悪事を働いて追放された女性の敵です」
「どこかで見た顔だと思ったが、ババアの天使と悪魔じゃないか」
「「黙れ下着泥棒!!」」

 ん?下着泥棒?そして君達何歳なんだ?
 ルシファーに向けていた殺気が俺の方にも来る。鋭すぎるだろ。

「何が悪い?貴様等には興味ない」
「死ねロリコン」
「くたばれロリコン」

 メフィスとラファから聞いた事がない言葉が発せられる。
 50階層のボスがロリコンの下着泥棒なんて最悪だ。『傲慢』やめて『色欲』のダンジョンボスやれよ。

(ルシファーを倒した後、ギルドにどう説明すればいんだよ)

 この3か月で一番疲れる状況だ。もはや転移して一番頭を抱える事案かもしれない。
 早く帰りたい。

「それよりなぜここにいるのよ?」
「冥界で封印したよね?」
「気づいたらここにいた。久しぶりの来客がババアのお前らとは皮肉なものよ」
「「永遠に眠らせてやる」」
「待って2人とも。ルシファー俺と取引しないか?」
「なんだババア達の主たる者よ」
「「なっ!」」

 普段の君達はどこ行った!落ち着いてくれ。

「素直に倒させてくれたら幼女の下着を次来る時に持って来よう」
「喜んで首を差し上げよう」

 頭を下げるルシファー。
 道中が苦戦してラスボスが簡単なんてよくあるよね。ポ○モンとかドラ○エとか。
 そんなことを考えながらルシファーの首を刎ね、光の粒子とする。
 その光景をメフィスとラファが死んだ目で眺める。
 49階層まで辿り着いた『手紙図書館』が報われなさすぎる結末だが知らん。俺にも想定外過ぎた。

 口を開く気分にもなれない俺はメフィスとラファに念話する。

(帰るぞ!)
(ユリト様ほんとに幼女の下着を?)
(嘘に決まってるだろ。二度とここには来ん!)
(安心しました)

 そうして俺達は冒険者ギルドに報告するために戻る。
(なんて報告したらいいのだろうか――)


しおりを挟む

処理中です...