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第40話 道草ばかりの帰り道
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*ボーイスカウトの話
5年生の時に同じクラスになった小坂、石川、松宮が『ボーイスカウト』をやっていて、それがなんだか羨ましい時期があった。『ボーイスカウト』は少年たちがキャンプを通して自然に触れ、年少者にはロープやナイフの使い方、サバイバル技術や料理などを教えるというものであり、生きて行く上で必要な技術をいくつも学ぶことができるのである。
その『ボーイスカウト』でもう一ついいなと思った点が『内輪での鬼ごっこ』だ。学校とは別に『ボーイスカウト』の人だけで続いており、入れてほしいと頼んでも
「これは俺らだけでやってるやつだから無理」
といった具合に入れてはもらえず、なんだか寂しい気もしたが、別にぼくだけが入れてもらえなかったわけでもなかったので、“グループを大切にしているのはいいことだったんだろうな”と今になったら思える。
*耳鼻科の話
今はそうでもないのだが、小学生だった頃は鼻炎が酷く、隣町の御影にある高野耳鼻科までよく車で送ってもらっていた。ここでは鼻に管を入れて鼻水を吸い出すのだが、鼻の奥まで入れるので、これが結構痛いのであった。
それで耳鼻科に行くのは憂鬱に感じ、あまり気が進まなかったのだが、この後に機械から出る煙を吸引すると鼻と喉が一気に楽になるので、それが終わってから帰ると爽快な気分になるのであった。この耳鼻科には、仲の良かったけんちゃんも通っていて、たまに会って話したりもしていた。
ただ、ここの他に近所の摂津本山駅の近くにもよさげな耳鼻科があるにも関わらず、母は自分が決めた納得の行く所へしか行かないというこだわりがあったので、そういうところは今日のぼくの性格にも影響を及ぼしているのかなと今になって思う。
他のクラスの子が耳から血が出た話に恐怖したりしながらも、ぼくはせっせと耳鼻科に通い続けるのであった。
*道草ばかりの帰り道の話
学校の帰り道というのはなぜあんなに短いのに魅力的なんだろうと思うことがある。5年生になりたての時、4年生で同じクラスだったきたと一緒に帰る約束をしていたのだが、すっぽかされて一人で帰るはめになったことがあった。たぶん悪気はなく、小学生は忘れっぽいので仕方がないことだと思う。
そこで、普段帰っていた東側の道ではなく、いつも行きしに通っていた西側の道から帰ることにした。子供は下の方を、大人は上の方を見ながら歩くというが、ぼくもご多分にもれず下を見ながら歩き、目の前にある犬のフンを難なく避けながら進んで行った。
すると、何かの気配に気が付いて見上げると、上に線路が通っているトンネルの壁にヘビがまとわりついて、ぼくを見下ろしながら舌をチョロチョロ出しているではないか。これは困ったなと思い、いなくなくのを待っていたが、いつまで経っても一向にどこかへ行く気配がない。
そこで意を決して通過しようとしたのだが、勢いよく通ったせいでヘビの方も驚いたのかぼく目掛けて壁から身を乗り出してきた。一体どうやってはりついているんだと思う余裕もなく、間一髪かまれずに済んだ。
後にも先にもヘビに襲われたのはその時だけだったが、今にして思えば別の道を通るようにすべきだったと思う。その後、落ちていた石を蹴り、枝を拾って得意げに歩きながら家まで帰ったのであった。
*さとうの話
5年生の時に同じクラスだった佐藤くんという友達がいて、ある日、図工の時間に少しじゃれあって遊んでいたのだが、グーパンで『頭の右側』を軽く叩かれて、その時にぼくは視点が合わなくなってしまって、5分くらいそのままの状態になってしまったことがあった。
回りや先生に言おうとしたが、みんな気付いてくれず、物が3重に見えて、もうずっとこのままかもしれないと、かなり焦ってしまった。どうやって解決したかというと、自分で『頭の左側』を何回か強く叩いて、バランスを取ったことで視点が元に戻り、普通に見えるようになった。今でも別に何の後遺症もなく暮らせているが、この時にこのままだったらと思うと少し恐ろしくはある。さとうから
「なに自分で叩いとんねん、アホちゃうか」と言われ
「うるさい、お前力強いんじゃ。目おかしなったやろ」
というやり取りを経て少し喧嘩になったものの、それからも普通に仲良くしていた。このさとうには天敵がいて、植竹くんという子が水泳の授業の時になぜかさとうの席に座ってタオルを敷かずに着替えるのだが、さとうがやめてくれと言ってもなぜかやめようとはしなかった。結局5年生の水泳の授業の間中そんな調子で彼が言うには「この席が気に入っているから」だそうだ。
だが、それよりも可哀想だと思ったのは、彼は6年生の2学期に親の仕事の都合で引っ越すことになり、みんなと一緒に卒業式に出られなかったことだ。一応卒業アルバムは送ってもらえたようだが、“卒業式の日だけでも参加できたらよかったのにな”と今になっても思う。
*神戸での習字の話
小学校高学年になっても、親の意向で習字をやっていて、家の近くの『北畑会館』というところに通っていた。だいたいどこもそうなのかもしれないが、そこも千葉で習っていた時と同じくおばあさんが先生をしていた。
ただ、千葉の時と違ってそのおばあさんは結構嫌味を言ってくるタイプの人で、ぼくはこの人がわりと苦手だった。同じクラスの岡野もそこに通っており、ある時家が近いので一緒に帰っていて習字の話になったことがある。
「おかの、明日習字行く日やんな?」
「そうやな。あ~めんどくせ」
「なんか俺、あの先生あんま好きじゃないんよな」
「おれも!あのババアめっちゃ嫌い」
「そうやんな!なんかいつも嫌味言うて来るし」
「俺、正直もうあっこ行きたくないねん」
「俺もやわ。行くの嫌になって来てる」
「一緒に辞めん?」
「そうやな、そうしよう。習字ならもう十分やったし」
悪口というのは得てして盛り上がるものなのだろう。それから家に帰るまでずっと、二人はこの話題で持ち切りだった。そしてそこで、帰ってから親に『いかに習字が上手くなったか』を力説し、来年から塾に行くという約束で辞めることを許してもらった。断言するが、あんなもん絶対人生に必要ないし、世間の風潮に騙されているだけなのである。
ぼくは小学生の習い事は、将来の役に立つ『英語教室』(日本では大学受験で英語が必須であるため)と『スポーツ』(男子はサッカー、女子は空手か合気道が良いと思う)、そしてその子がどうしてもやりたいのならあともう一つ、くらいにすべきだと考えており、それ以外は無意味なのでなるべくやらない方がいいと思う。人生は短く、洗練されて来ている今の時代、あれこれ無駄なことをやるよりも、『役に立つスキル』を身に付けるべきでなのである。
5年生の時に同じクラスになった小坂、石川、松宮が『ボーイスカウト』をやっていて、それがなんだか羨ましい時期があった。『ボーイスカウト』は少年たちがキャンプを通して自然に触れ、年少者にはロープやナイフの使い方、サバイバル技術や料理などを教えるというものであり、生きて行く上で必要な技術をいくつも学ぶことができるのである。
その『ボーイスカウト』でもう一ついいなと思った点が『内輪での鬼ごっこ』だ。学校とは別に『ボーイスカウト』の人だけで続いており、入れてほしいと頼んでも
「これは俺らだけでやってるやつだから無理」
といった具合に入れてはもらえず、なんだか寂しい気もしたが、別にぼくだけが入れてもらえなかったわけでもなかったので、“グループを大切にしているのはいいことだったんだろうな”と今になったら思える。
*耳鼻科の話
今はそうでもないのだが、小学生だった頃は鼻炎が酷く、隣町の御影にある高野耳鼻科までよく車で送ってもらっていた。ここでは鼻に管を入れて鼻水を吸い出すのだが、鼻の奥まで入れるので、これが結構痛いのであった。
それで耳鼻科に行くのは憂鬱に感じ、あまり気が進まなかったのだが、この後に機械から出る煙を吸引すると鼻と喉が一気に楽になるので、それが終わってから帰ると爽快な気分になるのであった。この耳鼻科には、仲の良かったけんちゃんも通っていて、たまに会って話したりもしていた。
ただ、ここの他に近所の摂津本山駅の近くにもよさげな耳鼻科があるにも関わらず、母は自分が決めた納得の行く所へしか行かないというこだわりがあったので、そういうところは今日のぼくの性格にも影響を及ぼしているのかなと今になって思う。
他のクラスの子が耳から血が出た話に恐怖したりしながらも、ぼくはせっせと耳鼻科に通い続けるのであった。
*道草ばかりの帰り道の話
学校の帰り道というのはなぜあんなに短いのに魅力的なんだろうと思うことがある。5年生になりたての時、4年生で同じクラスだったきたと一緒に帰る約束をしていたのだが、すっぽかされて一人で帰るはめになったことがあった。たぶん悪気はなく、小学生は忘れっぽいので仕方がないことだと思う。
そこで、普段帰っていた東側の道ではなく、いつも行きしに通っていた西側の道から帰ることにした。子供は下の方を、大人は上の方を見ながら歩くというが、ぼくもご多分にもれず下を見ながら歩き、目の前にある犬のフンを難なく避けながら進んで行った。
すると、何かの気配に気が付いて見上げると、上に線路が通っているトンネルの壁にヘビがまとわりついて、ぼくを見下ろしながら舌をチョロチョロ出しているではないか。これは困ったなと思い、いなくなくのを待っていたが、いつまで経っても一向にどこかへ行く気配がない。
そこで意を決して通過しようとしたのだが、勢いよく通ったせいでヘビの方も驚いたのかぼく目掛けて壁から身を乗り出してきた。一体どうやってはりついているんだと思う余裕もなく、間一髪かまれずに済んだ。
後にも先にもヘビに襲われたのはその時だけだったが、今にして思えば別の道を通るようにすべきだったと思う。その後、落ちていた石を蹴り、枝を拾って得意げに歩きながら家まで帰ったのであった。
*さとうの話
5年生の時に同じクラスだった佐藤くんという友達がいて、ある日、図工の時間に少しじゃれあって遊んでいたのだが、グーパンで『頭の右側』を軽く叩かれて、その時にぼくは視点が合わなくなってしまって、5分くらいそのままの状態になってしまったことがあった。
回りや先生に言おうとしたが、みんな気付いてくれず、物が3重に見えて、もうずっとこのままかもしれないと、かなり焦ってしまった。どうやって解決したかというと、自分で『頭の左側』を何回か強く叩いて、バランスを取ったことで視点が元に戻り、普通に見えるようになった。今でも別に何の後遺症もなく暮らせているが、この時にこのままだったらと思うと少し恐ろしくはある。さとうから
「なに自分で叩いとんねん、アホちゃうか」と言われ
「うるさい、お前力強いんじゃ。目おかしなったやろ」
というやり取りを経て少し喧嘩になったものの、それからも普通に仲良くしていた。このさとうには天敵がいて、植竹くんという子が水泳の授業の時になぜかさとうの席に座ってタオルを敷かずに着替えるのだが、さとうがやめてくれと言ってもなぜかやめようとはしなかった。結局5年生の水泳の授業の間中そんな調子で彼が言うには「この席が気に入っているから」だそうだ。
だが、それよりも可哀想だと思ったのは、彼は6年生の2学期に親の仕事の都合で引っ越すことになり、みんなと一緒に卒業式に出られなかったことだ。一応卒業アルバムは送ってもらえたようだが、“卒業式の日だけでも参加できたらよかったのにな”と今になっても思う。
*神戸での習字の話
小学校高学年になっても、親の意向で習字をやっていて、家の近くの『北畑会館』というところに通っていた。だいたいどこもそうなのかもしれないが、そこも千葉で習っていた時と同じくおばあさんが先生をしていた。
ただ、千葉の時と違ってそのおばあさんは結構嫌味を言ってくるタイプの人で、ぼくはこの人がわりと苦手だった。同じクラスの岡野もそこに通っており、ある時家が近いので一緒に帰っていて習字の話になったことがある。
「おかの、明日習字行く日やんな?」
「そうやな。あ~めんどくせ」
「なんか俺、あの先生あんま好きじゃないんよな」
「おれも!あのババアめっちゃ嫌い」
「そうやんな!なんかいつも嫌味言うて来るし」
「俺、正直もうあっこ行きたくないねん」
「俺もやわ。行くの嫌になって来てる」
「一緒に辞めん?」
「そうやな、そうしよう。習字ならもう十分やったし」
悪口というのは得てして盛り上がるものなのだろう。それから家に帰るまでずっと、二人はこの話題で持ち切りだった。そしてそこで、帰ってから親に『いかに習字が上手くなったか』を力説し、来年から塾に行くという約束で辞めることを許してもらった。断言するが、あんなもん絶対人生に必要ないし、世間の風潮に騙されているだけなのである。
ぼくは小学生の習い事は、将来の役に立つ『英語教室』(日本では大学受験で英語が必須であるため)と『スポーツ』(男子はサッカー、女子は空手か合気道が良いと思う)、そしてその子がどうしてもやりたいのならあともう一つ、くらいにすべきだと考えており、それ以外は無意味なのでなるべくやらない方がいいと思う。人生は短く、洗練されて来ている今の時代、あれこれ無駄なことをやるよりも、『役に立つスキル』を身に付けるべきでなのである。
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