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第43話 約束
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静岡リーグ最終試合、県内最強チームである静岡チャンピオンズとの対戦を前に、先日の気まずさから友達の家を転々としていた昴であったが、遂に瑞希との話し合いが持たれた。ここでは保がその責任感の強さを遺憾なく発揮し丁寧に話を切り出した。
「お前ら本音で話し合ってんのか?よそ行きの一張羅ばっか着てよ。そんなんで恋人って言えんのか?かっこ悪くても自分のこと分かってもらおうって、相手のこと分かってあげようって、それが恋愛なんじゃねえのか?」悔しいけどその通りだった。
「蓮はどう思う?」勘九郎が不意に話を振る。
「う~ん。僕は昴さんみたいに経験多くはないですけど、彼女の前では弱いとこ見せてると思いますよ。まあもともと強い人ではないんですけどね」
それを聞いて友助も素直な気持ちを吐露する。
「俺は昴さんが羨ましいですよ。選抜に行くかどうか決められて、行きたいと言えば、AFCにも出られて。人間は失って初めてその大切さに気付くんです。贅沢ですよ、そんな人生」それを受けて、当の昴もそう感じていたようだ。
「そうだよな。一人っ子で小さい頃から欲しい物はなんでも買ってもらえてさ。わがまま言っても怒られることなんかなかったし。それって案外不幸なことなのかもな。いつでも手に入るって、変わりはいくらでもあるって、そう思って、いろんなものを大事にしてこなかったんだ。そのバチが今当たってんのかもな」
「そうですよ。人生どっかで帳尻が合うようになってるんです。誰も楽に生きることなんてできないんですよ。今は自分自身を見つめ直す時期なんだと思います」
「そうだよな。きっと人間ってのは、苦労して手に入れるからこそ大切にするんだ。簡単に手に入っちまうと有難みってもんがねえんだ。だから感謝を忘れる。自業自得なんだよ」
「乗り越えましょうよ、昴さんならできる筈です。悲しい過去なら塗り替えましょう。都大会決勝でのあの出来事、辛いけど乗り越えられるはずです」
それを聞いた昴は少し遠い目をした後、ゆっくりと重い口を開いた。
「入ってたハズだった。自分なら絶対に決められた場面だった。けど、臆病風に吹かれて、自分かわいさにチームを犠牲にしてしまったんだ」
「責められたことは、もういいんじゃないですか?悔やんでも何も始まりませんよ」
昴は小さく首を振った。
「誰も責めなかったよ。けど、逆にそれが辛かったんだ。なんであの時、自分を信じて勇気が出せなかったんだろうって。ずっと思い悩んで、あれから何点取っても素直に喜べなくなったんだ。あの試合を最後にサッカーを引退した仲間もいる。大好きだったサッカーが、日に日に嫌いになりそうになるんだ」
「昴さんーー」
「けど、何度辛いことがあっても、どんなに苦しくても、どうしても嫌いになれなかった。結局大切なものなんて、最初から分かり切ってたってのに」
昴はゆっくりと瑞希の方に歩み寄ると、真っ直ぐにその目を見つめた。
「俺、やっぱり瑞希が好きだ。いっぱい泣かせて傷つけてしまったけど、瑞希のこと諦めきれないんだ」
「うん――私も」
「俺のこと許してくれるのか?」
「あれから考えたんだけど、私には昴くんしか居ないかなって。どれだけ泣いても、やっぱり好きなんだなって。だけど、条件付きでね」
「――条件って?」
瑞希は昴の手を握って、しっかりとその目を見つめた。
「ねえ――プロになってよ」
「えっ!?」
「ここまで私を泣かせたんだから、もう一回カッコイイとこ見せてよ」
「瑞希――」
「私、信じてるよ。昴くんだったらできるって、またもう一回やれるって」
「――分かった。俺、絶対プロになってみせるよ!!」
「もう私のこと泣かさないでよ」
「ああ、約束する」
昴は男として、瑞希とのこの約束だけは、絶対に守り通そうと心に決めた。
「お前ら本音で話し合ってんのか?よそ行きの一張羅ばっか着てよ。そんなんで恋人って言えんのか?かっこ悪くても自分のこと分かってもらおうって、相手のこと分かってあげようって、それが恋愛なんじゃねえのか?」悔しいけどその通りだった。
「蓮はどう思う?」勘九郎が不意に話を振る。
「う~ん。僕は昴さんみたいに経験多くはないですけど、彼女の前では弱いとこ見せてると思いますよ。まあもともと強い人ではないんですけどね」
それを聞いて友助も素直な気持ちを吐露する。
「俺は昴さんが羨ましいですよ。選抜に行くかどうか決められて、行きたいと言えば、AFCにも出られて。人間は失って初めてその大切さに気付くんです。贅沢ですよ、そんな人生」それを受けて、当の昴もそう感じていたようだ。
「そうだよな。一人っ子で小さい頃から欲しい物はなんでも買ってもらえてさ。わがまま言っても怒られることなんかなかったし。それって案外不幸なことなのかもな。いつでも手に入るって、変わりはいくらでもあるって、そう思って、いろんなものを大事にしてこなかったんだ。そのバチが今当たってんのかもな」
「そうですよ。人生どっかで帳尻が合うようになってるんです。誰も楽に生きることなんてできないんですよ。今は自分自身を見つめ直す時期なんだと思います」
「そうだよな。きっと人間ってのは、苦労して手に入れるからこそ大切にするんだ。簡単に手に入っちまうと有難みってもんがねえんだ。だから感謝を忘れる。自業自得なんだよ」
「乗り越えましょうよ、昴さんならできる筈です。悲しい過去なら塗り替えましょう。都大会決勝でのあの出来事、辛いけど乗り越えられるはずです」
それを聞いた昴は少し遠い目をした後、ゆっくりと重い口を開いた。
「入ってたハズだった。自分なら絶対に決められた場面だった。けど、臆病風に吹かれて、自分かわいさにチームを犠牲にしてしまったんだ」
「責められたことは、もういいんじゃないですか?悔やんでも何も始まりませんよ」
昴は小さく首を振った。
「誰も責めなかったよ。けど、逆にそれが辛かったんだ。なんであの時、自分を信じて勇気が出せなかったんだろうって。ずっと思い悩んで、あれから何点取っても素直に喜べなくなったんだ。あの試合を最後にサッカーを引退した仲間もいる。大好きだったサッカーが、日に日に嫌いになりそうになるんだ」
「昴さんーー」
「けど、何度辛いことがあっても、どんなに苦しくても、どうしても嫌いになれなかった。結局大切なものなんて、最初から分かり切ってたってのに」
昴はゆっくりと瑞希の方に歩み寄ると、真っ直ぐにその目を見つめた。
「俺、やっぱり瑞希が好きだ。いっぱい泣かせて傷つけてしまったけど、瑞希のこと諦めきれないんだ」
「うん――私も」
「俺のこと許してくれるのか?」
「あれから考えたんだけど、私には昴くんしか居ないかなって。どれだけ泣いても、やっぱり好きなんだなって。だけど、条件付きでね」
「――条件って?」
瑞希は昴の手を握って、しっかりとその目を見つめた。
「ねえ――プロになってよ」
「えっ!?」
「ここまで私を泣かせたんだから、もう一回カッコイイとこ見せてよ」
「瑞希――」
「私、信じてるよ。昴くんだったらできるって、またもう一回やれるって」
「――分かった。俺、絶対プロになってみせるよ!!」
「もう私のこと泣かさないでよ」
「ああ、約束する」
昴は男として、瑞希とのこの約束だけは、絶対に守り通そうと心に決めた。
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