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第29話 曲者揃いの代表戦
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試合は日本代表ボールでのキックオフとなり、港が鷹揚にボールをキープすると、前線の焔へとパスを通した。普段共にプレーしているかと思えるほどの見事な連携で、焔が瞬時に見せたペダラータに、フィクソのロナルド・マクドナルドが戸惑っている間に強烈なシュートが放たれた。これは惜しくもポストの横を通過したが、ゴレイロのポール・ダイポールは、危機感を感じたのか鋭く声を荒げた。
そしてオーストラリア代表は『ケブラ』と呼ばれる特殊な戦術を取ってきており、これは折れるという意味で、パスを貰い易いように一度別の方向に動いてからマークマンを外すプレーのことである。彼らはこれを得意とし、十八番として多用していた。
日本代表は、この戦術に肝を冷やしはしたが、名古屋アレンジャーズ綴、綻の糸偏コンビのブロック&コンティニューによってチャンスを演出し、前線の焔まで繋いで行くと、再びペダラータからのシュートでの得点によって1対0とすることができた。
対して、オーストラリアボールとなり、ゴールキックから前線へとパスが回ると、アラのリッキー・トリッキーが巧みにディフェンスの間を縫ってきた。繰り出されたこの『カットイン』は、元オランダ代表で10年のWCスペイン大会で活躍を見せたフライング・ダッチマンの愛称があるアリエン・ロッベンも得意としていた技だ。
そのまま加速したリッキー・トリッキーは、難しい角度からだがループシュートを決め切り、自らの幸運を喜んで目の前で十字を切り、神への感謝を示した。
そして、今回の大会で招集されたマネージャーは、アルフレッド新潟の東洋 瑠偉、立川アルバトロスの大橋 璃華、ズンダブロッカ仙台の河合 瑚奈に、山端 瑞希を加えた4名で、髪色がグラデーションのルイ、バレイヤージュのミズキ、ハイライトのリカ、モノトーンのコナと遠巻きにもわりと分かりやすかった。
「それにしても見事な個人技ね。動きが徹底していて、惚れ惚れするわ」
「なんかめっちゃキレがありますもんね、カックカク」
「それ思いました!すっごい足に負担掛かりそう」
「あ、チョウチョ!!」
そして、性格的にも解説好きの瑠偉、しっかり者の瑞希、イエスウーマンの璃華、天然の瑚奈で、何気に調和が取れているのであった。
オーストラリア代表は『ドリブルアット』と呼ばれる味方に向かって近づく戦術で戦況を打開しようと試みるも、港が繰り出したクライフターンに惑わされたピヴォのアレク・アレックスが引き離された隙を突かれて、手痛い追加点を奪われた。
ここで、2対1と状況的に少し余裕が出て来たため、猿渡監督は好調の焔に代えて昴を出場させることにした。交代で出た昴は颯爽とピッチを駆け巡ると、早速必殺のふらふらフェイントを見せつけ、シュートを放って見せた。マークマンとして着いていたロナルド・マクドナルドは、そのあまりの速さに対応することができなかった。
それから勢いに乗った昴は、後半18分2点目の得点を上げた。
「オー ヒー イズ スシボンバー!!」
アラのオットー・パトリオットは、感嘆のあまり大きな声を上げた。
それからリッキー・トリッキーのゴールから控えのオルス・オスマンを含めてのロボットダンス、アイーン、両手のグーを体の前で回す、一時停止、左右対称でダンスというパフォーマンスには押され気味であったものの、そのまま時間は流れて行き、日本代表は大事な初戦で見事勝ち星を上げることができた。
試合が終わると、昴は先程の疑問を解消しようと金に聞いてみる。
「金さん、スシボンバーって何ですか?」
「ああ、日本人が大量得点すると、そう言われるんだよ。ドイツ人が爆撃機、デア・ボンバーって呼ばれるから、そこから来てる言葉だな。ミュラーなんかがそうだよ」
ゲルト・ミュラーは元西ドイツの選手で、どんな体勢からでもゴールネットを揺らせるというスタープレーヤーであった。
日本代表は続く24日キルギス代表との試合で『ピサーダ』と呼ばれるヒールパスに悪戦しながらも攻めの一手で打開して2対0で勝利し、迎えた25日の中国戦で、『デスカルガ』と呼ばれるサイドへ開く戦術に苦闘ながらも、堅実に守備を固めて、またしても白星を上げることができた。昴は試合後、林と感想を述べあう。
「中国ってわりと強いイメージがありましたけど、そうでもなかったですね」
「ああ、なんでも中国は、大エースが居なかったみたいだぞ。王なんとかってヤツ」
「あ、そう言えばなんだか統率する選手が居なくて、連携が取れてませんでしたね」
「そうそう。その大エースがパーフェクトなんだってさ」
“完璧ってどんななんだろ?”昴は気にはなったが、今は確かめる術はなかった。
それから日本代表は26日パキスタンとの試合で、あわや引き分けかと思われたが、ズンダブロッカ仙台、馳川のパワープレーでの得点により予選リーグをトップで通過することができた。
そしてオーストラリア代表は『ケブラ』と呼ばれる特殊な戦術を取ってきており、これは折れるという意味で、パスを貰い易いように一度別の方向に動いてからマークマンを外すプレーのことである。彼らはこれを得意とし、十八番として多用していた。
日本代表は、この戦術に肝を冷やしはしたが、名古屋アレンジャーズ綴、綻の糸偏コンビのブロック&コンティニューによってチャンスを演出し、前線の焔まで繋いで行くと、再びペダラータからのシュートでの得点によって1対0とすることができた。
対して、オーストラリアボールとなり、ゴールキックから前線へとパスが回ると、アラのリッキー・トリッキーが巧みにディフェンスの間を縫ってきた。繰り出されたこの『カットイン』は、元オランダ代表で10年のWCスペイン大会で活躍を見せたフライング・ダッチマンの愛称があるアリエン・ロッベンも得意としていた技だ。
そのまま加速したリッキー・トリッキーは、難しい角度からだがループシュートを決め切り、自らの幸運を喜んで目の前で十字を切り、神への感謝を示した。
そして、今回の大会で招集されたマネージャーは、アルフレッド新潟の東洋 瑠偉、立川アルバトロスの大橋 璃華、ズンダブロッカ仙台の河合 瑚奈に、山端 瑞希を加えた4名で、髪色がグラデーションのルイ、バレイヤージュのミズキ、ハイライトのリカ、モノトーンのコナと遠巻きにもわりと分かりやすかった。
「それにしても見事な個人技ね。動きが徹底していて、惚れ惚れするわ」
「なんかめっちゃキレがありますもんね、カックカク」
「それ思いました!すっごい足に負担掛かりそう」
「あ、チョウチョ!!」
そして、性格的にも解説好きの瑠偉、しっかり者の瑞希、イエスウーマンの璃華、天然の瑚奈で、何気に調和が取れているのであった。
オーストラリア代表は『ドリブルアット』と呼ばれる味方に向かって近づく戦術で戦況を打開しようと試みるも、港が繰り出したクライフターンに惑わされたピヴォのアレク・アレックスが引き離された隙を突かれて、手痛い追加点を奪われた。
ここで、2対1と状況的に少し余裕が出て来たため、猿渡監督は好調の焔に代えて昴を出場させることにした。交代で出た昴は颯爽とピッチを駆け巡ると、早速必殺のふらふらフェイントを見せつけ、シュートを放って見せた。マークマンとして着いていたロナルド・マクドナルドは、そのあまりの速さに対応することができなかった。
それから勢いに乗った昴は、後半18分2点目の得点を上げた。
「オー ヒー イズ スシボンバー!!」
アラのオットー・パトリオットは、感嘆のあまり大きな声を上げた。
それからリッキー・トリッキーのゴールから控えのオルス・オスマンを含めてのロボットダンス、アイーン、両手のグーを体の前で回す、一時停止、左右対称でダンスというパフォーマンスには押され気味であったものの、そのまま時間は流れて行き、日本代表は大事な初戦で見事勝ち星を上げることができた。
試合が終わると、昴は先程の疑問を解消しようと金に聞いてみる。
「金さん、スシボンバーって何ですか?」
「ああ、日本人が大量得点すると、そう言われるんだよ。ドイツ人が爆撃機、デア・ボンバーって呼ばれるから、そこから来てる言葉だな。ミュラーなんかがそうだよ」
ゲルト・ミュラーは元西ドイツの選手で、どんな体勢からでもゴールネットを揺らせるというスタープレーヤーであった。
日本代表は続く24日キルギス代表との試合で『ピサーダ』と呼ばれるヒールパスに悪戦しながらも攻めの一手で打開して2対0で勝利し、迎えた25日の中国戦で、『デスカルガ』と呼ばれるサイドへ開く戦術に苦闘ながらも、堅実に守備を固めて、またしても白星を上げることができた。昴は試合後、林と感想を述べあう。
「中国ってわりと強いイメージがありましたけど、そうでもなかったですね」
「ああ、なんでも中国は、大エースが居なかったみたいだぞ。王なんとかってヤツ」
「あ、そう言えばなんだか統率する選手が居なくて、連携が取れてませんでしたね」
「そうそう。その大エースがパーフェクトなんだってさ」
“完璧ってどんななんだろ?”昴は気にはなったが、今は確かめる術はなかった。
それから日本代表は26日パキスタンとの試合で、あわや引き分けかと思われたが、ズンダブロッカ仙台、馳川のパワープレーでの得点により予選リーグをトップで通過することができた。
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