上 下
37 / 43

第37話 徐爵式

しおりを挟む
エミリアさんが来てから数日が経った。
屋敷は広いので空いている部屋に泊ってもらっている。

執務室でエミリアさんに仕事を教わっていると、アルトから通信魔道具に連絡があった。

『『今ちょっといいかな?』』

「はい、大丈夫です」

僕はエミリアさんに許可を貰い、アルトと話し始める。

『『ソウタに男爵の爵位を叙爵じょしゃくしようと思うのだけど…』』

「え?いきなりどうしたんですか?」

『『平民が領主っていうのは居ないからね。領主になれば貴族も相手にすることになるだろうし。爵位はあったほうがいいよ』』

「僕、何もしてませんけど?」

『『そこは大丈夫。ぼくを助けた事にしておくさ』』

ということで王城へ行くことになった。
玉座の間へ行って叙爵するらしい。
形式的な物らしいけど。


「『転移テレポテーション』」

「わぁ、本当に一瞬だわ」

エミリアさんは初の転移魔法で驚いていた。
転移先は、以前…転移用に用意してもらった部屋だ。
今回の式の為に、僕の服はオーダーメイドで作ってもらっていた。
結構な出費になってしまった。
僕はタキシード、コルネットはドレス、エミリアさんは普段のスーツだ。

「よく来たね」

アルトが軽く挨拶する。
最近よく話している所為か、久しぶりの感じがしない。

「一応玉座の間で徐爵式をするから、恰好だけ気を付ければ良いよ」



   *



「あー緊張した」

大勢の貴族たちが見守る中、叙爵式が行われた。
緊張し過ぎて手と足が同時に動いてた気がする。

「叙爵式が珍しいですからね。見物人が多いのも仕方が無いのでしょう」

エミリアさんが苦笑いする。
前もって言われた通りの言葉を返し、王様から剣を受け取って終わった。
僕が若いからなのか、周りの貴族たちがやたらと騒めいていたのが印象的だ。

廊下を三人で歩いていると。

「お疲れ様。戻ってゆっくり休むと良いよ」

向かい側から、アルトが笑顔で手を振って歩いてきた。



   *



『人間って大変ね~』

屋敷に戻ってくると、コルネットはベッドにダイブしていた。
転移したのはコルネットの部屋だ。
エミリアさんは今日は城に用があるらしい。
部屋で二人きりになっていた。

「確かに面倒くさいな」

僕はネクタイのひもを緩めた。
片っ苦しいのは疲れる。
コルネットはドレスを脱ぎ始めた。
彼女も窮屈な洋服を着ていたのだ。

「あ、着替えるんだね…僕、部屋から出るね」

ドアに手をかけようとした時、後ろからぎゅっと抱きしめられた。

「コルネット?」
『一緒に居よ?折角二人きりだし』

最近、仕事の引継ぎやらで忙しくて彼女に構ってあげてなかったな。

「うん。そうしよっか」



上着を放り投げて、僕たちはベッドで寝そべっていた。

『ソウタ、格好良かったよ』
「徐爵式の事?緊張してガチガチだったよ」

『うん。緊張してたね』
「だろ?格好悪い」

『そういうところも好き』
「うん」

彼女の瞳を見つめて、僕は優しくキスをした。

『ソウタ、もうそろそろ良いよね?』
「良いって何が…」

コルネットは下着を脱ぎ始めていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

隠された第四皇女

山田ランチ
ファンタジー
 ギルベアト帝国。  帝国では忌み嫌われる魔女達が集う娼館で働くウィノラは、魔女の中でも稀有な癒やしの力を持っていた。ある時、皇宮から内密に呼び出しがかかり、赴いた先に居たのは三度目の出産で今にも命尽きそうな第二側妃のリナだった。しかし癒やしの力を使って助けたリナからは何故か拒絶されてしまう。逃げるように皇宮を出る途中、ライナーという貴族男性に助けてもらう。それから3年後、とある命令を受けてウィノラは再び皇宮に赴く事になる。  皇帝の命令で魔女を捕らえる動きが活発になっていく中、エミル王国との戦争が勃発。そしてウィノラが娼館に隠された秘密が明らかとなっていく。 ヒュー娼館の人々 ウィノラ(娼館で育った第四皇女) アデリータ(女将、ウィノラの育ての親) マイノ(アデリータの弟で護衛長) ディアンヌ、ロラ(娼婦) デルマ、イリーゼ(高級娼婦) 皇宮の人々 ライナー・フックス(公爵家嫡男) バラード・クラウゼ(伯爵、ライナーの友人、デルマの恋人) ルシャード・ツーファール(ギルベアト皇帝) ガリオン・ツーファール(第一皇子、アイテル軍団の第一師団団長) リーヴィス・ツーファール(第三皇子、騎士団所属) オーティス・ツーファール(第四皇子、幻の皇女の弟) エデル・ツーファール(第五皇子、幻の皇女の弟) セリア・エミル(第二皇女、現エミル王国王妃) ローデリカ・ツーファール(第三皇女、ガリオンの妹、死亡) 幻の皇女(第四皇女、死産?) アナイス・ツーファール(第五皇女、ライナーの婚約者候補) ロタリオ(ライナーの従者) ウィリアム(伯爵家三男、アイテル軍団の第一師団副団長) レナード・ハーン(子爵令息) リナ(第二側妃、幻の皇女の母。魔女) ローザ(リナの侍女、魔女) ※フェッチ   力ある魔女の力が具現化したもの。その形は様々で魔女の性格や能力によって変化する。生き物のように視えていても力が形を成したもの。魔女が死亡、もしくは能力を失った時点で消滅する。  ある程度の力がある者達にしかフェッチは視えず、それ以外では気配や感覚でのみ感じる者もいる。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...