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お嬢様 平穏に過ごす 4 クロームside
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音と共に両手で持っていた木刀がいつの間にか消えていた。
いや、消えたのではない。
木刀は宙に舞っていた。
宙に舞った木刀はクルクルと回りながら部屋の隅の方まで飛んで行く。
「勝負ありですよ。クローム・サジタリア。」
喉元に剣先を向けられて、体がピクリとも動かなくなった。
(強い・・・。)
改めてそう思った。
学園の教師や王国の騎士も強い人が多くいたここの兵士は次元が違う。
鍔競り合いで押そうと思って力を入れても、びくともしない。
一旦引いて突破口はないかと思ってが、相手の隙が見つからない。
攻められる一方で、反撃らしいことは何もできなくて防ぐことで精一杯だった。
「俺に何が足りないというのですか・・・。」
力が足りないのか。
技術が足りないのか。
努力が足りないのか。
ここまで彼らと自分に差があるということに愕然とする。
「敗北を恥と思わないことです。」
「・・・えっ?」
ロンはスッと木刀を下ろした。
「何故敗北したのか、何が悪かったのか、自分に足らない分を何で補うか、考えた事はありますか?」
「そ・・れは、」
そんなこと考えた事がなかった。
同世代には負けた事はなかったし、騎士団や父親に敗北した時はただひたすら、技術や力が足りないだろうと、素振りの回数を増やしたり訓練の時間を増やしたりしていただけ。
それしか思い付かなかったのだ。
「君はまだ若い。気持ちが焦ってしまえば、必ず大ケガをする可能性があります。今、君に大切な事は、自分に何が出来て、何が出来ないか、それを見極めることです。」
「そーそー。坊っちゃんは振りが大きいし隙が出やすいから振りを小さくしたり、あと避けるときにいつも後方へ逃げるから、ギリギリでさける練習をした方がいいッス。」
ポンと肩を叩かれて、振り向いたらフェイだった。
その後ろにはイーゼス様もいる。
彼は腕を前で組んでいた。
「フェイ、よくクロームの改善点とかわかるな。俺にはわからなかった。」
「イーゼス様ひでぇ・・・オレ一応、ヴィクトリア領の軍人でッス。」
「観察力に関してはフェイがダントツですから。」
「ロン!良いこと言った!!」
そう言ってロンに人差し指を指すフェイ。
「・・・イーゼス様、人は見かけによらないものですね。」
「俺も最初ら思っていたからな。」
観察力とかあるのは、てっきりロンさんの方だと思っていた。
「クローム君、少し休憩を淹れて、休憩後また手合わせをしましょう。」
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