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2章・地位確立

俺は弟と勉強をしたいだけなのに

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「ハーちゃん!!久しぶりぃ!!」

「兄様!!お久しぶりです!!」

 現在は、兄弟間で交わされる親愛なるハグを取り行っている。
 お前たち、人前と対応が違いすぎるだろうとか思うかもしれないが、それは今更だ。気にしないで欲しい。
 この儀式は神聖なるものであるからして、邪魔立てするものには容赦しない。神聖と言うことは、身分などに縛られることはないのだ。
 しかし、神聖なものにもちょっかいをかけるものがいるのだ。
 そう、たとえば第一王子とか。

「長いハグだね。もう離れてもいいのではな「うっさいわぁぁあ!!」グハッ、、」

 失敬失敬。
 俺の護衛対象が鳩尾あたりを抑えて倒れている。 
 いや、注視するべきは鳩尾ではなく、頭かな?壁にいい音を鳴らして当ててたからね。
 うるさいコバエに手が出てしまったよ。
 そして、そんなコバエがもう一人いたようだ。

「ブランド様!!、何をなさっておいでです「チェスとーぉぉおー!!」グエッ」

 なんかいた近衛も殴り飛ばす。なんか、カエルを潰した音みたいなのが聞こえたんだけど。
 二人とも、俺の鳩尾への一発のノックアウトですわ。
   いや、待って。今俺が殴り飛ばしたのは、ハーウェザーの護衛では?
 王宮所属ならばどうとでも言い訳や美辞麗句を並べて適当に誤魔化すのだが、ハーウェザーの護衛となれば別問題だ。

「ハーちゃん、ごめんよ。護衛を殴り飛ばしてしまったよ。」

 なお、自分たちを守るはずである護衛を護衛対象が戦闘不能にしてしまったことは、気にしても仕方がないのでスルーする。

「大丈夫です。そんなことよりも、グレイル卿を倒すなんてすごいです。俺はグレイル卿に全く歯が立たないので。しかし、第一王子に危害を加えてしまって大丈夫でしょうか?」

 あらあら、ハーウェザーは優しいね。そんな子には飴ちゃんをあげちゃう。
 そこは、もちろん大丈夫。ただし、誰かに知られなければと言う制限があるが。
 使用人や護衛は俺たちがいる部屋にいないし、外にいる護衛も防音の結界を貼ってあるので大丈夫。問題点は、暗部だね。
 でも、暗部は大丈夫!!既に彼らは俺の味方味方だからね。

 やっぱり、王族だから暗部がいた。見つけるのには特に苦労しなかったが。
 新しい環境に新入りとして参入する場合は、その環境の表も裏を支配している人たちを味方にすることが鉄則だよね。だから、料理人と暗部を味方にした。
 まあ、その話は今度するとして、今は俺が気絶させてしまった人たちの対処だね。
 無難に、ベッドで寝かせておくべきだろう。


 さてはて、暇になってしまったね。
 ここは正攻法で、本来の仕事をすることにするか。 

 言うまでもないが、当人の公的な事情でない限り、先に進んでしまった授業の補講は行わない。
 
「ハーちゃん、時間ももったいないし、勉強を始めようか。今日は、言語の分野だよ。これは二人が揃ってから始めようと思ってたんだ。」

 生徒二人のうち一人が気絶している状況を生徒二人が揃っていると言って良いかは甚だ疑問だが、同じ部屋に二人いるのだからノープロブレム。

「やはり、兄様が教えて下さるんですね。最後の最後まで、教師の方の名前を知ることができなかったので疑問だったのですが、これで納得しました。」

 納得と言うのは、俺の名前を出すとハーウェザーの母親が騒ぐからだろう。

「母がすみません。ですが、安心して下さい。早々に爵位を継ぎ、兄様を安心安全な我が家に迎えたいと思っています。」

 まあまあ、なんて素晴らしいことでしょう。あの可愛かったハーウェザーが俺のために爵位を継ぐと言ったぞ!!
 興奮で夜しか眠れないね!
 ここは兄として弟を褒めてあげないと。

「ハーちゃんはこんなにも立派になって。俺は嬉しいよぉ。」

おっと、これを続けているといつまでも授業が進められない。

「そうだ、今日のために、言語用の教科書を作ってきたよ。これが、俺が現代語から推察して作った古代語の辞書ね。この辞書の内容は一言一句違えずに覚えてもらうから。」

「あ、の、兄様?これ分厚すぎじゃありませんか?大剣よりも重そうな本なんですけど?それに、古代語?ってなんですか?」

 俺力作の辞書に文句をつけるのか?流石のハーウェザーでも俺は怒るぞ。 
 それにしても、文句が多いね。仕方ないじゃないか。古代語は、異様に単語が多いからね。
 あ、そうだ。その辞書の利便性をしっかりとプレゼンしとかないとね。

「それ、背表紙がオリハルコンでできてるから、武器にもなるよ。いいでしょぉ。」

「すごいですね。なんか、無駄な技術って感じが否めません。いや、それより。あの、古代語ってなんですか?」

 古代語ってなんですか?
 古代語は古代語だよ。俺が馴染みある言葉で言えば、古語とか古典とかなんだけど、ちょっと異世界風にアレンジしてカッコよく言ってみただけなんだよね。
 まあ、つまりは読んで字の如くなわけで。

「そのまんまだよ。古代の文字。今はすでに使われてないけど、歴史とか魔法とかを学びたいなら、知らないと結構きついよ。なんせ、古代語が読めないと、読み物が読めないからねぇ。」

 本当だよ。
 家の図書館に古代語の本はあったけど、それを読むための辞書がないからね。
 日常的には古代語は使われなくなって、解読できなくて困ったよ。


 そう言えば、古代語の解読に少しだけ成功したぐらいに、俺の手の甲に知識の紋章が現れたんだっけ?覚えてないけど。


 ハーウェザーに懇切丁寧に古代語について説明したけど、よく分からなかったみたい。
 まあ、百聞は一見に如かず!!
 実際に、本を読んでもらおう!!

「あの、無理です。読めません。」

「んー、これは結構簡単だよ。この世界が誕生した時のことが神話みたいに書かれているんだ。明け透けなく言うと、聖書みたいなものだね。」

 ただ、歴史は権力者が都合よく変えてしまうし、証明することが出来ないから、どうなんだろうね。まあ、過去の二の舞にならないようにはできるけど。
 魔法なら、発動するかどうかで確認できるんだけどね。


 ?
 てことは、俺は彼らに古代語を一から、つまり、基礎から教えなくてはいけないと言うこと?
 いや、流石にそれは可愛いハーウェザーのためならいいけど、生意気なバーウィンのためと考えると少しばかりめんどくささが顔を表す。
 うん、バーウィンには辞書の丸暗記を宿題にして、講義はサボろう!!

 
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