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2章・地位確立

俺は訓練準備をしただけなのに

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 俺がバーウィンの家庭教師を勤めて一週間がたった。
 この一週間の感想は「めっちゃ優雅な日常だわ。」の一言だね。
 まだ、この生活を始めて一週間なので、日常ではないが。
 しかし、この生活がこれから続くとなると、バーウィンの家庭教師の件は受けて正解だったね。
 いや、流石にのんびりしすぎでは。
 だが、バーウィンがこれでいいと言ったのだ。
 と言うより、バーウィンにここまでにしてくれって言われたんだよね。俺の授業の進め方は結構早かったみたい。ハーウェザーに教えてた時は何も言われなかったのに。
 だから、バーウィンは午後からは復習。
 今までの俺の生活だと、屋敷内では孤児への教育に手一杯でのんびりする時間もなかったし、夜は夜で面白い噂話の収集に出掛けていたから、一日を掛けて忙しかったんだよ。


 一週間たちある程度生活リズムが決まってきたら、次は剣術魔法の訓練の時間が追加される。
 ここからが俺の本領発揮ってところだ。聞いたところによると、剣術や魔法の教師はいろいろな人がローテンションで回しながらやっていたみたい。一人に決まっていない理由はバーウィンが気に入る人がいなかったから。本来、気に入る気に入らない以前に近衛が教師となるが、バーウィンは近衛が嫌いだからね。
 ただ、今日からはバーウィン側からの指名で俺が剣術や魔法の教師も勤めることになった。

「ふっふっふっ、細胞まで壊してやる。」

「それ、俺に言ってる?」

 おっと。声に出てたようだ。心の中だけに留めておこうと思ったのに。
 聞かれてしまっては仕方がない。しっかりと、俺の教育方針を伝えておかねば。

「俺は、バーウィンの護衛騎士だけど、バーウィンを四六時中護衛することはできない。てか、したくない。だから、自衛手段を学んでもらう。」

「ああ、それは、まあ、仕方がないが、そこまで言い切る護衛はリュー以外いないと思うぞ。ちなみに、俺はリューとならどれだけ一緒にいてもいいぞ。」

「俺は嫌なんで。ってことで、ビシバシ鍛えていきます!!」

 バーウィンは相も変わらず、俺へ告白まがいのことをやってくる。
 そもそも、バーウィンが年下ってことで、可愛がるってことならできるんだけど、婚約って気持ちにはならないよね。一応年下だけど、俺の方が背低いし、体格細いんだけどね。
 無性に負けた感がある。




 そんなこんなで、俺たちは王城に併設してある訓練場に移動することにした。
 王城には訓練場がいくつかある。騎士団が四つあり、それに近衛を足した五つの訓練場がある。ちなみに、魔法師団は騎士団とセットに任務に当たることから、同数の四つある。 近衛は、剣術と魔法の両方が一定水準にならなければ所属できないため、近衛とセットになる魔法師団はない。近衛はいわゆるエリートであることは間違いないのだが、団長が現公爵当主であり、元王弟であることから、団員の態度が目に余ることが増えている。実際に、実力も落ちてきており、自己浄化もできていないことを考えると、間違いではないだろう。
 騎士団、魔法師団はどの団に属しても平等であるとされているが、主に行う仕事が大きく違う。第一は王城や王族の護衛、第二は王都の護衛、第三、第四は大半は魔物討伐、稀に王都の護衛となっている。
 仕事の危険性から、コネのある貴族子息子女は第一や第二に集まりやすい。
 逆に、コネがない平民や下級貴族は第二や第三など危険な任務が多い団に割り当てられる。
 
 王族の護衛が専売特許であったはずの近衛は、第一王妃毒殺の際に、毒殺を防ぐことができなかったため、信用が高くない。
 毒殺を契機に、今まで王族の護衛は近衛の独占であったが、それが解放されている。毒殺の際に、団長は解雇され、新団長としてまだ副団長であったバラル公爵が団長の座についた。
 実際には、第一王妃は毒殺があった際も団長はバラル公爵ではなかったが、権力に物を言わせ実権をバラル公爵が持っていたとされている。
 権力が強く表立っての声や行動はないが、バラル公爵が第一王妃毒殺に関わっていた可能性があるのではないかと、とは貴族界、特に王宮に出入りすることが多い貴族が噂をしていた。


 団長の交代で、信用が地に落ちることはなかったが、第一王子であるバーウィンが近衛を邪険に扱っても彼の瑕疵にならない程度には、近衛の評価は高くない。 

 
 と言う情報を王宮に出入りしている貴族に聞きまくった。
 聞きまくったと言うか、あっちから話してきたという感じだが。
 意外だったが、バーウィンの人嫌いを心配している貴族は多かった。
 もちろん、自分が親密になれたいことからの心配や焦りだと思うが、中には心から心配している人もいて驚いた。
 宰相が無能だと、城に来る貴族有能が集まるのかもね。


 しかし、話すだけでも疲れるね。今まで人と関わってこないボッチ生活を堪能してたから、沢山の人と関わると無性に疲れる。
 普通に疲れて今にも寝たいところだが、俺の今の役職は第一王子バーウィンの護衛騎士だ。彼に関わることで手を抜き、みすみす殺されたなんで、弟を守る以前に俺が死ぬことになりかねない。てか、王族を守れなかったら普通に死刑だ。
 それに、バーウィンは結構可愛いやつだから。庇護欲が湧くぐらい、致し方ない。

 
 騎士団や魔術団と同数の訓練場を設けている理由は、人数と訓練場の広さは言うまでもないが、騎士団同士での争いが起こりやすいからである。
 騎士団は分かりやすい派閥となり、派閥ができれば、比べたがるのが人間の性だ。 
 それに、王城直属の騎士団だ。権力による諍いが起こるに決まっている。


 と言うことで、俺たちが来たのは第四が所持する訓練所である。第四の訓練所に来た理由は、訓練に集中するためである。
 無駄に権力がある貴族は、自分の話を聞いてもらえるが当たり前だと思っているからね。訓練中だろうがなんだろうが、見境なく会話をしようとするだろう。
 そんなん邪魔でしょうがない。 

 許可取りは結構簡単だった。王族の名前を出して申請すれば、普通は二日掛かる申請がほんの数分で終わってしまった。
 それに、訓練所に到着したら団長直々に挨拶までしてもらった。

「本日は第四訓練所をお使いいただき、ありがとうございます。私、第四騎士団団長のバレット=ラグドと申します。何かありましたら、私にお申し付け下さい。」

「これは丁寧に。こちらこそ、急な申請に許可をおろしてもらって感謝している。今後も第四訓練所を使用すると思うから、よろしくお願いするよ。」

 まあ、俺の関心は団長直々の挨拶ではなく、外面100%のバーウィンだ。俺の前では砕けているから、外面バーウィンは新鮮だ。
 家庭教師を始めて少ししか経っていないが、自分の生徒が素晴らしい対応をしているところを見ると、嬉しくなるね。


 さてさて、ようやく俺の真骨頂、剣術、魔法の指南ができるよ。
 俺の誇れるものは今のところ、剣術と魔法だけだから、これはぜひ生徒に全てを教え切る勢いで頑張らねば!!
 俺は自分の中で未来の自分はエールを送った。

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