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輝石編
旅行の注意点
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発表された滞在地に、喉が引きつりヒュッと鳴った。
確かに生活水準は似ている。けれど、バトルものってどうなんだろう。戦いに巻き込まれたら、大怪我待ったなし。だから巻き込まれ無い様に、物語に関わらない様にする?でも正直、キャラクターに会いたい。けれど危険はイヤだ。でも会いたい。板ばさみだ。
「滞在期限に関しましては、選別編が終わるまでになっています。」
「選別編って、それぞれの石が選んだ二人の候補者が戦う、アレですか?」
「はい。第一部の主人公側が一同にかえす、お祭りみたいなアレです。」
主人公達が能力を得た原因の、不思議な石。それは二つに分かれた、一片だった。二つが揃うことで完全体となる石。もう一片を持つ組織は、主人公達の石を狙っていた。
「確か、石は元々異国の物。それを取り返しにきたのがモーリス達、敵対組織ですよね。」
「はい。順当であれば血筋であるモーリス達が、完全体で引き継いだ。ですが、石が選んだのは主人公である大和奏真。その為に片方だけを大和奏真達が手にした、という流れですね。」
何故、石は二つに分かれていたのか。何故、大和奏真達が選ばれたのか。いくつかの謎を残して、選別編は終わる。まぁ、第二部への布石であるのだが。
物語の流れを確認して歩いていると、道の先がキラキラと光っている壁で閉ざされている場所があった。それをトアさんも気がついたのだろう。光る壁の数メートル手前で歩きを止め、私もそれにならう。こちらを向いた彼は、真剣な眼差しで口を開いた。
「リョウコ様、もう少しでココを抜けます。ココを抜けると、先程話していたパラレルワールドへ入ることになります。そこで、お話しする事がございます。」
まだパラレルワールドに入ってなかったのか。そんな余所事を思っていた。するとトアさんは、同じ目線になる様向かい合うと、子供に言い聞かせる様に話しだした。
「あの出入り口を抜けるとパラレルワールドに入ります。その時、リョウコ様がその世界でどの様な立場で居たいのかイメージしてください。」
「どの様な立場?」
「はい。例えば主人公の近所の方でも、同級生でも。アンケートよりも明確にお願いします。それに合わせた身体的調整と、認識的調整を行います。」
トアさんが指を一本ずつ上げながら説明してくれる。それに私が待ったをかけた。
「その二つの、調整ってなんですか?」
「えっと、そう、ですね。まず、ここまでの道中は、弊社が使用している世界同士を繋ぐ通路です。」
私の問いに、わかり易くしようとしているんだろう。ゆっくり噛み砕いて説明してくれる。
「あの出入り口からが、パラレルワールドになります。お客様自身の身体ですと何か合った時に大変なので、その世界に対応した姿を纏ってもらいます。」
「つまりは、対応する姿になる為の身体的調整と認識的調整ってことですか?」
「はい。身体的調整は、お客様の体に損失を与えない為の、パワードスーツみたいなものです。認識的調整は、そのパワードスーツがその世界で違和感にならない様にするものです。」
「その技術の詳しい説明とかって?」
「企業秘密となりますのでお伝え出来ません。ですが、人体へ害のある影響はありませんので、ご安心下さい。」
「ですよねー、えっと。ちょっと考えさせて下さい。」
技術の説明をダメモトで聞いてみたけれど、企業秘密との返答に、納得する。いや、聞いても解らないと思うが、聞いてみたくなるのが人の性である。
さてトアさんからの説明で、立場のイメージが重要である事が分かった。分かった故に悩む。
物語がどれだけ進んでいるのか分からないが、キャラクター達には会いたい。だけど、大和奏真のクラスメイトだと何かと巻き込まれそうだ。主人公達の騒動というか、物語の本筋は出来れば遠くから見ていたい。観たい場面は有れど、参加したいでは無いのだから。
遠くから見るなら、近所の人くらいが良いのではないだろうか。確か大和奏真達の物語は、住んでいる場所周辺が多かったはず。近所のお姉さんって立ち位置なら、通りすがりが許されるかもしれない。
「決まりましたでしょうか?入り口を通る際には、そのイメージを強く保つ様にお願いします。」
「わかりました。」
では、この先へとお進み下さい。という言葉に背を押され、光の壁へと踏み出した。私はご近所さん、私は近所さん、と心の中で呟きながら。
確かに生活水準は似ている。けれど、バトルものってどうなんだろう。戦いに巻き込まれたら、大怪我待ったなし。だから巻き込まれ無い様に、物語に関わらない様にする?でも正直、キャラクターに会いたい。けれど危険はイヤだ。でも会いたい。板ばさみだ。
「滞在期限に関しましては、選別編が終わるまでになっています。」
「選別編って、それぞれの石が選んだ二人の候補者が戦う、アレですか?」
「はい。第一部の主人公側が一同にかえす、お祭りみたいなアレです。」
主人公達が能力を得た原因の、不思議な石。それは二つに分かれた、一片だった。二つが揃うことで完全体となる石。もう一片を持つ組織は、主人公達の石を狙っていた。
「確か、石は元々異国の物。それを取り返しにきたのがモーリス達、敵対組織ですよね。」
「はい。順当であれば血筋であるモーリス達が、完全体で引き継いだ。ですが、石が選んだのは主人公である大和奏真。その為に片方だけを大和奏真達が手にした、という流れですね。」
何故、石は二つに分かれていたのか。何故、大和奏真達が選ばれたのか。いくつかの謎を残して、選別編は終わる。まぁ、第二部への布石であるのだが。
物語の流れを確認して歩いていると、道の先がキラキラと光っている壁で閉ざされている場所があった。それをトアさんも気がついたのだろう。光る壁の数メートル手前で歩きを止め、私もそれにならう。こちらを向いた彼は、真剣な眼差しで口を開いた。
「リョウコ様、もう少しでココを抜けます。ココを抜けると、先程話していたパラレルワールドへ入ることになります。そこで、お話しする事がございます。」
まだパラレルワールドに入ってなかったのか。そんな余所事を思っていた。するとトアさんは、同じ目線になる様向かい合うと、子供に言い聞かせる様に話しだした。
「あの出入り口を抜けるとパラレルワールドに入ります。その時、リョウコ様がその世界でどの様な立場で居たいのかイメージしてください。」
「どの様な立場?」
「はい。例えば主人公の近所の方でも、同級生でも。アンケートよりも明確にお願いします。それに合わせた身体的調整と、認識的調整を行います。」
トアさんが指を一本ずつ上げながら説明してくれる。それに私が待ったをかけた。
「その二つの、調整ってなんですか?」
「えっと、そう、ですね。まず、ここまでの道中は、弊社が使用している世界同士を繋ぐ通路です。」
私の問いに、わかり易くしようとしているんだろう。ゆっくり噛み砕いて説明してくれる。
「あの出入り口からが、パラレルワールドになります。お客様自身の身体ですと何か合った時に大変なので、その世界に対応した姿を纏ってもらいます。」
「つまりは、対応する姿になる為の身体的調整と認識的調整ってことですか?」
「はい。身体的調整は、お客様の体に損失を与えない為の、パワードスーツみたいなものです。認識的調整は、そのパワードスーツがその世界で違和感にならない様にするものです。」
「その技術の詳しい説明とかって?」
「企業秘密となりますのでお伝え出来ません。ですが、人体へ害のある影響はありませんので、ご安心下さい。」
「ですよねー、えっと。ちょっと考えさせて下さい。」
技術の説明をダメモトで聞いてみたけれど、企業秘密との返答に、納得する。いや、聞いても解らないと思うが、聞いてみたくなるのが人の性である。
さてトアさんからの説明で、立場のイメージが重要である事が分かった。分かった故に悩む。
物語がどれだけ進んでいるのか分からないが、キャラクター達には会いたい。だけど、大和奏真のクラスメイトだと何かと巻き込まれそうだ。主人公達の騒動というか、物語の本筋は出来れば遠くから見ていたい。観たい場面は有れど、参加したいでは無いのだから。
遠くから見るなら、近所の人くらいが良いのではないだろうか。確か大和奏真達の物語は、住んでいる場所周辺が多かったはず。近所のお姉さんって立ち位置なら、通りすがりが許されるかもしれない。
「決まりましたでしょうか?入り口を通る際には、そのイメージを強く保つ様にお願いします。」
「わかりました。」
では、この先へとお進み下さい。という言葉に背を押され、光の壁へと踏み出した。私はご近所さん、私は近所さん、と心の中で呟きながら。
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