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3章
地上へ
しおりを挟む「無事だったんだ、エロカタ」
三姉妹の末っ子カシアキさんの声が届いたよ。
ロアロク国に残した俺の分裂個体を通じてだけどね。
「結構ピンチだったじゃない」
「見てたんだ」
カシさんが個体の背中に手を添えれば、俺の視界や感情を感じ取れる。
「まあ、こっちはヒマだからねえ。
あっと、なに考えてんだテメエ! 私がエロカタを心配してたと思ってンだろ。
自惚れるなよ。
さあ、ケリがついたンだから、さっさと戻って来いよ。
私ら、早くキキンに戻りたいんだからさ」
「あ、分かりました~」
地上に戻る前に、俺はアイテム収納庫を展開させ、SSたちを入れることにしたよ。
地道に上の階層を登っても地上に戻れるけど、簡単で早い収納庫を進める。
「「「ギャッピ――ッッ!!」」」
「きゅーきゅーきゅー!!」
逃げ惑う2期生たちと青ちゃんを触手で捕まえた。
「怖くないから、ほんと。見た目ほど怖くないんだから」
「「「「やだやだやだやだやだ!!」」」」
「きゅーの、きゅーきゅー!」
「あっと言う間に到着するんだから、安心して」
言ってもきかない。
「仕方がないなあ。じゃあ先に1期生たちに入ってよ。先輩が入れば少しは信用するかも」
「……こ。これに……は、入るわけなの?」
「もちろん」
ランちゃん、スーちゃん、ミキちゃんが、暗黒色に渦巻く宇宙のような投入口を覗き見て、スライムボディをガタガタ震わせる。
「…………」
「まさか、怖いわけ?」
「……ぜんぜん。ぜんぜんだよ。軽い軽い」
そうは見えないけど。
◆
1時間かな、さんざん苦労して、やっと仲間全員をアイテム収納庫に入れたよ。
地上に戻る前にもう一つ。
眷属(下僕)たちと同じ身長の分裂個体を1体作ったね。
「いいかい、みんな」
「「「はっ!」」」
俺の周りには軍隊整列した眷属エインシェントがいるよ。
「俺の分身を残しておくから。
分身と言っても、俺の意思で動かせる。俺そのものだから。
以後、指示に従って欲しい」
「はっ!!」
「まず、この世界のことだ。
ツェーン迷宮最下層に住むエインシェントたちが地上を侵略しないよう、君らが中心となって活動して欲しい。
反対派が多くて難しいようなら教えて。俺が君たちの仲間、眷属を増やしてあげるから」
「「「「御意!」」」」
知能が高い種だから、話し合いで解決できないかな。
彼らエインシェントの中にも、オボスに反対していた派閥だってあるだろうし。
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