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3章

エンド 

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 レベル30に到達すると、SSSレアスライムの活動が停止。
 迫りくる死を、ひしひしと実感していた。


 ~ 30レベルまでの経験値 ~

 あと 452239

 SSレア・エインシェント 15体で 達成
 
 
 テロップがそう教えてくれたよ。
 そうなのか、目前の戦士を15匹倒したら終わりってわけか。

 SSたちだけでも遺跡から出せないだろうか。
 ダメ元で、天井を突き破ってみたらどうだろう。
 
 ぐむぐむぐむ、と5匹のエインシェントがワイバーンタイプに変型したよ。
 人間モードでは、俺に太刀打ちできないと判断したからだろうね。
 
 2匹のSSエインシェントが俺たちに口を向けた。
 突き出たその口が開き、光の粒子が集まってゆく。『爆炎』の発射体制だ。

 こんな狭い部屋で、ぶっ放して大丈夫か?
 俺が倒壊を心配する必要はないだろう。

 さて、どうすればいい。
 考えたのは、俺の仲間全員を触手で繋いでおく。
 敵が爆炎を放ってきたら、躱して一番右の廊下に逃げよう。
 この部屋に到着したときの廊下だ。
 戻れるとは限らない。また、この部屋に戻るかもしれないけど、1つ前の部屋に戻れる可能性はある。
 加えて分裂個体を30作り、追手を足止めする。

 ズワッギュ――――――ンッッ!!
 ドオオオオオオ――ンッッ!

 イメージ通り、爆炎を上手く躱せたよ。
 爆音と熱風を後ろに感じながら、壁沿いに廊下を目指す。

「はやい、はや~い♪」
「楽しい~」
「キッキャ♪」

「ちょっと、静かにっ!」

「「「「はーい!」」」」
 
 すると、手裏剣のような極薄巨輪が飛んできた。
 躱す、躱す、躱す。 
 シュンッと風切音が後から発生。

 6度躱した後だ。
 あともう少しで廊下に逃げ込める、そう思ったら、突然SSエインシェントが1匹俺にぶち当たった。
 敵の剣が俺の身体をざっくり貫いたのだ。

 オボスではない。ただのSSレアエインシェントだ。
 SSエインシェントの速度なら、避けきれないはずはない。触手で切断もよし。逆に取り込んでもよし。
 俺なら、SSSレアの俺の動体視力で捉えられない物はないはずなのに……。

「ヒジカタ――――ッ!!」
「お、お父さんッ!」

「だ、大丈夫……だ」

 辛うじて核は無傷。
 運が良いね。

 ふと、ヒトミさんと2人で、日本に似たバァーチェ国に行った時を思い出す。
 
『絶対です!
 ヴァーゲロ洞窟のボス・ダーク・ツインサラマンダーは運の値が高いから、改心の一撃を連続して出したそうで、軍の攻撃はことごとく外れたそうです。
 そのボスの運値は『1200』。ヒジカタさんはその10000倍。
 仮に巨大隕石が激突して世界が滅びても、ヒジカタさんだけは無傷で生きてる――、それくらいの幸運に恵まれていますからっ!』

 俺の運値は25レベルでカンストしたけど、50,000,000。
 捨てたもんじゃないよね、ヒトミさん。

 ほくそ笑みながら、戦士の頭を細胞で埋めつくし高速吸収したね。
 敵生命力値『0』を確認せず、そのまま全体も一気に取り込む。
 キモいなんて言ってらんないよ。

 ドーン、ドドーン!!
 と連続で2匹の戦士が俺の身体に突っ込んできた。
 だけど、避けきれない。
 てか姿が見えない。飛んでくるのが見えてないから。
 なんで俺の動体視力で見えないんだ?

 廊下目前で停止せざる終えない。
 俺に密着した2体のエインシェントが、口内に光粒子を集めたよ。

「ちょ……っっ!?」

 ここで撃つわけ。
 ゼロ距離発射?!
 神風特攻かよ。復活できるからって、無茶するなあ。
 爆炎発射寸前、その集まる粒子ごと頭部をSSS細胞で飲んでみる。
 
 ボッバッ……、バ、ババスッ……。
 鈍音と共に、一瞬俺の身体がにゅーっとお餅みたいに5メーター伸びたね。

「すっご~~~~いっ♪」
「マネしちゃおうかな」
「できるかな」

「ちょっと静かにっ!」

「「「「はーい♪」」」」

 SSたちは無傷か――――、つまり狙いは俺ただ一匹ってことか。
 安心したね。

 俺の細胞内に黒煙と炎が広がったけど、それも直ぐに消えたよ。
 勢い2体の身体を丸呑みしながら、しゅわわわっと元のしずく形態に戻ってゆく。 
 当然、肥大化しちゃってたね。

「ほほう……やるな、ヒジカタさん……」

 フッフッフ、と長い舌を出し笑うオボスさん。

 吸収し終えた3匹分の経験値流入を感じつつ俺は、

「ならば――――っ!」
 
 サッカーボール程度の分裂個体を50作成し、俺とSSたちの周囲を1メータ開けてぐるりと囲う。
 戦士が突っ込んできたら、個体にぶち当たるはず。分裂個体の壁だよ。

 そう思ったら、本当に個体に接触したね。
 各個体に眼を作って部屋全体を監視していたから疑問も解けた。
 モーションが速くて分からなかったけど、オボスが部下を掴んで投げていたのだ。

 なんて大胆なんだよ。
 普通、動きが見えないはずはないのに、オボスだから見えない。俺の眼が追いつかない。

 個体にぶつかり減速したエインシェントを、触手でぶん殴りオボスに返す。
 片手で軽々止めたオボスが、ぐったりと首を伸ばす部下、そのゼロを示す生命力値をひと目見て頬を釣り上げた。

「楽しいなあ、ヒジカタさんは。
 ずっとこうしていたいよ」

 ずっと、こうして、…………か。
 良いかもしれない。

「良いよ。俺なら。オボスさんとずっと、ここで戦っていても。
 一生、この世界でオボスさんのスパーリングパートナーでも良い。
 だけど、俺のSSたちは地上に戻してくれないかな。
 コイツらは俺の分身、俺の子供なんだよ。
 血を分けた、細胞を分けたかけがえのない子供なんだよ」

「……なるほど……」
 
 オボスが腕を組み、考える仕草。
 望みがあるのか?
 鬼の目にも涙なのか?

「子を思う親の気持ち。
 なんとも、良い話だが、呑むわけにはいかんな。
 ヒジカタさんほど強い生物。その種をレベルの上がりやすい地上に戻すほど、私は神ではないよ。
 残念だけど、全滅してもらう」

 全滅……。

「ありがとうヒジカタさん。
 今まで私を楽しませてくれた感謝の気持ちだ。
 せめて、ヒジカタさんに子が死ぬのを見せない為にも、ヒジカタさん、あなたから殺してあげます」

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