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3章
ハゲ山
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ハゲ山らしき上空に到着した。
地図の位置と同じだから、この山で間違いないはずなんだけど、
一応アハートさんに確認してもらおうかな。
『アハートさん?』
腕の中の黒髪美女はすやすやで、返事がないよ。
やっぱり気絶したみたい。
ここまで、よくもったほうだよ。
俺だけで、試してみようかな。
パグローム・ツアンサ・アオスマッヘン
心の中で唱えると、視界に半透明な赤いネットが出現したよ。
思うだけで動かせ拡縮もできる。
消去範囲の指定らしいな。
山をすっぽり包むようにネットを配置すると選択画面が表示された。
消去実行 YES/NO
YES カチッ!
ブイーンと起動音がし、ゆっくりと山が薄くなってゆく。
霧がかかったわけじゃない。
音も無く、木々が土石が、ハゲ山自体が徐々に、別次元へ移動しているのだ。
1分後、あった場所は切り取ったようにシャープなむき出しの平地になっており、その奥には険しい渓谷が口を開け、最奥には俺が生まれた北山脈が見えた。
「本当に無くなったよ……」
着陸したら、湿った空気を感じたね。
一箇所、直径5メートルの竪穴があり、覗くと真下へ長く続いていて底は見えない。
穴の壁が塗り固められているので、人工的に作られたようだね。
「う、う……うん……はっ!」
アハートさんが目覚めたよ。
もちろんお姫様抱っこしたままだけど。
「ななななな……」
一気に顔が紅潮して、キッと睨まれ。
ばっち~ん!
ビンタを食らったよ。
ばっちーん!
ばっちーん!
なんだろうなあ。
たぶん寝ぼけちゃってるんだね。
「あ……ごめんなさい。私……、私、怖い夢を見ていたみたい」
「……はあ」
どんな夢なんだよ。
はにかんだアハートさんが、急に強張る。自分から俺の腕を抜け出し辺りを見回し、ジャングルのような渓谷で視線が止まった。
「ここは……山、……山だった場所……。もう消してしまったの?」
「はい。よく寝てたので、消しておきました」
「できると思っていたけれど、ここまで完璧に、それも僅かな時間で――」
現代日本の土木作業員が重機を使っても何年かかるだろう。
この世界の魔法使いでも出来ないだろうなあ。
「……凄いわジカタさん!
頼んで正解でした」
褒められてちょっと嬉しい。
輝く瞳で見つめられて照れるよ。
「え、えっと……、あ、あの穴はなんですか?」
「……穴」
直径5メートルほどの穴が真下へ伸びている。
「あれはね――」
鉱山の名残りだそうだ。
高純度の金と銀が採れ、今でこそ外区が広がりモンスターの出没も押さえられているけど、
内区しかなくモンスターの巣窟だった500年前は、命がけで鉱山に入ったそうだよ。
キキン国の貴重な財源だったわけだ。
◆
それから一週間ほど。
モンスターが湧かなかった大昔の村や山林を所有している地主に、さり気なく、レアなモンスター、――通称『レアモン』を狩る趣味の貴族が、キキン国で狩場を購入したいらしい、と言う偽情報を流す。
貴族役はエースだね。
40歳前後の恰幅の良い外国貴族に成りすます(もちろん変形能力使用)。
ハヤテは貴族の付き人だったり、ターゲット(地主)にエサをまく情報屋だったり。
「世の中にはモノ好きな貴族がいますよねえお客さん」
「そうなんだ。
モンスターを倒した数を競ったり、そこそこレアモンだと剥製(はくせい)にして居間に飾るそうだぜ」
「モンスターをわざわざねえ」
「馬鹿にしちゃいけないぜ、マスター!
激レアモンの剥製(はくせい)だったら、一体100~500万ギルで競り落とさるって話しだから」
「ひえええ!」
賑わう居酒屋のカウンター。
ハヤテは、エールをちびちび飲みつつツマミを食う仕事終わりのおっさんに化け、
人の良さそうなマスターに、他国の貴族の間で『レアモン狩り』が流行っていると面白おかしく話しているよ。
もちろん、ハヤテの真後ろの丸テーブルに、ちゃ~んとターゲット(地主)がいるからだけどね。
ハヤテが首の裏を眼にして確認したら、地主さんは聞き耳を立てているみたい。
「儲かりますね」
「いや、そうでもないぜ、マスター。
高収入のレアモン狩りに同行していた俺が辞めた理由がそれだ」
マスターが興味深い顔をして「え、なんなんです、お客さん?」と訊ねてきたよ。
真後ろの地主の身体が、こっちへ傾いているね。
「そんなに知りたいか」
「はい、もちろん」
「いいか、マスター。
ここだけの話し。他言は無用だ、いいな」
「そ、そんなに重大な内容なんです?
わかりました。絶対に誰にも話しませんから」
「よし。いいだろう。
実はな……、このキキンは、他国に存在しない激レアなモン種が多く湧くらしい」
「……激レア」
「そう、ツェーンの迷宮のボス竜・エインシェントがSSSレアなのは有名な話し。
エインシェントは例外としても、このキキンの奥地でSやSSが湧くって噂だ」
「Sレア?」
「SやSSは、この星全体で千年に1匹湧くかどうかの激レアモンらしい」
「千年ですか!!」
「ああ、俺も見たのは一度だけ。
Sレアの剥製が1000万ギルで取引されているのをな」
「まじで!?」
「ウソじゃねえ。
だがな、よく考えてみろ。
SやSSでなく、ただのレアモンでも、そこら辺にいるわけじゃねえ。
人里離れた奥地だったり、難攻不落なダンジョンの深部だったり、辿り着くまでハイレベルモンスターが湧いたり、とにかく簡単に狩れない場所にいるわけだ。
もちろん強さも半端ない。
大勢の兵士に守られた貴族は楽しいかもしれねえが、狩りの先導役の俺ら同行者は命がけよ。
もちろん全身完全武装して、回復ポーションも支給されちゃあいるが、突然40レベ以上のモンスターに襲われたら瞬殺だな。
ポーション飲んでいる暇なんかねえ。
まあ、貴族にとっちゃあ、俺ら同行者はモンスターのエサみたいなもんだ」
「だから辞めたのか」
「ああ、命あっての物種よ」
「だけど、キキンに激レアモンスターがいたとは知らなかった」
「貴族たちは、キキンの外区から離れた山林や、山を丸ごと買うつもりらしい」
「山ごとねえ。凄い額になりそう、あ、いや、そうでもないな。
価値がない土地だから、タダ同然だろう。
むしろ地主さんたちにとっては売り手が現れて大喜びってところだよ、お客さん」
「……貴族連中は、広範囲の土地を購入するつもりらしい。
あちこちに拠点を建てて、レアモン狩りツアーなんてのも考えているらしい」
マスターが関心している。
オーダーが入り忙しくなったマスターが奥に消えると――。
「あのう……、……すいません。
さっきの話し、詳しく教えてくれませんか?」
後の地主がそう言ったね。
「……訊いてたのか? あんた誰だ」
「はい。私はエドマン・デュラクザ。このキキンで山を持つ者でございます」
「へ~。
地主さんかあ。意外だね」
「興味深いお話しだったので、ぜひ」
「もしかして、土地を売りたいのか?」
「……」
「売るなら早いほうが良い。
レアモン狩りブームは長くは続かない。
なんだったら、俺が高値で売ってやろうか。
外区の農耕地程度の額なら、たぶん売れるはずだから」
◆
アハートさんの構想通り、土地の確保ができた。
モンスターの沸く山林、池や国有地など価値の無い土地ばかりで、とても建設できる場所じゃないけどね。
「さっそく、お願いね♪ はいこれ、ヒジカタさん」
赤色でマーキングされた地図を渡されたよ。
「……はあ」
「マーキング箇所を平地にするのか……」
「お願いね」
アハートさんに頼まれると断れないよ。
「まあ、いいけど……」
半日で何にもない平地にできた。
「やればできるものね」
「……」
外壁建設計画は、当初の設置予定地より大幅に拡大した物で練り直され、新計画で着工した。
その夜、
さっそくキキン国王に呼ばれ、城の2階大広間で表彰状を貰っちゃったね。
同時に花火が上がり、ファンファーレが鳴る。
見下ろす1階フロアーで舞踏会が始まり、聖歌隊が喉を披露している。
「今日を外区壁建設記念日と定めたぞ」
国王は大喜び。
大幅に雇用が拡大するだろうね。
他国から建設関係者を中心に人が集まり、消費が増え、地価が上昇し、良い事だらけだよ。
一夜明け、外に出ると人々が騒ぎ出したよ。
「おお! ヒジカタ様だ」
「凄いヤツだぜ、お前は!」
「あれが大魔導師・ヒジカタよ!」
無言で歩き去るのもどうかと思い、愛想笑いや、手を軽く上げて応えてみたけど、余計にキャ~キャ~騒がれ、どうも落ち着かないね。
特に、外区の住人は壁に囲まれた安全な生活を待ち望んでいたから歓喜するのは良く分かるよ。
俺も嬉しいけど、ちょっと照れるな。
アハートさんが発表した建設期間は10年~1年。
なんでそんなに期間の差があるのか訊ねたら、
「ヒジカタさんの能力は未知ですからね」
と言われたよ。
工事の進み具合は、俺の働きぶりに関係するわけね。
ていうか、俺を壁建設に使おうとしているの!?
俺って土建用重機みたいなもん?
確かに俺が参加すれば、めちゃくちゃ経費の削減になるだろうけど、勘弁して欲しいなあ~。
◆
「さっそく、地主たちが新しい図面を見せて欲しいと、やって来たわ」
図面とは、外区壁の配置図のこと。
キキンのどの地域を囲うのか、門は幾つで、どこに設置するのか――。
国が予定地を確保してないのに、工事がスタートしたということは、計画自体が変更された事を意味するわけだからね。
地主たちとしてみれば、壁の建設場所により、私有地の地価が変動する重大事件。
土地以外にも、街道がどう設置されるのか、役場は、学校は、病院は、
情報を早く知っておけば良い儲けができるし、損はない。
買えるものなら、将来性ある土地を確保するつもり。
「教えないわ。個人的には教えない。
公共工事の情報は、公平に皆に伝えたいから」
地主だけ独占させないわけね。
「外区大門付近の土地は特に価値が高いだろうし、そこから伸びる道沿いも同じ」
地図の位置と同じだから、この山で間違いないはずなんだけど、
一応アハートさんに確認してもらおうかな。
『アハートさん?』
腕の中の黒髪美女はすやすやで、返事がないよ。
やっぱり気絶したみたい。
ここまで、よくもったほうだよ。
俺だけで、試してみようかな。
パグローム・ツアンサ・アオスマッヘン
心の中で唱えると、視界に半透明な赤いネットが出現したよ。
思うだけで動かせ拡縮もできる。
消去範囲の指定らしいな。
山をすっぽり包むようにネットを配置すると選択画面が表示された。
消去実行 YES/NO
YES カチッ!
ブイーンと起動音がし、ゆっくりと山が薄くなってゆく。
霧がかかったわけじゃない。
音も無く、木々が土石が、ハゲ山自体が徐々に、別次元へ移動しているのだ。
1分後、あった場所は切り取ったようにシャープなむき出しの平地になっており、その奥には険しい渓谷が口を開け、最奥には俺が生まれた北山脈が見えた。
「本当に無くなったよ……」
着陸したら、湿った空気を感じたね。
一箇所、直径5メートルの竪穴があり、覗くと真下へ長く続いていて底は見えない。
穴の壁が塗り固められているので、人工的に作られたようだね。
「う、う……うん……はっ!」
アハートさんが目覚めたよ。
もちろんお姫様抱っこしたままだけど。
「ななななな……」
一気に顔が紅潮して、キッと睨まれ。
ばっち~ん!
ビンタを食らったよ。
ばっちーん!
ばっちーん!
なんだろうなあ。
たぶん寝ぼけちゃってるんだね。
「あ……ごめんなさい。私……、私、怖い夢を見ていたみたい」
「……はあ」
どんな夢なんだよ。
はにかんだアハートさんが、急に強張る。自分から俺の腕を抜け出し辺りを見回し、ジャングルのような渓谷で視線が止まった。
「ここは……山、……山だった場所……。もう消してしまったの?」
「はい。よく寝てたので、消しておきました」
「できると思っていたけれど、ここまで完璧に、それも僅かな時間で――」
現代日本の土木作業員が重機を使っても何年かかるだろう。
この世界の魔法使いでも出来ないだろうなあ。
「……凄いわジカタさん!
頼んで正解でした」
褒められてちょっと嬉しい。
輝く瞳で見つめられて照れるよ。
「え、えっと……、あ、あの穴はなんですか?」
「……穴」
直径5メートルほどの穴が真下へ伸びている。
「あれはね――」
鉱山の名残りだそうだ。
高純度の金と銀が採れ、今でこそ外区が広がりモンスターの出没も押さえられているけど、
内区しかなくモンスターの巣窟だった500年前は、命がけで鉱山に入ったそうだよ。
キキン国の貴重な財源だったわけだ。
◆
それから一週間ほど。
モンスターが湧かなかった大昔の村や山林を所有している地主に、さり気なく、レアなモンスター、――通称『レアモン』を狩る趣味の貴族が、キキン国で狩場を購入したいらしい、と言う偽情報を流す。
貴族役はエースだね。
40歳前後の恰幅の良い外国貴族に成りすます(もちろん変形能力使用)。
ハヤテは貴族の付き人だったり、ターゲット(地主)にエサをまく情報屋だったり。
「世の中にはモノ好きな貴族がいますよねえお客さん」
「そうなんだ。
モンスターを倒した数を競ったり、そこそこレアモンだと剥製(はくせい)にして居間に飾るそうだぜ」
「モンスターをわざわざねえ」
「馬鹿にしちゃいけないぜ、マスター!
激レアモンの剥製(はくせい)だったら、一体100~500万ギルで競り落とさるって話しだから」
「ひえええ!」
賑わう居酒屋のカウンター。
ハヤテは、エールをちびちび飲みつつツマミを食う仕事終わりのおっさんに化け、
人の良さそうなマスターに、他国の貴族の間で『レアモン狩り』が流行っていると面白おかしく話しているよ。
もちろん、ハヤテの真後ろの丸テーブルに、ちゃ~んとターゲット(地主)がいるからだけどね。
ハヤテが首の裏を眼にして確認したら、地主さんは聞き耳を立てているみたい。
「儲かりますね」
「いや、そうでもないぜ、マスター。
高収入のレアモン狩りに同行していた俺が辞めた理由がそれだ」
マスターが興味深い顔をして「え、なんなんです、お客さん?」と訊ねてきたよ。
真後ろの地主の身体が、こっちへ傾いているね。
「そんなに知りたいか」
「はい、もちろん」
「いいか、マスター。
ここだけの話し。他言は無用だ、いいな」
「そ、そんなに重大な内容なんです?
わかりました。絶対に誰にも話しませんから」
「よし。いいだろう。
実はな……、このキキンは、他国に存在しない激レアなモン種が多く湧くらしい」
「……激レア」
「そう、ツェーンの迷宮のボス竜・エインシェントがSSSレアなのは有名な話し。
エインシェントは例外としても、このキキンの奥地でSやSSが湧くって噂だ」
「Sレア?」
「SやSSは、この星全体で千年に1匹湧くかどうかの激レアモンらしい」
「千年ですか!!」
「ああ、俺も見たのは一度だけ。
Sレアの剥製が1000万ギルで取引されているのをな」
「まじで!?」
「ウソじゃねえ。
だがな、よく考えてみろ。
SやSSでなく、ただのレアモンでも、そこら辺にいるわけじゃねえ。
人里離れた奥地だったり、難攻不落なダンジョンの深部だったり、辿り着くまでハイレベルモンスターが湧いたり、とにかく簡単に狩れない場所にいるわけだ。
もちろん強さも半端ない。
大勢の兵士に守られた貴族は楽しいかもしれねえが、狩りの先導役の俺ら同行者は命がけよ。
もちろん全身完全武装して、回復ポーションも支給されちゃあいるが、突然40レベ以上のモンスターに襲われたら瞬殺だな。
ポーション飲んでいる暇なんかねえ。
まあ、貴族にとっちゃあ、俺ら同行者はモンスターのエサみたいなもんだ」
「だから辞めたのか」
「ああ、命あっての物種よ」
「だけど、キキンに激レアモンスターがいたとは知らなかった」
「貴族たちは、キキンの外区から離れた山林や、山を丸ごと買うつもりらしい」
「山ごとねえ。凄い額になりそう、あ、いや、そうでもないな。
価値がない土地だから、タダ同然だろう。
むしろ地主さんたちにとっては売り手が現れて大喜びってところだよ、お客さん」
「……貴族連中は、広範囲の土地を購入するつもりらしい。
あちこちに拠点を建てて、レアモン狩りツアーなんてのも考えているらしい」
マスターが関心している。
オーダーが入り忙しくなったマスターが奥に消えると――。
「あのう……、……すいません。
さっきの話し、詳しく教えてくれませんか?」
後の地主がそう言ったね。
「……訊いてたのか? あんた誰だ」
「はい。私はエドマン・デュラクザ。このキキンで山を持つ者でございます」
「へ~。
地主さんかあ。意外だね」
「興味深いお話しだったので、ぜひ」
「もしかして、土地を売りたいのか?」
「……」
「売るなら早いほうが良い。
レアモン狩りブームは長くは続かない。
なんだったら、俺が高値で売ってやろうか。
外区の農耕地程度の額なら、たぶん売れるはずだから」
◆
アハートさんの構想通り、土地の確保ができた。
モンスターの沸く山林、池や国有地など価値の無い土地ばかりで、とても建設できる場所じゃないけどね。
「さっそく、お願いね♪ はいこれ、ヒジカタさん」
赤色でマーキングされた地図を渡されたよ。
「……はあ」
「マーキング箇所を平地にするのか……」
「お願いね」
アハートさんに頼まれると断れないよ。
「まあ、いいけど……」
半日で何にもない平地にできた。
「やればできるものね」
「……」
外壁建設計画は、当初の設置予定地より大幅に拡大した物で練り直され、新計画で着工した。
その夜、
さっそくキキン国王に呼ばれ、城の2階大広間で表彰状を貰っちゃったね。
同時に花火が上がり、ファンファーレが鳴る。
見下ろす1階フロアーで舞踏会が始まり、聖歌隊が喉を披露している。
「今日を外区壁建設記念日と定めたぞ」
国王は大喜び。
大幅に雇用が拡大するだろうね。
他国から建設関係者を中心に人が集まり、消費が増え、地価が上昇し、良い事だらけだよ。
一夜明け、外に出ると人々が騒ぎ出したよ。
「おお! ヒジカタ様だ」
「凄いヤツだぜ、お前は!」
「あれが大魔導師・ヒジカタよ!」
無言で歩き去るのもどうかと思い、愛想笑いや、手を軽く上げて応えてみたけど、余計にキャ~キャ~騒がれ、どうも落ち着かないね。
特に、外区の住人は壁に囲まれた安全な生活を待ち望んでいたから歓喜するのは良く分かるよ。
俺も嬉しいけど、ちょっと照れるな。
アハートさんが発表した建設期間は10年~1年。
なんでそんなに期間の差があるのか訊ねたら、
「ヒジカタさんの能力は未知ですからね」
と言われたよ。
工事の進み具合は、俺の働きぶりに関係するわけね。
ていうか、俺を壁建設に使おうとしているの!?
俺って土建用重機みたいなもん?
確かに俺が参加すれば、めちゃくちゃ経費の削減になるだろうけど、勘弁して欲しいなあ~。
◆
「さっそく、地主たちが新しい図面を見せて欲しいと、やって来たわ」
図面とは、外区壁の配置図のこと。
キキンのどの地域を囲うのか、門は幾つで、どこに設置するのか――。
国が予定地を確保してないのに、工事がスタートしたということは、計画自体が変更された事を意味するわけだからね。
地主たちとしてみれば、壁の建設場所により、私有地の地価が変動する重大事件。
土地以外にも、街道がどう設置されるのか、役場は、学校は、病院は、
情報を早く知っておけば良い儲けができるし、損はない。
買えるものなら、将来性ある土地を確保するつもり。
「教えないわ。個人的には教えない。
公共工事の情報は、公平に皆に伝えたいから」
地主だけ独占させないわけね。
「外区大門付近の土地は特に価値が高いだろうし、そこから伸びる道沿いも同じ」
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作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
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